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「お、お待たせしました!」

水都セイレーンの噴水がある公園のベンチに腰掛けていた俺の前へと、天使が舞い降りてきた。

天使は少し顔を朱くして、ハニカミながらそう告げる。

「俺も今来た所だから。それにしても、ミランは何を着ても似合うな」

「あ、ありがとうございますっ」

天使ことミランの装いは、日本のJKスタイルだ。

恐らく聖奈に『セイくんは制服フェチだから!』とか何とか言われて、半ば無理矢理着せられたのだろう……

俺じゃなくお前の趣味だと言いたい。

まぁミランは可愛いから似合っているのは間違い無いけど。

「この世界では見慣れないから新鮮でいいな」

「やっぱり、地球の男性は女子高生が好きなのですね…」

「いや、それは誤解だ!誤解ではないけど誤解なんだっ!!」

何言ってんだ。

「と、兎に角、デートしようか」

「はいっ!」

一瞬ダークミランが現れたが、俺の一言で何とか事なきを得た……

カイザー王よ、水都の平和は保たれたぞ!!

感謝しろよ!呑んだくれっ!

俺とミランは先進的な異世界情緒溢れる水都の街に繰り出すことにした。

画像




「美味しいですね」「そうだな」

「これ可愛いです」「そうだな」

「う、腕を組んでも?」「ああ」

語彙力ぇ……





「どうだった?楽しめたかな?」カシャカシャ

夜になり城へと戻ったところで、嫁がデート相手に感想を求めるという、地球であれば拷問のような時間がのほほんと流れていた。

楽しめるはずないだろっ!!デート相手は俺だぞ!?

「はいっ!馬車が通る度に、セイさんが守ってくれて……」

そんな事したか?

顔を赤らめてモジモジしつつ答えるミランは可愛いけど、全く記憶にない……

「セイくんは気が利かないけど、昔からそういうことは平然とするからねぇ…」カシャカシャ

うん。俺の批判は構わんよ。

でも、カメラは一旦置いて落ち着け。

「あーはやくこんな可愛い妹が出来ないかなぁ…」

……

「父もすでに覚悟しているようですし、私が結婚しないと妹まで行き遅れて…」

……

ざっけんなっ!!

外堀埋めるのはやめようね?

聖奈はミランに『お姉ちゃん』って呼ばせたいだけだろうがっ!

残念なことにウチの姉貴に呼ばされてるけど……

「それで最近バーンさんが余所余所しいのか…」

この前家具の運搬に行った時もなんかどもってたし。

これはミランママに余計なことを言われてるヤツだな……

『貴方がセイさんにうるさく言ったから、ミランがお嫁に行き遅れているのよっ!』

こんな感じなんだろう。

憐れバーンさん……ざまぁ…え?

俺を虐め飽きたのか、聖奈が姿勢を正して真面目なトーンで話し始めた。

「WSもアルカナの隠れ家も前年同期150〜170%の成長率だったよ」

アルカナの隠れ家とは、俺達の商会の名前だ。

ずっと個人の商店だったが、国を興したタイミングで商会として屋号を得ていた。

得ていたんだが…俺と聖奈の名付けのセンスは壊滅的な訳で、結局パーティ名アルカナの探究者からモロパクリしたんだ。

「何だかそんなに急成長を続けていくと、いつかバブルみたいに弾けそうだな……」

ずっと右肩上がりは何だか怖い。

坂は急なものほど転げ落ちやすいからな。

「そうだね。このまま行くとどこかでそうなるのは間違いないよ。そもそも十年続く会社なんて一握りなんだから仕方ないけどね」

「おいおい…良いのかよ?」

俺は…別に構わん。

貯蓄もかなりあるし、使い道はないからな。

気になるのは社員やパートさん達だ。

雇ったからには最後まで足掻きたくはある。

これが借金まみれで倒産する経営者の思考か?

「大丈夫。ちゃんと考えもあるし、WSは借入ゼロだから明日売上ゼロになっても全く問題ないかな。社員達の退職金は積み立てているしね」

ありがとう。これで憂なく潰せるよ。

いや、潰す気はないのだけども。

「ん?じゃあWSは将来的にどうして潰れる予想なんだ?」

「純粋に人件費などの経費で手が回らなくなる時が来るの。社員達は一つでも多く売ることに注力しているから、これは止められない流れなの」

「止められない?」

社長なんだからガツンと言ってやれよ。

あれ?それだと俺が言うのか…?

