真知子と岡崎の披露宴の席は、新婦側と新郎側で、今でも付き合いのある小学生時代からの友人を同じテーブルで呼んでいた。
「もしかして川瀬?久しぶりだな」
美奈子は隣の席に腰掛けた男性に、旧姓で呼ばれて声をかけられた。
「あー!成田君だ!全然変わってないし!」
美奈子は懐かしさいっぱいで成田勝雄を見た。
「川瀬もあまり変わってねーな。すぐ分かった。川瀬はもう結婚したんだろ?岡崎から聞いてる」
「うん!2年前にねッ!今は志田って言うの。成田君は?」
「まだまだ。あんまりこう言うめでたい席で言いたくないけど、最近彼女と別れちってさ」
男の29歳なんてまだまだ遊びたい頃だろうと、こんな話を聞いても不思議ではないと美奈子は思った。
「小学生時代の友達って、あと誰が来るのかな」
円卓には、美奈子を入れて女性陣は3人。成田が来たことで空いている席はあと1つだった。
「ああ、男は俺と西川だけな。受付済ませて、今トイレ行ってる」
西川と聞いて、今でも付き合いがあるんだと美奈子は思った。
「3ヶ月ぐらい前に西川も結婚してさ。その時も俺と岡崎呼ばれてさ」
「へぇ。西川君、結婚したんだ。懐かしいなぁ。成人式もチラッと見かけただけで、結局10年以上ちゃんと会ってないもん」
美奈子は、千秋がどんな風に変わったのか会うのが楽しみだった。
「あ、来た来た」
成田の声に美奈子も会場の入り口に目を向ける。
千秋が成田を見つけて円卓に近づいて来た。
美奈子は千秋の方に目をやって、久しぶりに会う元同級生の姿に驚いた。
小学、中学時代は可愛らしい美少年だったのに、目の前の千秋は魅力的な大人の男になっていた。
「みんな、久しぶりだね」
女性陣に声をかける千秋。
「うわッ!西川、めっちゃカッコよくなってるし!」
「本当!相当モテるんじゃないのぉ?」
女子2人が千秋の姿に興奮する。
「おいおい、俺の時と反応違いすぎだろ!」
ムッとする成田。千秋は照れながら成田の横に座り美奈子を見た。
「久しぶり、川瀬」
千秋はすぐに美奈子だと分かった。
「本当、久しぶりだね」
成田を間に挟み、千秋と美奈子は挨拶を交わす。
「きっと外で会ったら、西川君だって気づかないよ」
美奈子の笑顔に千秋も微笑む。
「俺は他で会ったとしても気づくと思うよ」
「それ、昔と変わってないって言うのー?」
わざと拗ねた顔で美奈子は言う。
「そうだね。昔と変わらず可愛いよ」
千秋の言葉に美奈子はドキリとする。
「こらこら、お前ら結婚してんだから、変な空気をここで作んな」
成田に茶々を入れられ千秋と美奈子は笑った。
千秋は今日を少しだけ楽しみにしていた。
岡崎から結婚すると聞かされ、真知子が美奈子も披露宴に呼ぶと聞いたからだった。
もちろん美奈子が結婚していることも聞いていたが、初恋の相手が今どんな風に大人の女性になったのか気になっていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!