テラーノベル
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ふわ、と香ったその柔らかな風がどうしようもなく寂しくて、私は何も言えなくなった。
もう会えない。その優しい腕はもう私を抱きしめることがない。その温かな手のひらはもう私を撫でることはない。その愛情のこもった瞳が私を見つめることはもうない。もう、二度と。
当り前が崩れたときに感じなかった感情が今になってずるりと私にのしかかる。
ほんとうに、ほんとうに……どうして、どうして、私の前からいなくなってしまうの。なんで、なんで消えちゃうの……
寂しいんだもの。悲しいんだもの。分からないの。会いたいの。
神様はどうして、罪のない命を奪っちゃうの。どうして、苦しめるの。救ってくれるんじゃなかったの。もう、信じらんないよ……
甘いような香りが包み込んで、温かさに抱き着いたの。そんな時間が戻ってくることは、もう、二度と、永遠に、ない。ないのだ。
ただ一人の愛情が亡くなっただけでこんなにも胸が冷えるなんて、わからない。わからないのに。
幸せが一つ減ったの。向けられる愛情が一つ減ったの。向けられる温かさが一つ減ったの。頭を撫でる手も一つ減ったの。抱きしめてくれる腕も、優しい瞳も、減ったの。
苦悶の声を聴く時間は、減ってくれたよ。それだってよくなんかないの。だって生きている証拠がなくなっちゃったから。
もう一回、もう一回だけでいいから頭を撫でて。体をぎゅっと抱きしめて。その優しい瞳で私を見て。よく頑張ってるねって褒めて。もう一回その温かさを私に伝えてよ。
寂しいの。会いたいの……
家に残った優しい香りがずっと教えてくれる。そこに貴女はいたのだと。生きていたのだと。ただ過去形で……過去形だったら意味がないのだ。現在進行形でないと私にとって。今日もまた思い出すのだろう。ずっとずっと、忘れることはないのだろう。
育ててくれてありがとう。生きててくれてありがとう。大事にしてくれてありがとう。産んでくれてありがとう。愛してくれてありがとう。ご飯作ってくれてありがとう。
直接言えなくってごめんなさい。言おう言おうとするうちに貴女はいなくなってたの。
嗚呼__
穏やかな風が貴女を忘れてしまいませんように。生きた軌跡が美しい更紗に縫い込まれていますように。
この記が貴女に届きますように……
るな@作品投稿休止中
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コメント
3件
うん、もうね、読んでて胸がぎゅっとなったよ……「もう二度と」って言葉がずしりと重くて。特に「育ててくれてありがとう」って直接言えなかった後悔、すごく伝わってきた。優しい香りだけが残ってる感じが切なくて、涙出そうになった。大切な人を失う悲しみ、すごく丁寧に書かれてて、心に残る話だったよ📖🤍