ただ普通に恋をする。

同じクラスの黒崎君はクラスの中心的存在。髪色のせいで不良と喧嘩することがあるけど強くて、霊感がかなり強いことで有名だ。

「(今日も喧嘩してきたのかな。)」

顔にできた傷を見て、すぐに本へと視線を戻す。私は積極的に話しかけるタイプではないので、クラスメイトが話しかけてくる以外は1人でいる。そんな私は明日黒崎君と日直をすることになった。

「おはよう。早いな。」

日直は誰よりも早く学校に来なければならないという謎ルールの下、職員室に日誌をとりに向かっていると、既に日誌を持って教室に向かう黒崎君と遭遇。

「黒崎君こそ早いね。日誌貰ってきてくれてありがとう。」

黒崎君の一歩後ろを歩いて教室へ。

「今日やること多いよね??」

「そうだな。プリント配布に体育の用具の出し入れ、曜日が悪かったな。」

「ほんとだね。」

誰も来てない教室に入る。お互いの席は離れている。

「前の奴らが書いた日誌、一緒に見ねえか??」

「え!?あ、良いよ。」

驚く私に優しく笑って、黒崎君は私の横の席の椅子を持ってきて、私の机に日誌を開く。

「ケイゴのヤツろくなこと書いてねえーな。」

日誌よりも日誌を見る黒崎君から目が離せない。

「(綺麗な髪。綺麗な横顔。)」

「??」

おはよー。

視線に気づいた黒崎君と同時に1人教室に入ってきた。

「おはよー。お前も良かったら見るか??」

たまたまその子が私の席の横の子だったから、黒崎君は私の前の席の椅子に座った。

浅野君、ほんとにろくなこと書いてないよね。

「そうだよな。」

そのうちにちづるちゃん、たつきちゃん。織姫ちゃんたちも集まって他愛ない話で盛り上がり。

日直、号令～。

出席番号が先の私が号令をかけHRが始まる。

今日はほんとに忙しかった。最後の体育の後片付けで。

「今日に限ってハードルなんだよな。」

「往復が大変。」

「無理すんなよ。」

「うん。これくらい平気。」

とハードルを2つ抱え用具室へ。

「貸してみ。」

黒崎君は私から1つ取り、左右に2個抱えて歩き出す。

「黒崎君って運動神経良いよね。なにかやってた??」

「中学まで空手を。」

「そうだったんだ。」

「鬼塚は何を??」

「私は、バレーボールを7年間。」

名前を呼んでくれたのがとても嬉しい。

「どおりで球技大会のバレーが上手かったわけだ。」

「見てたの??」

「俺の出番があるまで少しな。」

「負けちゃったんだけどね。」

「鬼塚のおかげでコールド負けせずにすんだってちづるが言ってたぞ。」

「そう言ってもらえて嬉しいな。」

片付け終わって用具室の鍵を締めた。

「鍵返してくるから、先着替えてきな。」

「いいの??ありがとう。」

帰りのHR後。

「鬼塚が書いた日誌、面白くて好きだな。」

その言葉に動揺してシャーペンの芯を折ってしまう。

「悪い意味じゃなくて。文章力と表現力があってすごいなと思って。」

黒崎君は思わせ振りなことを言わない人だ。

「そんな風に見られてたなんて、照れるな。」

「なんかその。いつも1人で過ごしてるから、どんな子なのかなって…。」

だんだん小さくなる声と赤らむ顔。

「根暗なアニメオタクよ。」

日誌を書き終えたので荷物をまとめる。

「私が先生に渡して帰るわね。」

「いいのか??」

「うん。ケイゴ君たち外で待ってるみたい。」

窓からケイゴ君が手を振ってるのが見えた。

「じゃあよろしくな。」

「うん。」

彼を見送ったあと、たくさん喋った嬉しさで火照る顔を冷ましながら職員室に向かった。