いや、皆んな聖奈を社長扱いしているから問題ないなっ!

俺はただの荷運び人だ!

「だって売るために支店を出す、人を雇うって話になるでしょ?」

「そりゃあ…多く売ろうと思えば窓口を広げて…その為に人が必要で…倉庫や店舗も必要に…」

「うん。それが今のウチの状況だよ。いつか潰れるからこれ以上売上を上げる努力をやめようなんて言えるわけないよ。特に今は広がれば広がるほど売れる時期だし」

「…いつか飽きられるのか」

手を広げ過ぎて倒産した会社なんて、俺でもいくつか知っているくらいの倒産あるあるだ。

「そう。もちろん需要はなくならないし、値段次第では利益が減っても売ることは出来るけど、経営は慈善事業じゃないからそんな風に安売りするつもりもないしね」

まぁバーンさん達が命削って作っている家具を、地球のお金を手に入れる為に安く売るのは違う気がするしな。

「どれくらいで需要を供給が上回る予想だ?」

「何もなければ今後十年は問題ないかな。その後は徐々に売れなくなって更に五年くらいすると事業の縮小が始まるのが今の所の予想だよ」

「そうか…」

案外大丈夫そう?かな。

十年今の勢いで貯蓄出来ればやばい金持ちになれるぞ。

「セーナさん。考えとはどういったモノなのでしょうか?」

「よくぞ聞いてくれました!って、言っても地球むこうでは割とよくある手法なんだけどね!」

「それは?」

俺が黙ると次はミランから聖奈へ向けて質問が飛んだ。

確かに気になるが…勿体ぶるなよ!!

早く教えて、聖奈えもん!

「フランチャイズ化するの」

「フランチャイズ…代理店ですか?」

流石ミランさすミラ

横文字もバッチリだねっ!

翻訳さんのお陰かもしれんが、ミランは褒めて伸びる子だから褒めちぎるぜっ!!

「そそ。私達はエンドユーザーへの取引をやめて、加盟店に商品を卸すまでの仕事に留めるの」

あれ?それだと……

「今ある店舗はどうすんだ?」

「それは社員達に希望者を募って格安で譲るの。今WSの社員は1,000人を超えてるけど、それで恐らく三分の一程度に減らせて、その残った社員には倉庫整理や配送業に従事してもらうつもり。

残る社員が予想より多ければ、退職金を割増で出して退職してもらう予定だよ」

俺が砂糖を瓶詰めしていた会社は最早無くなっていると言ってもいいだろう。

思えばあの頃が一番ワクワクしていたな。

今は幸せだから戻りたいとまでは思わないが。

「そうか。やはり聖奈に任せていて間違いなかったな」

「まだこれからいくらでも間違うタイミングはあるから、その言葉は今際の際いまわのきわにでもまた聞かせてね!」

勝手に殺さんでくれんか?

保険金はたんまり掛けとけよ。

聖奈のサプライズ報告を受けて、その日は休むことになった。

次の日からまた忙しなく動くことになるとは……

油断し過ぎていたな。






「悪い。見落としていた」

翌朝、転移して早々に城へとUターンした俺は、仲間達に向けて謝罪した。

「いえ。私がこんな時にデートに誘ったのが間違いだったのです。すみません」

「いや!ミランは悪くないぞ!悪いのは全部この俺だ」

「はいはい!イチャイチャはそこまでにしてね?」

俺とミランがお互いを庇い合っていると、聖奈が茶化してきた。

「兎に角!間が悪いことに、恐らく昨日から連邦が王国に向けて出兵したわけだよね?」

「そうだな。まだ始まっていなかったが、向こうは準備万端で国境付近までやって来ていた。対する王国側は連邦の1/5も集まっていなさそうだったな」

数の暴力というより、文字通り桁が違うくらい差があるように思える。

「私もセイくんとデートする時間くらいあると思っていたけど…どうやら連邦は皆んなせっかちみたいだね」

「ああ。予定通りか?」

「時期は予定通りじゃなかったけど、やることは同じだね」

はぁ…気が重い……


けど、仲間の為、知り合いの為、国の為にも頑張りますか。

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