テラーノベル
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「……ねえ、滉斗。今の聞いた?」
「聞いたよ。っていうか、スタジオ中に響いてたよね、涼ちゃん」
僕たちは、朝一番にスタジオへ入った瞬間の光景が、網膜に焼き付いて離れない。
あの、ストイックで完璧主義な大森元貴が、スタッフ全員の前でらんちゃんを抱きしめながら「らんは”僕の”彼女だからね!」と宣言したのだ。
「誰が奪うんだよ、あんなにガードが固いところに……」
「本当だよ。昨日あんなに指輪見せつけて、今日から同棲とか、スピード感がバグりすぎててついていけないよ」
元貴の「独占欲」がヤバいのはずっと分かっていたけれど、一線を越えた途端、それが濁流のように溢れ出している。
すれ違うスタッフさんに「昨日、僕の彼女になったんだ」といちいち自慢して回る姿は、まるで自慢の宝物を見せびらかす子供みたいで、微笑ましいのを通り越して、もはや清々しさすら感じる。
「でもさ、らんちゃんもらんちゃんで、元貴と目が合うたびに顔を赤くして……。あんなにテキパキ働いてるのに、中身は完全に恋する女の子だよね」
「お互い両想いで何年も我慢してたんだもんね。……あ、ほら。また元貴がらんちゃんに小声で何か囁いてるよ」
元貴が通りすがりにらんちゃんの耳元で何かを言うと、彼女が「もうっ!」と困ったように、でも幸せそうに笑う。
その甘い空気のせいで、スタジオの温度が2度くらい上がっている気がする。
「これからは、元貴からの『らんちゃん自慢』と、らんちゃんからの『元貴さんの可愛すぎる愚痴』を交互に聞かされる日々が始まるんだろうなぁ」
「間違いないね。僕ら、完全に『激甘カップルの見守り隊』兼『惚気聞き係』に就任しちゃったよ」
やれやれと、話していたら、「若井ー! 涼ちゃん! 今のらんの動き、見た!? 完璧じゃない!?」と、遠くからまた自慢げな声が飛んでくる。
「……はいはい、見てたよ。幸せそうで何よりだよ、全く」
僕たちは呆れ顔で顔を見合わせ、深いため息をつきながらも、どこか誇らしげな親友の姿を、温かい目で見守ることにした。
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🌹はなみせ🍏