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SS 約900文字
utがkn薬漬けにしてる話
「ごめんなぁ」
そう言いながら、薬を口移しで流し込ませた。
震える手も、怯えた目も、全部見慣れたもの。
触れる指はやたら優しく、偶にすりすりと頬を撫でる。
「はっ、はふ、…っは。」
浅い呼吸音が、室内に響く。
「……だい、せんせ」
「どしたん、しっま」
力の抜けた身体を此方に預けながら、じぃと僕を見詰める揺れた瞳。
「だ、せんせ」
「ん…僕は此処に居るよ」
視界がぼやけているのか、将又力がそれ以上入らないのか、軽く腕を持ち上げては空を割くシッマの右手を優しくすくい上げて、恋人繋ぎにする。
「うつ、ぅ、つ…」
「なぁに」
頭が回らずとも精一杯言葉を紡ごうとする彼を優しく見詰めて、頭を撫でてやりながら次の単語を待つ。
「は、…っふ、ぅ、う、す、き…すき」
言いながらも薬が回ってきたのか、重力に従い口端から垂れていく涎を眺める。
「んふ、ありがとぉしっま。僕もだいすきやで」
繋いでいた手を離し、薬を追加しようとした時。
「せん、せ……いか、んと、…いて、」
縋るみたいに指先が強く絡む。
さっきまで力も入らなかった癖に、離されるのだけは本能で拒む所がまた可愛らしい。
「どこにも行かへんよ」
そう言って、指をほどく代わりに、もう片方の手で顎を持ち上げる。
逃げ場を塞ぐみたいに、視線を固定する。
「ほら、ちゃんと見て」
「……っ、」
焦点の合わん瞳が、それでも必死にこっちを捉えようとする。
「しっま、誰が好きなん?」
「……う、つ…せんせ……」
「せやね。ええ子や」
褒めるみたいに笑って、そのまま額を合わせる。
熱が移る程、近く。
「ほなさ、忘れんようにしよか」
指先で喉元をなぞる。
びくっと震えるのを、ちゃんと見逃さない。
「他のこと、全部いらんやろ?」
「……ぁ、…ぅ」
答えにならん声。
「僕だけでええよな」
逃げ道を残さない問い。
でも声は相変わらず甘いまま。
シッマは、しばらく何かを考えるみたいに瞬きをして。
やがて、こくりと小さく頷いた。
その瞬間、ふっと息が漏れる。
「ええ子やなぁ」
頬を撫でて、口元に触れる。
ただの口付け。
そんな口付け一つでぶわぁっと耳朶まで真赤に染めるのだから、愛いらしいのだ。
おわり
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