テラーノベル
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「……仕事は、慣れてるのか?」
休憩中、中国は思い切って問いかけた。
二人きりになったのは、給湯室の片隅。
ロシアは黙って湯を注ぎ、マグカップを両手で持っていた
「……慣れている」
「ふーん……前も同じ業種だったの?」
「似たようなもの」
相変わらず、会話は続かない。
中国は、なんとなく居心地の悪さを誤魔化すように口元にカップを当てた。
(やっぱり無口だな……)
中国はしばらくそのドアを見つめ、ため息をついた。
けれど、その沈黙が不思議と重くは感じなかった。
「……隣だとは思わなかった」
ロシアがぽつりと漏らした。
「へ?」
「部屋。おまえの隣。偶然だ」
「……そう、だな」
不器用な会話。
だけどその短い言葉だけで、ほんの少し、空気が和らいだような気がした。
──昼休み。
同僚たちはそれぞれ食堂へ向かう。
中国は自分のデスクで食べるつもりだったが、ふと、ロシアが席を立たないことに気づいた。
「……行かねえの?」
ロシアは一瞬、視線をよこす。
「人が多いところは、苦手だ」
「……へえ」
(やっぱり変わってるな……)
そう思っていると、ロシアの視線を感じた。
「……なに見てんだよ。」
「別に…気にするな」
そう言いながらも、ロシアは目を逸らさずにいた。
じっと、静かに、まるで何かを確かめるように。
「……うちの部署、思ってたより面倒だぞ。あいつら騒がしいし」
「構わない。慣れる」
「……本当に変なヤツだな」
ぼやいたその言葉に、ロシアがわずかに口元を動かした。
それが、笑ったのか、ただの呼吸なのか。
中国には判別がつかなかった。
──定時。
タイムカードを押して、帰り支度を始める。
「中国」
「……ん?」
ロシアが、背後から呼んだ。
「一緒に帰るか」
「は?」
「同じ方向だろう」
あまりに自然な言い方だった。
まるで、それが当然であるかのように。
「……別に、いいけど。てゆーか、おまえ、今日ずっと人の顔見てただろ」
「見ていたのは、おまえだけだ」
「──は!?」
ロシアはもう前を歩いていた。
その背中を追いながら、中国は会社を出た。
──夜道。
会社帰りの歩道には冷たい風が吹き抜ける。
オフィス街の灯りがゆらゆらと揺れ、ふたりの足音だけが一定のリズムで響いていた。
ロシアが隣にいる。
それだけで、妙に静かな時間に思えた。
会話もない。沈黙が続く。
けれど、中国はなぜか不快ではなかった。
むしろ、落ち着く。
「……中国」
不意に呼ばれた名前に、肩がぴくりと動く。
「ん?」
「語尾に“アル”とか、つけないんだな」
「は?」
中国は一瞬止まりかけた足を無理やり進めた。
「アニメじゃあるまいし」
「そうか。少し、期待してた」
ロシアは冗談とも本気とも取れない声でそう言った。
けれど口元が、ほんのわずかに緩んでいた。
「……お前、そういうこと言うタイプだった?」
「どういうタイプだと思っていた」
「もっと、……こう、黙ってるばっかの無表情ロボットで冗談なんて1つも言わない
機械かと」
「……ひどい言われようだな。そういうのは、見た目で判断するなと言うだろう?」
その言葉に、中国は苦笑を漏らした。
歩きながら、ふとロシアの横顔を見る。無表情には見えるが、どこかリラックスした雰囲気だった。
(……なんなんだこいつ。無口のくせに、妙に距離詰めてくるっていうか)
「語尾にアル……なんて期待するなよ。中国じゃ2って意味だからなw」
「了解、アル」
「おい」
ロシアの口から飛び出した“アル”に、中国は噴き出しそうになった。
思わず肩を揺らしながら笑う。
久しぶりに笑った気がした。
それを見て、ロシアは何も言わなかったが、明らかに表情を緩めた。
「……まさか、笑うとは思わなかった」
「こっちのセリフだ。おまえ、そんなふうに冗談言うとか……印象変わるだろ」
「変わって困るのか」
「別に我は困らん」
キッパリそう言うと、中国は視線を空に投げた。
真冬の空は澄んでいて、星が”2つだけ” 光っていた。
──知らない隣人だと思っていたのに。
まさか、こんなふうに笑い合う夜が来るなんて。
(なんか……不思議だな)
そう思いながら、家の明かりが近づいてきた。
「じゃ、また明日」
玄関前で中国が手を上げると、ロシアは静かに頷いた。
「……明日も、一緒に帰ってもいいか」
「……啊? べ、別に? 勝手にすれば?」
返した声は、どこか裏返っていた。
ロシアはそのまま無言で、自室のドアに入っていった。
閉まる前に、ちらりとこちらを見ただけ。
中国はしばらくそのドアを見つめ、ため息をついた。
「……なんだよ、もう……我だけが 変に意識しちゃうだろうが//」
頬がほんのり赤く染まっていることに、自分でも気づいていた。
その存在に、惚れてしまいそうな自分が怖かった。
❄️To Be Continued…
コメント
10件
尊死するって……💕
うわあああああ初めは無口だと思ってたけど実は結構しゃべったりアニメのとかの情報マジで信じちゃってる子好きだあああああそしてさらにロシアみたいな大男だったらギャップありすぎて大好きだあああああ((((
神すぎない!? 2人の絡み?が最高すぎる✨