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※14×12..学生という設定でのストーリーとなっています。

















深夜。

ベッドに潜り込みながら手元のスマホをタップする。もう何度目になるだろうか。



一旦スマホを手放すが‥電子音が鳴るたびに、慌ててスマホを手に取り画面を見て落胆する。期待する度にスマホを見て、彼からじゃないという現実に打ちのめされる。




(今日も来るわけないのに‥)



約束をしていたわけじゃない。付き合ってはいるが、頻繁に連絡を取り合うというわけでもない。

というか、ほぼ俺からしか連絡を取っていないのだということに改めて気付かされる。


多忙を極める彼からの連絡はほとんど無かった。

向こうからしてくれたのはいつだったっけ?と思い出さなければならない程に。



意味もなくスマホをタップする。SNSを覗くと、色んな情報が飛び交っている。それを虚ろに眺めながらただひたすらスクロールしていく。まるで流れ作業のように。ほぼ事務的に。


しかし、



そんな中、ふと、一つの投稿に目が止まる。


〘我がバレー部は飲める人も飲めない人も大歓迎!!イケメンキャプテンが待ってますよ!〙



つい今しがたアップされたその内容は、簡潔なその一文に‥数枚の写真が載せられていた。

投稿者は、某大学のバレー部員のものだった。


どこかの居酒屋なのか、座敷上で集まり、男女が楽しげに顔を寄せて思い思いのポーズを取りながら写真に写っていた。

そして、その傍らに‥‥‥


キャプテン‥彼が居た。



目立つのが苦手な彼らしく端っこに佇んでいるが、その彼を囲むようにして複数の女性が嬉しそうな表情を浮かべている。中には、親しく腕を絡めながらピースサインをする女性部員も。

女性ファンが多いのは理解していた。中学生の頃から彼の認知度は凄まじかったからだ。どこにいくにも人だかりが出来る。もはやスターのような存在だった。


たまたま観に行った中学のバレー部の試合。そこで、俺は彼‥石川祐希と出会った。


圧倒的プレー力、存在感に瞬く間に虜になった。



見終わった後、駆け込むように家に戻り、ゲームをしている兄に


「バレー部に入りたい!!」


と叫んだ日の事を今でもよく覚えている。ジリジリと日差しの強い初夏だった。


彼に憧れ、幾度となく試合にも足を運んだ。真摯にバレーに取り組む姿勢に、スパイクや守備力といった高い技術を持ちながらも常に上を目指す向上心に‥何もかもが俺の心を揺さぶって仕方なかった。


本当に楽しそうにボールを追いかける。その姿から目が離せなかった。

俺もあの人の隣に並びたい。いつからかそう思うようになった。思いは日に日に強さを増し、バレーの練習にも熱が入る。寝ても覚めてもバレー漬けの日々。正直辛かった。投げ出したくなる日も確かにあった。

それでも弱音一つ吐かなかったのは、彼の存在があったからだと思う。


それから‥‥3年が経ち、彼が高校3年の時、いつもの様に試合を見終わった後、帰路へと向かっていた。が、途中で携帯を無くしている事に気がつく。


慌てて、もと来た道を引き返す。体育館はもうすでに静寂に包まれ、しんと静まり返っていた。先程までの熱気と喧騒が嘘のようだ。


携帯はすぐに見つかった。観戦中、興奮して立ち上がった時に落としたのだろう。座席の隙間に転がり落ちていた。それを屈み込み拾い上げると、不意に近くから声を掛けられた。



「どうしたの?」


凛とした澄んだ声にハッと上を向くと、そこには‥‥



彼、石川祐希がいた。




穏やかな瞳。大きなアーモンドアイが不思議そうに俺を見つめる。春の木漏れ日のような柔らかい眼差し。


憧れの人に間近で見つめられ、慌てて立ち上がる。


「あ‥‥‥えと、‥‥‥‥携帯‥忘れてて‥」



緊張のせいで言葉がうまく紡げない。きっと今の俺は真っ赤になっているんだろう。我ながら情けない。



「そか‥見つかったの?」


優しい問いかけに必死で首を縦に振る。そんな俺を見て彼が笑う。屈託のない笑顔に、心の奥でドクンと何か‥弾けた気がした。



「君さ、よく試合見に来てくれるよね?」


「え‥‥‥」


「好きなの?」


「いや‥‥あっ、あの‥‥」


「好きじゃないの?バレー?」


「へ?‥あ‥‥///いや、好きっす!大好きです、バレーが」


妙に力んで答えてしまったが、それにも彼はクスッと笑った。良かった。好きなの?と聞かれた時は違う意味かと思ったから‥



「君、何年生?」


「‥小6っす」


「バレーやってる?」


「はい!!」


「元気いいな。いつも試合見に来てくれてありがとう。俺、石川祐希、よろしく」



目を細めて少し屈み込みながら、彼が手を差し出す。震えながらもその手に触れ自分の名前を伝えた。



それが、石川祐希、彼との最初のやり取りだった。それからは試合を見るたびに声を掛けてくれて、いつの間にか連絡を取り合う間柄にまでなった。




それから‥また数年が経ち、



祐希さんは大学に進学。俺は高校生になった。


そして、


高校一年の夏に‥思いがけない事が起こる。



「藍‥俺、お前が好き。付き合ってくれない?」



まさかの祐希さんからの告白だった。


信じられない。


何度も自分の頬を抓った。あまりにも現実味がなく、これはドッキリなのか?後から笑われたりするんやろか‥一瞬そう疑ったが‥



祐希さんからの告白は本気だった。



真っ直ぐに俺を射抜く視線には、嘘などないように感じた。


こんな年下の俺を選んでくれるのか‥。


俺も祐希さんが好きだった。その思いが成就しようとしている。色んな言葉が胸に溢れるが‥どの言葉を発しても足りない気がして‥


俺は震えながらひたすら頷く事しか出来ず。


そんな俺を見て‥また祐希さんが笑った。



両想い。

その実感が湧いたのは‥家に帰り、食事をし、風呂に入り、ベッドに潜り込んだ瞬間だった。



あの石川祐希と両想いなんて。


しかも、付き合って欲しいなんて。



夢でない事を願うばかりだった。


幸せで。


こんなにも幸せな事があっていいんだろうかと。




その日の夜、祐希さんからの通知が届く。


〘これから、よろしく。〙


そのたった1行を何度も読み返しては、幸せを噛み締めた。

明日も早朝から朝練があるというのに、胸は祐希さんでいっぱいで眠ることも出来なかった。



それが、1年前‥



甘い交際生活を夢見ていた俺の期待は‥‥‥早々と砕かれることとなる。




“会いたい“


“今日何してた?“


“もう帰った?”


いつだって、連絡するのは俺からだった。


鳴らない携帯を握りしめて過ごす夜にも悲しいかな‥慣れるようになってきた。





「祐希さんは、ほんまに俺が好きなんやろか‥」



俺が呟いた独り言は、乾いた部屋に微かに響いてはすぐに消失した。




愛されてる‥


その実感が欲しかった‥。



だが、



結局その日も祐希さんからの連絡はなかった。




綺麗な女性部員に囲まれている彼の姿だけが、嫌でも瞼にこびり付き、俺の胸を痛めた。



鳴らない携帯を握りしめたまま朝が訪れようとしている‥


この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

おぉ!新作ですね!どういう展開になるのか楽しみです😊

ユーザー

待ってました♡今回も楽しみです😊

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