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非常事態が発生した。
「陽さん、ごめん。俺、ダメみたい」
「えっ?」
声をかけられる前から、おかしいと感じていた。橋本に跨っていた宮本が力なく躰をズラし、背中を向けて横になる。布団の中で見えないように事後処理をして、なんの言葉も発することなく、だんまりを決め込む。
(ヤバい、どうやって慰めてやったらいいのかわからん。男として、これはかなりヘビーな問題だろ)
宮本が中折れした――理由はさっぱりわからない。
(もしかして、俺の中がガバガバになったせいで、刺激が足りずに感じられなくなったんじゃ……)
心当たりのある原因を模索してみたものの、自分に非があるようにしか思いつかなかった。昨日までは、大丈夫だったのに――。
「ま、雅輝その……俺が悪かった」
「陽さんのせいじゃないんだ。俺が今まで、無神経すぎたのがいけなかったんだよ」
「無神経?」
背中を向け続ける宮本に、そっと寄り添ってみる。本当は後ろから抱きしめながら、頭を撫でたりして慰めてあげたかったが、宮本の心中を察し、それ以上のことをあえてしなかった。
「夢の中で陽さんになってみて、はじめてわかった。あんなに躰に負担がかかっていたなんて、思いもしなかった」
「おまえ、それって夢の中の話であって、実際の俺の躰とは違うと思うぞ」
「だけどさ、あんなに激しく何度も出し入れしたり、腰に響くほど奥を突いたりしていたら、翌日には絶対に違和感が残ってるでしょ?」
ちょっとだけ振り返った宮本の顔は、どこか泣きだしそうな表情に見えた。
「確かに多少は残るけど、慣れちまったのもあるし平気だ」
「ごめんね、陽さん」
「俺の躰の心配するなら、違和感じゃない方面の心配をしてほしいんだけどな」
思いきって後ろから抱きつき、耳のふちを下からペロリと舐めあげてみる。
「ひっ!」
「中でも感じはじめた俺を、このまま放置プレイする気なのかよ」
「でも……」
「つらいときはきちんと言うし、それでもヤろうとするなら最終手段として、蹴とばしてでも止めさせる手くらいあるんだぞ。おまえをねじ伏せるくらい造作のない俺が、そのままでいる理由、わかるだろ?」
「…………」
「雅輝に愛されたい、俺のすべてを捧げたいんだ」
抱きつく橋本の腕の力を跳ね返し、くるりと振り返ってぎゅっと躰を抱きしめた宮本。
「陽さん、大好き――」
その後は互いの優しさに酔いしれながら、甘いひとときを過ごしたのだった。