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冬の隣人 ロシアさん

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冬の隣人 ロシアさん

3 - 第3話 惚れてしまいそうな自分が怖かった…

♥

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2025年07月27日

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──夜が深まる頃、会社からの帰路。

今日は1人で帰ることにした、だが 中国の歩幅はどこか乱れていた。

冷たい風が頬を刺すけれど、体の内側のほうがもっと冷たかった。


「また惚れてしまいそうな自分が怖い」──昨夜のそんな考えが、頭の中をぐるぐると回る。


なぜだろう。

あの無言で、時に無愛想で、不器用な男――ロシアが気になる。

いや、正確に言えば「気にかけてくれる」態度が、居心地悪くて仕方ない。


会社での一幕が鮮明に蘇る。

書類のミスを指摘されて、周囲の冷たい視線にさらされたあの日。

誰も手を差し伸べてくれなかった。まぁそれが普通の対応だ

怒鳴り散らす上司も、ただ冷たく見下す同僚も、まるで自分は罪人のようだった。

だったら貴様らがやればいいじゃないか?、そんなに不満なら自らすればいいものを…


そんな時、彼だけが静かに書類を拾い上げて、ぽつりと声をかけてくれた。


「気にするな、俺が直してやる」──その時の言葉は、どこかざっくりしているのに温かくて。


温かいはずなのに………………………


我は思った。

「なんで我をかばうんだ? なんでここまで気にする?」と。


彼の目はいつも冷たくて、何を考えているのか読めなかった。

なのに、自分だけを見て、庇ってくれる。

それが、怖い。


心の奥底に沈む記憶。

幼い頃から、感情を出すことは許されなかった。本心や、ましては恋心かもしれないものなんて……

泣いてはいけない。本心を晒してはいけない。弱みを出せば相手に利用される

「只々、強くあれ」

とだけ言われて育った。


表情を殺し、心を閉ざし、誰にも頼らずに自分で何とかするのが当たり前だった。

だから、誰かが助けてくれるなんて、信じられなかった。


それでも、彼――ロシアは違った。

何も言わず、ただそっと寄り添うように自分を守ってくれた。


だが同時に、我は彼を疑っていると思う。

「本当に、我のことを理解しているのか?」

「それとも、利用したいだけじゃないか?」


そんなことしか考えられない、自分でも実にひねくれた性格だと思う。


彼の冷たいまなざしは時に鋭く、自分の心の闇まで見透かしている気がして怖かった。

だから、ロシアのやさしさは――いつも裏を読んでしまう。


「惚れてしまいそうな自分が怖い」──


自分の弱さを曝け出すことも、

誰かを心から信じることも、

今までずっと避けてきたのに。


それなのに、彼の存在は確実に自分の中で大きくなっていく。


そして今、歩きながら自分に言い聞かせる。


「違う、まだ認めちゃいない。、 これはただの錯覚だ。

我は、絶対に誰にも弱みを見せない。」


そう思っていても、心はそれを拒否する。

冷たい冬の夜、胸の奥はじわじわと熱くなっていった。





















ただいま、と言う相手はいない。 鍵を閉める音が、やけに響いた。

熱のない空間が、いつものように自分を迎える。


少しだけ開けたカーテンの隙間から、夜の街灯が差し込んでいる。

時計の針は深夜を指していたが、眠れる気配はない。


ダウンジャケットを脱ぎ、ゆっくりと深くソファに座る。

暖房をつける気にもなれず、息がほんのり白くなった。


……ロシアに、また助けられた。


それを思い出した瞬間、胸の奥にぬるい痛みが浮かぶ。


——「気にするな、俺が直してやる」

たった一言。


けれど、それだけでどうしようもなく心が乱れた。 あいつの手が、自分のミスの書類を拾い上げた瞬間、 周囲の視線を気にせず、当然のように肩をかばってくれたこと。

一つひとつが、自分には馴染みのない行動だった


どうして、そんなことをするんだ。

どうして、我なんかを気にかける。


静かに頭を抱える。


目を閉じると、過去の景色がふいに呼び起こされる。


声を荒げる父。冷ややかな視線の母。 小さいころから、ずっと***“良い子”***でいなければならなかった。


「お前は口答えするな」

「泣くな。男でしょう?」

「感情を出すな。恥ずかしい」

「学だけが、あればいいのよ」


感情を押し殺すことが「正しさ」だと教えられてきた。

優しくしてほしい、構ってほしい、という思いを持った瞬間に、自分を責める癖がついた。


——本音を出せば傷つく。

——だから、最初から見せない。


それが生きる術だった。

でも、ロシアは違った。

いつも不機嫌そうな顔をして、言葉も少ないくせに、

なぜか必要なときには、必ずそばにいる。

そんなやつが、


“いつも我の隣にいてくれる”。

幼少期、父に1回でいいから褒められたかった、母に少しでいいから隣にいてほしかった。本当の自分の気持ちを出したかった…



「……は、」


思わず小さく笑ってしまった。

滑稽だ。

何年も、人に本音を晒さずに生きてきたのに。 いまさら他人の視線や行動ひとつで、動揺している。


「気味が悪いくらい、冷静そうな顔してんのに……」


そのくせ、優しい。 下心も恩着せがましさもない。 ただ、“いてくれる”だけ。 だからこそ怖い。


こんな事には慣れていない……


——惚れてしまいそうな自分が怖い。

認めたくない。

なのに、今日もまた、視線の温度を思い出してしまう。

言葉ではない“行動”で守られた記憶。


今までは、自分で立つしかなかった。 支えてくれる人なんていなかった。

そんな孤独に慣れていたはずなのに。


「……また、目で追ってる自分がいた……か…」


呟いた声が、部屋の空気に吸い込まれていく。

静かな部屋。静かな夜。 けれど心は、もう静かではいられなかった。

自分でも気づかぬうちに、ロシアという存在が、

寒さに凍えた心の奥で、火を灯そうとしていた。


──それを許すには、まだ、勇気が足りない。




❄️To Be Continued…

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