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「千景くん♡お弁当作ってきたから食べて!」
「体操着洗ってきたよ♡」
「勉強教えてほしい〜!!」
「必要なものがあったら言ってね♡♡」
(うるさい。)
俺は心の中でそう思い、窓の外を見る。
俺の机の周りに何処の誰かも覚えていない女が群がり、甲高い声を上げながら俺に話しかけている。いつもの光景。
(早く授業始まらないかな。)
そう思い、俺の事で盛り上がっている女達には目もくれず窓の方だけを見ていると…。
「こっち向いてよ〜、千景くぅ〜ん♡ 」
女の1人が俺の腕に抱きついてくる。
(あーうざ。)
俺は、女を振り払い何も言わずに荷物を持って教室を出る。
教室では、俺の机の周りにいた女達がぎゃあぎゃあと騒いでいる。
「もうあそこの場所には戻りたくないし、家に帰ろ。」
そう言いながら玄関へと向かいながら、 スマホに電源を入れる。
「うわ、何これ…。」
チャットアプリの通知欄を見てみると、俺の今付き合っている(暇潰し) “サユリ” からの通知で埋め尽くされていた。
【千景くんは今学校かなぁ?】
【今夜会いたいです♡】
【会いたいよぉ〜!愛してる♡】
【今日友達に千景くんの写真見せたら、美男美女でお似合いカップルって言われちゃった♡】
「……コイツ飽きたな、もう捨てよ。」
そろそろ潮時だと思い、サユリに【飽きたから別れる】とだけ送ると、相手からの返答を待たずにブロックした。
(また明日、良い暇潰し相手見付けるか。)
俺はそう思いながら帰路につく。
ーー次の日。
俺はいつものように態と遅れて学校へ向かう。
理由は単純、混雑した満員電車に乗りたくないからだ。
教室では既に1時間目の授業が始まっているが、俺からしたら心底どうでも良い。
こんなクソみたいな学校、来ただけ感謝して欲しいくらいである。
欠伸をしながら面倒くさそうに教室の扉を開けて中に入ると、教室内に居た人全員が俺に視線を向けてきては騒ぎ出した。
「きゃあああ♡♡ 今日もかっこいい!」
「千景くん!おはよ♡ 私今日学校来てよかったぁ〜!」
「おいおい、相変わらず女子人気高ぇな!?さっすが学校一のモテ男!」
「おいコラ桃瀬!! 遅刻するなとあれほど…!」
甲高い悲鳴や怒号が飛び交う中、俺はいつもと同じ光景に溜息を吐きながら窓側の席に着く。
「……全く。次は絶対に遅刻したら単位落とすからな?…さて、気を取り直して授業の続きをするぞ。教科書〇ページの✕行目の……」
面倒な授業が始まり、俺は机に頬杖を着きながら次は誰で暇潰しをしてやろうか考える。
(…あ。アイツにするか。)
俺の斜め前に座っているポニーテールの髪型をした女。
さっきから俺の方をちらちらと振り向いては正面を向きを繰り返している。
傍から見たら完全に不審者であるその様子を観察していると、その女とふと目が合ってしまう。
このタイプの女は笑顔に弱いと確信すると、優しく微笑む。
その瞬間、ポニーテールの女は林檎のように顔を真っ赤に染め上げる。
(堕ちたな。)
俺は確信する。
あの女は完全に俺に惚れたと。
ーーキーンコーンカーンコーン
1時間目の授業が終わるチャイムが鳴り、教師が教室を退室する。
俺は、机に群がる女たちを素通りし、先程のポニーテールの女の席まで足を運ぶと口を開く。
「…あのさ、君。」
女の肩がびくっと震え、真っ赤な顔をしたまま恐る恐るといった表情で俺を見上げる。
「ち、千景くん…!?♡ な、ななな何!?」
どうやら俺に話し掛けられてテンパっているようだ。
当然だろう。
学校一のモテ男と噂され、一度も話した事の無い俺が話し掛けているのだから。
「あのさ、俺と付き合って欲しいんだけど。」
「…………え?」
ガヤガヤしていた教室が一瞬にして凍り付いたような冷たい空気となる。
そして焦ったように怒号を撒き散らす複数人の女達。
「はぁぁあああ!?!?」
「え、なんで、ちょっ…!千景くん、付き合うなら私と!」
「なんでこんな地味女と!?有り得ないんだけど!」
そんな女達の声など聞こえて居ないのか、ポニーテールの女は瞳をうっとりとさせながら口を開く。
「っ千景くん♡♡ あ、あの、私!夢みたいです、まさかあの千景くんと……♡ 私で良ければ是非付き合ってください!!」
あぁ、本当に女はバカで単純な生き物だ。
俺の予想通りに事が進んでいく様に、思わず口元がニヤけそうになるのを必死に堪えながら笑顔を向けたまま話してやる。
「こちらこそ宜しくな。…あのさ、今日これから俺と一緒にサボらない?」
「え、ぁ、あの、でも私、皆勤賞を狙っていて……!」
たかが1人の女如きが俺に歯向かうなど許さない。
苛立ちを抑えながら、笑顔を崩さずに女の手を取り指を絡めながら強請るような視線を向ける。
「……ダメ?」
「っ!?♡♡ ダメじゃないです!行きますぅ♡」
瞳にハートを浮かばせながら、何度も首を縦に振る女の様子に満足する。
(はは、ちょっろ…♪)
この光景に教室で未だ唖然としているクラスメイトに気付かないフリをしながら、俺はポニーテール女の腕を引き学校を出た。