テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
Doors好きな主
42
今回は少し短い話で、怪談としては珍しいものではない。
けれど、似たような経験をしたことのある人なら、読んでいるうちに当時の感覚を思い出すこともあるだろう。
霊感のある人にしかわからない、いわゆる「霊感あるある」の話である。
「あいつ、何してるんだ?」
タクシーで移動していた時、車窓の向こうに坂本の姿を見つけた。
夕方を少し過ぎた頃だったと思う。
橙色の光が残る石畳の道を、軽装の坂本が一人で歩いている。
人通りはほとんどなく、目につくのは道端をうろつく野良猫くらいだった。
最初は偶然見かけた友人に少し驚いただけだったが、すぐに妙な違和感を覚えた。
(歩き方が……?)
彼が歩いていたのは、決して狭くない道だった。正面から誰か来たとしても、互いに少し寄れば十分すれ違えるほどの広さがある。
それなのに坂本は、大きく右へ寄ったかと思えば、今度は左へ避けるように進んでいた。時には急に肩だけをひねり、何かとの衝突を避けるような仕草まで見せる。
一見すると、ひどく不自然な歩き方だ。
けれど私には、それがただふらついているようには思えなかった。
まるで――そこにいる誰かを、避けながら歩いているような……。
すると、どうやら運転手も坂本の奇妙な様子に気づいたらしい。
バックミラーでちらりと私を見て、笑いながら言った。
「暖かくなってくると、ああいう変な人、増えますよね」
その言葉に、わずかに苛立った。
友人を馬鹿にされたから、というだけではない。
自分には視えない。
理解もできない。
だから「変だ」と決めつけて笑う、そのことが妙に引っかかったからだ。
もちろん、自分で見たものや聞いたこと、実際に経験したことしか信じられないという感覚はわかる。
私だって、何でも無条件に受け入れられるわけではない。
けれど、自分に認識できないからといって、そこに何も存在しないとは限らない。
窓の外、坂本の姿が少しずつ遠ざかっていく。相変わらず、右へ、左へと何かを避けて歩きながら。
(そこに、何かいるんだろ?)
私には何も視えていない。
ただ、道端にいた数匹の野良猫も、背中の毛を逆立てながら、何かに警戒していたのが印象的だった。
コメント
1件
うわ、この「見えてる人にしかわからないあるある」、すごくリアリティあるな…。運転手が「変な人」って笑うとことか、主人公がそれに苛立つ心情、めっちゃわかるわ。自分に見えないからって存在しないとは限らないってスタンス、ちゃんと持ってて好感持てた。野良猫が警戒してたのも良いアクセントだったな。続き気になる!