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「は……?」


「人形師、」


そのワードにぴたりと動きが止まる。

まさか、こいつが、


「キミの両親、美しい人たちだったよ」


がっと顎を掴まれる。


「母親はキミと同じ綺麗な緑の瞳。父親はキミと同じ美しい黒髪」


「、お、ま、え…!」


優しかった両親の笑顔を思い出す。

そして、その両親が気にかけていた俺より年上の少年のことを思い出した。

さっきのざわつかせるような笑みも記憶の中から掘り起こされる。


「美しいが故に虐げられていたキミたちは儚げで綺麗で……だから、殺して綺麗な状態にしてやったんだよ」


奴の歪んだ顔。

歪な思考。


「昔の俺は子供だったし、大人は簡単に騙されてくれたから殺しやすかったよ。…大きくなるにつれて、楽しみ方も増えたけどね」


「お前、!」


「子供だったキミは大きくなってから、と思ってたんだけど。彼らに盗られちゃった」


両親を殺され、殺した奴に復讐もできず自暴自棄になっていた。

それでも変わらず虐げられ、もう楽になりたいと死のうとさえ考えていたそんな俺を救い出してくれたみんな。


「キミのことだから、俺のところに来ると思ってたよ。両親にそっくりな正義感を持つキミなら。まぁ、俺のことは忘れていたようだけどね?余程、幸せに暮らしてるようだ」


「て、めぇ…許さねぇ、殺してやる!」


「その顔も可愛いよ。ますます俺のモノにしてやりたい、…その幸せを壊してやりたいよ…!」


するりと顔を撫でてくる奴が気持ち悪く、恨みも込めて蹴飛ばす。


「ぐっ、…」


「触るな、俺に触んじゃねぇ」


「…ふ、ふふ…ははは、ははははは!」


狂ったように笑い出す奴は顔を上げた。


「そうだね、キミはもう彼らの…いや、2人のモノになってたね」


「な、にを…言って…」


どこまで知っているのだ。

気持ちの悪さに吐き気を催す。


「キミが幸せに過ごしてる間、俺はキミのことをずーーっと探して、調べて見ていたんだよ。…この機会を待っていた、俺の手の内に入ってくるのを」


近付いてきたかと思ったら取り出したナイフで執事服を切り裂かれた。


「⁈」


「その傷だらけのカラダも素晴らしい。本当にキミは俺のことを喜ばせてくれる」


ナイフの切先を首筋に当てられる。


「そういうのも、全て壊して穢して俺のモノにしてやる、なぁ?トラゾー」


「ぃ、やだ…!」


「穢されてしまっても、俺はキミの美しさを知ってる。何者にも汚されない、真の美しさを。だから壊して作り直してやりたい、そして奴らに見せてやる俺の勝ちだと!」


するりと素肌を撫でられて全身に鳥肌が立った。


「(き も ち わ る い)」


涙が滲んできて、みんなの名前を呼びそうになる。

それでもこの場で呼ぶことはしてはならないと必死に理性で抑える。


「(助けて、しにがみさん、ぺいんと、クロノアさん…!)」


「涙で潤むその瞳も綺麗だ。…あぁ、早くもっと痛みで歪ませて、快楽で滲ませてやりた…」


パァンと乾いた音が響いたかと思うと奴が言葉を言いかけたまま白目を剥いてゆっくり倒れた。


「……ぇ」


何が起こったか分からない。

目の前で倒れる男に小さい声しか出なかった。

大切なものほど見落としやすかったりする

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