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「ゔ、っ…」
目が覚め、左側頭部に激痛がはしる。
何が伝っており、粘度のあるそれが血であることに気付き余計に痛みが増した。
「…痛っ、……そ、うか、おれ…」
彼等の尊厳をズタズタに踏み躙った遺体を見つけたところで主人に見つかったのだ。
何かしらのガスを漂わせた空間で尚且つ頭をブン殴られたのだ。
「……油断した…」
また自分のバカさ加減に舌打ちをした。
ここは何処だと辺りを見回す。
見慣れぬ部屋。
「(くそ、まだ隠し部屋があったのか…)」
今の所、手を鎖で繋がれてるだけのようだが。
かなり頑丈なそれはジャラジャラと音を立てるだけでびくともしない。
出血がひどいのはこめかみの辺りを殴られたからだろう。
痛みはあるが、見た目ほどの傷のデカさではないとふんでいる。
「(奴はどこに行った…)」
黒いワイシャツとベストに血が滲んでいく。
「……」
意識が保てている間にこの状況を打破しなければ。
ただ、体力だけは消耗しないようじっとする。
どうする。
おそらく、帰ってこない俺に気付きぺいんと辺りが突入してくると思ってはいるが…。
色んなパターンを考え、それに対応できるよう様々なことに思考を巡らす。
と、そこで扉が開き主人が入ってきた。
「目が覚めてたんだね。いやぁ、こんなに血が出ると思わなくてね。救急箱を探していたんだ」
「……」
「こんな手荒なことをするのは久々でね」
「……」
奴の言葉には耳を傾けないようにし、視線を外す。
「せっかくの綺麗な可愛らしい顔立ちが台無しだ。……あぁ、いや、ある意味では良いものか」
傷口にガーゼを充てられる。
「っ、…」
「その痛みに耐える表情もいいね」
「……変態」
「キミにそう言ってもらうとなんだか唆られるものがあるね」
消毒液をかけられ、ぐっと眉を顰める。
因みに気持ち悪さも相まって。
「やっぱりキミは今まで見てきた子の中で一番タイプだ。少々痛めつけてもすぐに死ななそうだし、何より見た目が背徳的だ」
「…、…」
「(こいつ、マジの変態だ)」
「何者にも犯されていなさそうな純真そうな見た目。自分の魅力に全く気付いていない鈍感さ。…お仲間はキミに対して随分と過保護だったんだろうね」
傷口を押さえられ痛みに呻く。
「トラゾーくん、…僕は……いや、俺はキミのことを小さな頃から知ってるんだ」
年はそんなに変わらない筈だ。
奴の方が数個上であろうが。
「覚えていないのかい?」
「…何?」
「彼らの仲間になる前にとある国にいただろう?」
だいぶ昔の話だ。
その辺りの記憶はあまりいいものではない。
思い出したくもない。
「俺のこと、忘れたかな?」
にこりと微笑む顔に何か、心がざわついた。