(陽さんさすがだなぁ。微妙な違和感からインプの異変を感じとれるところを、ぜひとも見習わなくちゃ!)
『この間の、潮吹きさせたこともそうだ。俺を感じさせたい気持ちはわからなくもないが、ほどほどにしてくれないと壊れるぞ』
「はーい、ごめんなさいです」
『最近の雅輝は、手加減をしなさすぎる。この躰と変わってほしいくらいだ』
そんな橋本の望みを聞いた神様か仏様が、宮本と入れ替わりさせた――。のか?
「オーマイガー! 南無阿弥陀仏! ごめんなさい、本当にごめんなさいっ! これからは陽さんを大事にしながら、大切に取り扱いいたします、多分……。いや絶対に! だから、もとに戻してくださいましぃ」
持っていた手鏡を戻し、崩れるようにその場にしゃがみ込むなり、あちこちにいるであろう神様仏様に拝み倒した。
すっかり弱りきった顔でトランクス一丁のまま、ぺこぺこ土下座する橋本の姿が格好悪いことを、宮本は知らなかった。
「どうした雅輝、大丈夫か?」
騒々しい宮本の声で起きたのか、ベッドで寝ていた橋本が起きあがり、心配そうな眼差しで見下ろす。
「あれ?」
聞き覚えのある声に、よろよろと頭を上げてベッドを見たら、何やってんだという表情の橋本がそこにいた。どこからどう見ても、橋本そのものだった。
「雅輝、しっかりしろ。具合が悪いのかよ?」
不思議なのは、ベッドにいる橋本の声と一緒に、天井からも橋本の声が聞こえてくる。
「はて?」
両目を擦ってもう一度目を開けたら、見目麗しい橋本のアップが飛び込んできた。しかも自分がベッドの上に横たわった状態でいることに、驚きを隠せない。
「おまえ、相当うなされていたぞ。大丈夫なのか?」
しっとりとしたあたたかい手が、頬を撫でさする。その感触で、これが現実だと思い知った。
「陽さん、俺の顔が陽さんになってない?」
「寝ぼけてるのかよ、雅輝は雅輝だって」
「良かった~。もとに戻ったんだ」
触れられている橋本の手をぎゅっと握りしめながら、思う存分歓喜した。
喜び勇んだ宮本に呆れながら、説明を求めた橋本に、夢の中の出来事をぽつりぽつりと話して聞かせる。
「俺になった気分は、そんなに最悪だったのかよ?」
喋っているうちに落ち着いた宮本を、布団に入り直した橋本が腕枕をして抱きしめた。密着する素肌から伝わってくる熱が、とても心地よく感じた。
「最初は喜んだよ。『わーい、陽さんになっちゃった』っていう調子で小躍りしたあとに、隣で寝てる自分の姿を見て、思いっきりショックだった」
「ショック?」
「そう。自分相手に、いかがわしいことができないでしょ」
「ああ、確かに。ヤル気がみるみるうちにダウンするな」
「それとね、陽さんの躰が前夜の行為でボロボロになってるのを、身をもって思い知った」
「どんだけボロボロだったんだ、俺の躰……」
見るからにつらそうな表情を浮かべた宮本に、橋本は微苦笑する。
「これからは大事にするよ。短期回数勝負にする!」
「それってさ結局のところ、今と変わらないんじゃないのか。短くした分だけ、回数をこなそうとするだろ」
「するかな?」
「するだろ、雅輝だからな」
目尻に皺を作って笑った橋本が、顔を寄せてキスをした。最初は触れるだけだったものが次第に熱を帯びて、深いものに変わっていく。
「陽さ……んっ」
「俺を心配させたバツ、おまえの躰でなんとかしろよ」
「しゃぶってほしいの?」
腰骨に当たる、形の変わった橋本の大きくなったモノを感じて、 握りしめながら訊ねた。
「んうっ、それも含めて雅輝に愛されたい」
「挿れても大丈夫?」
「ほどほどにしてくれたら大丈夫。おまえを受け止めるために、それなりに頑丈だからな」
誘い文句を耳元で甘く囁く橋本に、宮本は断る余地はなく――目の前にある躰を押し倒して、いつもより優しく行為に及んだのだった。
続く
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