テラーノベル
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二人が玄関を抜けてロビーへと進むと、これもまた荘厳だった
広々としたロビーは磨き上げられた欅の床と、ここでチェック・インまでくつろげるように、藤素材のソファーセットがいくつも設置されている
壁に掛けられた掛け軸が調和し、静かな威厳を放っている、その先にはガラス張りの窓から淡路の海が青く輝いていた
中央には季節の花を生けた巨大な花瓶が置かれ、その周囲を囲むように、旅館の従業員達が一列に並んでいた
従業員は皆、深緑と白を基調にした旅館の着物姿で、帯には山田旅館の紋章が刺繍されていた
「「「「お帰りなさいませ、お嬢様!」」」」」
従業員達の声がロビーに一斉に響き渡った、その声はまるで合唱のように調和してホール全体に反響した、驚いたジンはその勢いに一瞬たじろいで、また思わず目をパチパチした
―お嬢様?桜のことか?いやっ!桜以外に誰がいる?―
桜はそんな従業員達に満面の笑みを浮かべた
「うん、みんな元気そうね! なによりだわ!」
桜の声は軽快で、まるで家族と再会したかのような親しみが込められていた、彼女は従業員一人ひとりに目をやり、笑顔で頷く、その自然体な振る舞いにジンは改めて桜の「山田旅館の長女」としてこの場所の中心にいる姫の様な威厳を感じた
「お婿様! お荷物をお持ちします!」
若い男性従業員がジンのスーツケースに手を伸ばしながら、明るく声をかけた、ジンは慌てて言った
「ええっ?そっ・・・そんな! 自分で持ちます!」
ジンの声は思わず裏返り、スーツケースをぎゅっと抱え込んだ
その彼の仕草を見て、数人の女性従業員が袖で口元を隠し、クスッと笑った、途端にジンは髪の生え際まで真っ赤になった
なんてことだ・・・自分の会社では、社員達に羨望の眼差しで見られるのは慣れているのでクールに振舞うが、ここでは全くの逆ではないか、威厳たっぷりの桜の付属はこの自分なのだ
「さぁさぁ! お前達のために特別な客室を用意したよ!」
現れたのは、緑の作務衣を着た松吉と米吉だった
「え~?パパ! 私の部屋で充分だわ!私は自分の部屋で、ジンさんはシングルの客室に泊ってもらおうと思ってたのに!」
「何をいうとるんだ! 夫婦じゃろうが、お前達は!」
米吉じいさんの声がロビーに響き、従業員達も笑顔でうんうん頷く、ジンの背中の冷や汗が冷たくなっていた
そっか・・・結婚したんだから・・・同じ部屋は当然だな・・・
「さぁさぁ、部屋まで案内するぞな! ヨンさんや」
「・・・ジンです・・・」
「こっちじゃ!婿殿!最上階じゃ!」
ボソッと小さく訂正したが、もはや誰もジンの言葉を聞いてなかった
コメント
2件
ヨンさん🤣🤣 どんなお部屋に案内されるのかなぁー«٩(*´ ꒳ `*)۶»ワクワク
🤣🤣🤣🤣大歓迎ね! ジンさんもう腹くくりましょか😅👍