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榎本くもり
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第1話 「幸せの代償」
「……気持ち悪い。」
教室に入った瞬間、机に落書きがされていた。
『消えろ』
『死ね』
黒い油性ペンで何度も書かれた文字。
「またか……。」
私は黙って消しゴムを取り出す。
「ねぇ、それ消えると思ってる?」
後ろから笑い声が聞こえた。
振り返ると、クラスの中心にいる美咲がスマホを向けている。
「動画撮っとこ。」
周りも笑うだけ。
先生は見て見ぬふり。
誰も助けてくれない。
昼休み。
トイレで一人、お弁当を食べる。
「なんで私だけ……。」
涙が止まらなかった。
家に帰っても同じ。
母は仕事で帰りが遅く、父は私に興味がない。
私には居場所なんて、どこにもなかった。
その夜。
時計が0:00を指した瞬間。
スマホが震えた。
【新しいアプリをインストールしますか?】
送り主は表示されていない。
気味が悪い。
でも、どうせ失うものなんてない。
私は「はい」を押した。
画面が真っ黒になる。
すると、画面に一文だけ浮かび上がった。
『魔法少女になりませんか?』
その瞬間。
部屋の電気が消えた。
窓の外から、誰かの声が聞こえる。
「やっと見つけた。」
ゆっくりカーテンを開ける。
そこには――
真っ黒なフリルの衣装を着た、少女が立っていた。
少女は優しく笑う。
「私は契約の案内人。」
「あなたに、復讐する力をあげる。」
「ただし――」
「魔法を一度使うたびに、あなたの幸せはひとつずつ消えていく。」
私は思わず笑ってしまった。
「……幸せ?」
「そんなもの、最初から持ってないよ。」
少女の笑顔が、少しだけ悲しそうに歪んだ。
「本当に、そうかな?」
次の瞬間。
スマホの画面に赤い文字が浮かぶ。
『契約しますか?』
YES / NO
私は震える指で――
YESを押した。
コメント
6件
うわ、重い……でも一気に引き込まれました。 教室の落書き、笑うクラスメイト、見て見ぬふりの先生——冒頭から胸が締め付けられる描写ばかり。それでいて「魔法を一度使うたびに幸せがひとつ消える」という代償の設定がすごく好きです。幸せなんて最初から持ってないって笑う主人公の台詞、切なすぎる……。 契約の案内人、あの黒いフリルの少女も気になります。この先、復讐の代わりに何を失うのか、続きが読みたいです!