テラーノベル
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🌹はなみせ🍏
撮影現場の喧騒が遠ざかり、重いスタジオの扉が閉まる。
いつもならメンバー3人で乗り込む送迎車だけど、今日からは違う。マネージャーに目配せをして、僕とらんちゃんだけの「特別な空間」を確保した。
隣に座るらんちゃんの体温が、指先から伝わってくる。
「……らんちゃん、おいで」
小さく声をかけると、彼女は少し照れたように、でも拒むことなく僕の肩に頭を預けてくれた。昨日までは、この数センチの距離がもどかしくて、喉の奥まで出かけた「好き」を飲み込む毎日だった。それがどうだ。今はこうして、彼女の髪の香りを独り占めできている。
「あの日、すれ違った時から……僕の心はずっと、君を探してたんだと思う」
石川から修学旅行で来ていたあの子鹿のような女の子が、今では僕の隣で、僕の人生を支える最高のパートナーとして笑っている。
これから向かうのは、僕一人の家じゃない。今日からは、二人で同じドアを開け、同じテーブルで「いただきます」をして、同じ屋根の下で「おやすみ」を言い合う「僕たちの家」だ。
「らん、これからよろしくね。……もう、一生離さないから」
5年間募らせてきた想いは、これから何十年かけても伝えきれないほど深い。
車窓を流れる東京の夜景が、昨日よりもずっと優しく、僕たちを祝福してくれているように見えた。
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