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私立クロノス学園_
その名を冠するにふさわしい、時の流れさえ支配せんとする厳格な規律と魔法士を育成するための高度な教育システムを持つ学び舎だ。
その頂点に立つ生徒会長、氷室 隷は今日も冷徹だった。
透き通るような白磁の肌、整いすぎた顔立ちは美少年という言葉がぴったりだが、その瞳に宿る光は冬の氷河のように冷たい。
身長は、同年代にしては小柄な150cm程度だが、その存在感は校内で最も威圧的だ。
「……何の用だ、教務主任」
生徒会室に呼び出された隷は椅子に座る教務主任を見下ろしながら、感情の一切こもらない声で問うた。
教務主任は咳払いを一つし、書類を差し出した。
「氷室、お前に特命を出す。特例転入生、守葉 狐の世話係兼監視役を命じる」
「世話係?笑わせるな」
隷は吐き捨てるように言った。
「俺が、誰かの下働きをするなど、あり得ない」
「断れない」主任の声に有無を言わせぬ響きが加わった。
「これは理事長直々の指示だ。奴は能力は突出しているが、性格に難がある。我々教員の手にも負えん。お前の厳格な統率力を期待している」
「……その守葉とやらは、どういう人物だ」
「問題児、そしてお前と瓜二つの冷徹さを持つ。唯一の違いは、常に狐の仮面を着けていることだ。あと、少々古風な言葉遣いをする」
隷は苛立ちを覚えた。自分と同じ「冷たさ」を持つ人間がいることに。
「仮面?ふざけているのか。学園の規律を乱す行為だ」
「彼の祖父が、大戦時代に学園に多大な貢献をした大魔法士でな……その家の伝統だそうだ。特例が認められた。いいか、氷室。これは命令だ。お前は今日から、彼の世話係となる」
隷は深く舌打ちをし、その指示を拒否できないことを悟った。
家に帰れば、親からの「厳格な躾」が待っている。
学園からの命令違反は、父に許されない。
「……分かった。俺の任務は、お前の命じた通りに、あの狐の世話と監視だ。無駄な労力だ」