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―あの人はいつも眩しく輝いている。そんなあの人の光を俺が遮るなんて許されない。
きっかけはとある練習試合で監督に言われ初めて正セッターを務めたことだった。
梟谷エースである木兎さんに1番トスを上げているのは恐縮ながら間違いなく俺だ。
入部してから毎日のように一緒に自主練をしてきた。
まあ、絶好調な木兎さんならどんなボールでも打ち切ってくれるだろうけど
何百回、何千回とスパイク練に付き合ってきたのだ。
だから他のセッターよりも木兎さんの望む位置にボールを上げれた。ただそれだけ…
俺が初めて出た試合では因縁のあるチームとの戦いだったが梟谷の圧勝で終わった。
「この間の試合ではみんなよくやってくれた。試合での様子も含めて次回からのレギュラーメンバーを発表する。呼ばれたらユニフォームを受け取りに来るように!」
と監督が言った。
「…..、…..、…..、木兎、…..、」
「赤葦。以上!」
正直俺は自分がレギュラー入りするなんて思ってもいなかった。
確かに今の梟谷にはセッターが少ないが3年生に1人、2年生にも1人セッターがいる。
だから驚いたがこの時は単純に憧れのスターと試合にまた出れるのは嬉しかった。
「赤葦クン…であってるよね?ちょっといい?」と声をかけてきたのは3年生のセッターだった。
俺が「はい。」と短く答えるとその先輩に
「1年でレギュラー入りするなんて凄いじゃん!いつも自主練頑張ってたもんな!」と言われたので「ありがとうございます。」と答えた。
自主練とは木兎さんに付き合わされてる朝練前や居残りでやってる練習のことだろう。
確かにあの体力オバケについて行くのは大変だが3週間ほど前木兎さんに告白され付き合うことになってからは自主練前や後、帰り道で木兎さんと2人っきりになれるため俺にとってとても楽しい時間になっている。
木兎さんもそう思ってくれてたら嬉しいななんて考えていたら先輩に予想外の提案をされた。
「来週1週間暇だろ?俺が練習付き合ってやるよ。」
先輩の言う暇とは練習相手が居ないだろということだろうか。
来週から1週間2年生は修学旅行に行くため木兎さんと練習も出来ない。
それに普段同じセッターと練習することなんてほとんどないからいい経験になるかもしれない…
先輩と仲良くなって悪いことはないだろうし…
「それではお言葉に甘えてよろしくお願いします。」
「それじゃ来週はよろしくな!」
ということで先輩と練習することになった。
―帰り道。
今日は2年生が修学旅行前ということで自主練が出来なかったため俺と木兎さん、木葉さんの3人で帰っていた。
「あかーし、俺が居なくて寂しいだろうけど練習頑張れよ!あと浮気すんなよ!」
「お前は赤葦の彼氏かよ!」
「…..違います。」「あかーしたまには乗ってきて!」
なんて小さな嘘をつきならがらも雑談しながら歩いていた。
「でも、いっつも木兎の練習付き合わされてんだからコイツ居ない時くらいゆっくり休めよ」と木葉さんに言われたので伝えるか少し迷ったが先輩と練習することになったと伝えた。
「先輩ってこの前話してた?」「そうです。」
「それってもしかして3年のセッターの?」「はい。どうかしましたか?」「いや、なんでもない…練習頑張れよ」
木葉さんが何か考えていたようだったのが少し気になったがそのまま別れ道の交差点に着いてしまったので木葉さんとは別れ木兎さんと2人で歩いた。
「赤葦。手繋いでいーい?」
「ここ外…「人いないよ?」
木兎さんの圧に負けて手をポケットから出すとすかさず恋人繋ぎされた。
1週間も会えないのか…寂しいな
さっきは木葉さんがいた手前スルーしてしまったが寂しい。
手を繋いで歩いているとあっという間に木兎さんの家の前まで着いてしまった。
「あかーし、それじゃあまたね」と言った木兎さんを気づけば手首を掴んで呼び止めていた。
「赤葦?どうしたの?」
やばい。まだ一緒にいたくて…なんてとてもじゃないが言えない。でも早く何か言わなければ…
「赤葦もしかして寂しい?」
木兎さんのくせになんで察しがいいんだ。
俺は俯きながら縦に首を振った。重いと思われたかな…恐る恐る木兎さんの顔を見るとそれはそれは嬉しそうな顔をしていた。
「赤葦。」と言うとそっとキスをされ頭が真っ白になる。でもすごく幸せだった。
その後木兎さんがおれの家まで送ってくれた。
1週間会えないのは寂しいけどきっと大丈夫だろう。
そして木兎さんの居ない1週間がはじまった。
……To be continued