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「ほう……。わしがそこまで心配か、煌」
「っ、だから! 帰る方法の話をしてんだろ、クソジジイ!!」
顔を真っ赤にして怒鳴る煌を、朱雀は愛おしそうに眺めている。
そんな主上の様子に、燕花は小さくため息をつくと、すぐに真剣な表情に戻って顎に手を当てた。
「……ですが朱雀様。やはりご自身が囮になるのはリスクが高すぎます。できれば他の手を考えたいところですが……如何せん、今の宮殿内では信頼できる人手が圧倒的に足りませんね」
「なんだか面白そうな話をしてるなぁ?」
「っ!?」
燕花の呟きに重なるように、今度は窓枠のところから、やたらと快活で聞き覚えのある声が飛び込んできた。煌が勢いよく振り返ると、そこには窓の縁に器用にしゃがみ込み、ニカッと白い歯を見せて笑う白虎の姿があった。
「びゃ、白虎……!? お前、此処に居るんだ? しかも、どうやって俺の部屋がわかったんだよ!」
「ん?それは…… 野生の勘だ!」
「どんな勘だ!」
相変わらずのハチャメチャな理由に煌が思わずツッコミを入れると、白虎はひらりと軽い身のこなしで室内に着地した。そのまま煌の頭をガシガシと乱暴に撫で回す。
「細かい事は気にすんなって! ちゃぁんと正門から正々堂々と入って来てやったぞ。それより! なぁなぁ、あの堅物神官長をハメる作戦だろ? すっげぇ、面白そうな計画立ててんじゃねぇか! 俺も手伝ってやる! 人手が足りないんだろ?」
「白虎様……」
燕花が呆れたように、けれど救世主を見るような目で息をつく。
だが、煌は白虎の腕をすり抜けながら、ふと、先ほどから心の中で燻っていた疑問をぶつけてみた。
「……なぁ、白虎。手伝ってくれるのはありがたいんだけどさ。ぶっちゃけ俺、朱雀に万が一のことがあったらマジで困るんだよ。こいつが倒れたら、俺は元の世界に帰れなくなる。だから、他の方法を探さないといけないんだ」
「ん? なんで朱雀が倒れたら帰れなくなるんだ?」
白虎は不思議そうに首を傾げた。
「なんでって、朱雀しか俺を元に帰せないからだろ? まだ教えてもらってねぇけど……」
「何言ってんだ? 煌。元の世界に帰る方法なら、俺だって知ってるぞ」
「……え?」
白虎が何でもないことのように放った一言に、煌の動きがピタリと止まった。
「ただし、簡単じゃねぇ。 元の世界に戻るには、俺たち四神全員の『印』を集めりゃいい。俺の印だけなら、俺の国に来てくれたらいつでも渡してやる。あとの二人は……そうだなぁ? 交渉次第じゃないか?」
「…………は?」
「召喚の儀式直後なら、四神の力が無くても帰れたんだろうが、お前はもうこの世界に一月以上いるだろう? 俺はてっきり、この国にずっといるもんだとばかり思ってたぜ」
「……どういう、ことだ?」
煌はゆっくりと首を巡らせ、長椅子に座る朱雀を見た。
四神全員の印が必要。
ということは、朱雀一人がその鍵を握っていたわけではない。そして何より――朱雀は最初から、その具体的な方法を、煌に教えようとさえしていなかったのだ。
「……おい、クソジジイ」
煌の額にピキリと激しい青筋が浮かぶ。耳の奥が、怒りでカッと熱くなった。
「四神全員の印が必要なんてこと、一言も聞いてねぇぞ。お前、知っててわざと俺に教えなかったな……っ!?」
騙されていたわけではない。けれど、完全に「意図的にはぐらかされて足止めされていた」という事実に気づき、煌の視線に一気に極大の殺気がこもる。
対する朱雀は、白虎の余計な一言にチッと小さく舌打ちをすると、バツが悪そうにすっと視線を逸らした。
コメント
1件
白虎、まさかのタイミングで現れたかと思いきや…「野生の勘」には笑いました😂 それよりも、四神全員の印が必要って…しかも朱雀が伏せてたって、これは煌の怒りも当然ですよ! 「クソジジイ」呼びに殺気MAX、でも朱雀は舌打ちして視線逸らすだけっていう大人げなさがまた…面白すぎます。 このもどかしい関係、続きが気になります!