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「眠る孤独の月の下、探し求める鈴の音」
夜の静かな自室。
机の上に置いたスマホの画面には、まだ始まらない配信の待機画面が光っている。
「あ…!そろそろ“あの人”の配信始まる時間だ、!!」
胸が高鳴るのに、どこか夢を見ているみたいで。
小さな光を手のひらでそっと包み込むように、画面を見つめた。
――――
夜の街が静かに眠りにつく。
小さな机に腰を下ろし、私はマイクのスイッチを入れる。
画面の向こうには、まだ誰もいない待機画面。
それでも胸が高鳴る。
「……よし、今日も行こう」
画面の光が、私の手のひらをそっと温める。
誰も知らない私、配信者としての私が、今ここにいる。
――――――――――――――――――
「こんばんは、ネムです。今日も来てくれてありがとう」
コメント欄に流れる文字が、静かな部屋に小さな色を灯す。
『ネムちゃん今日も声かわいい〜!』
『待ってたよ!』
「ふふ、ありがとう。今日も眠れない人、いる?」
画面の向こうの誰かが笑ってくれている気がして、胸の奥が少しあたたかくなる。
いつも通りの夜、いつも通りの声。
でも、この夜は――ほんの少しだけ違う気がした。
――――――――――――――
イヤホンから流れる声が、胸の奥にぽたりと落ちた。
「こんばんは、ネムです」
その声を聴くだけで、今日一日の疲れがふっと消える。
鈴夢は布団にくるまりながら、スマホをぎゅっと抱きしめた。
「ネムちゃん、今日も頑張ってるなぁ…」
思わず小さくつぶやいて、くすっと笑う。
コメント欄がにぎやかになっていくのを眺めながら、
鈴夢はゆっくりと打ち込んだ。
『ネムちゃん、今日も声あったかいね〜』
送信ボタンを押したあと、胸の奥が少しだけくすぐったくなった。
まるで、自分の言葉が画面の向こうに届いたような気がして。
――――――――――――――――――
コメント欄に流れた文字のひとつに、ふと指が止まる。
『ネムちゃん、今日も声あったかいね〜』
いつもの言葉、なのに。
なぜかそのコメントだけが、胸の奥にそっと残った。
「…あったかい、か…笑」
小さくつぶやいて、マイクの向こうで息を吐く。
ほんの一瞬だけ、夜の静けさがやさしく揺れた。