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【霊夢︰幻消病】
朝目覚めれば、いつも通り、縁側から太陽の光が差し込んできた。
いつも通りの朝、いつも通りの服。普段変わりないな。
そんな日々は、何年も、何年も続くと思っていた。
ある日の昼間、人里の人間が1人、神社を訪れた。
「体の皮膚が溶けてきている」
「動きがかなり鈍くなった」
「みんなからきずかれにくくなった」
恐ろしく思える病の報告が相次いだ。
最近、幻想郷では、「幻想症」というものが流行っている。風邪とも思えぬ重い症状が現れるのだ。最悪、死に至る可能性があると言う。
自分はまだ幻想症にはなっていなかった。ならなくていい。なった時のことを思うと、とても恐ろしくなる。
しかし、ある日の事。
鏡で自分を見た。とても、とても。その時は、人生で感じたことの無い寒気に襲われた。自分の手が、着々と砂のように崩れていた。布団の近くに、砂後のようなものは無い。自然的に消えていっている。
このまま放置していると、自分自身、全て消えてしまう
どうにかしないと
助けて
今まで助けてなんて、ほぼ思ったことは無い。
どうすればいいのだろう
幻想症の治療法は見つかっていない。治療法が見つかっていない今、幻想症にかかってしまうと、もう終わり。自分が死んでしまうのを待つのみだ
でも、死にたくない。まだ、生きたい。
何とかして、治療法を見つけないと。
そんなことを思っていると、1人の金髪の少女が現れた
「おい、霊夢?鏡を見ているなんて、お前にも乙女心があるんだな」
「身だしなみのことじゃない。大変なの。命にとっても関わること。」
「え?一体、お前の身に何があったんだよ」
「私の手が、砂のようにちっていってる。このままにしていたら、私自身砂になって消えてしまうの。」
「大変じゃないか!どうすればいいんだ?」
「お困り?」
また、誰か現れた。
目玉だらけの、不気味に歪んだ空間から、1人の少女が現れた。
八雲紫。幻想郷の賢者だ。この幻想症の治療法を探しているひとりだ。
「まだ完璧な治療法は見つかっていないのだけれど…条件を揃えれば、その病を治せるかもしれないわ」
「本当?早く教えて。」
「えぇ。その条件は…」
「幻想華という花を1本持っていること。」
「幻想華?聞いたこともないわ。」
「えぇ。道端に生えているものでも無い。作るものよ。皆で協力して、幻想華を作るの」
「造花みたいなもの?」
「えぇ。そう。」
「でも、今のあなたの手は砂になって消えていっている。他の人達に作ってもらうしかないわ」
「そう…で、誰に頼めばいいの?」
「それが、誰が作れるかは、分からないの。ただ、とても強力な霊力を持つ者達に協力してもらうことが必要なのは、わかるの。幻想華は、全て霊力でできる。形も、栄養も、蜜も。」
「全てが霊力でできる花?面白そうだな。霊力が沢山あるやつか…」
「私も隠岐奈も、幽々子も協力する。私達は、沢山の霊力を持っているのだから」
「…助かるわ。ありがとう、紫」
紫、と呼んだのはとても久しぶりかもしれない。今まで、あんたとか呼んできたから。きっとこの、紫、は、感謝から生まれた言葉かもしれない。
紫が正直に協力してくれるのは、とても珍しいことだ。普段異変が起きて解決しに、協力を願っても、理不尽な理由をつけられて協力ずらしてくれない。そんな紫が、積極的に私に協力してくれるなんて。人格が変わっているようにも見えた。でも、そんな人格が変わったということは無い。彼女は正直に私に協力している。この、幻想症を幻想郷から無くすためにも。
私も何がしたかった。でも、手が塵となり使えなくなっている今、私ができることは何もない。弾幕を出すことも、お祓い棒を持つことも、御札を持つことも。そんな何も出来ない自分に、悔やみが現れた。
私だって、幻想症を無くしたい。でも、かかってしまい、何も出来ない自分のことが今大嫌いだ。なにかしたい。協力したい。なのに、何も出来ない。
役たたずの自分が、大嫌いになった。
〈次回︰霊夢編2〉