テラーノベル
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インベントリ整理を終えて、ようやく新しいことに手が付けられるようになった。
そんな現在、一体何をしているのかというと、新しいアイテムの開発で四苦八苦しています。
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スケルトンダンジョンのボス戦の決定打となった、初の自作アイテム【魔石の粉末】。その効果は当初の予想外ではあったが、結果的には大活躍だった。
今のところ、このアイテムの課題は危険性とコストだ。
その改良の第一歩として
「爆発範囲を狭め、一点の火力の上昇」
と
「爆発ではなく、炎の継続的な燃焼として敵にダメージを与える」
の二通りを考えている。
そんな考えでアイテムの改良を行っているのだが、これがまた、なかなかに難しい。
爆発範囲を狭めるために粉末を少なくすれば、間違いなく威力は下がる。
かといって、粉末を一定の空間内にまとめるのも厳しい。
あの爆発は燃焼反応が急速に進んだことが原因だと考えられる。
反応をもう少し緩やかにできれば、爆発ではなく継続的な燃焼効果を得られるかもしれない。
いろいろと考えて、粉末を小麦粉の塊に練り入れてみたり、水や油に溶かそうとしたり試行錯誤しているが、そう上手くはいかない。
・・・私は一体何をやってるんだ?パン作りか?といった具合だ。
爆発の威力だけはあるんだ。威力だけは。
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そんなこんなで、自作アイテムの改良に苦戦していると、一件のメールに気が付いた。
村上さんからのダンジョン攻略?設営?のお誘いメールだった。
???村上って誰だ?
それほど広くはない自身の交友関係を思い出していると、初めてフィールドダンジョンに行ったとき、連絡先を交換した人物のうちの一人だと気が付いた。
たしか、集まって情報交換しているグループの中でも、なんとなくまとめ役になっていた若干年のいった会社員風のお兄さんだ。
内容を確認してみると、件のフィールドダンジョンの二層目攻略をこれから本格的に行うことを受けて、休憩できるポイントをダンジョン内に設けたいという内容だった。
あー、なるほど。確かにあそこの一層目の平原には炊事や休憩に使えるキャンプ場のようなものがいつの間にか設けられていた。
あれを二層目でも作りたいのだろう。
報酬などは特に無いボランティア活動のようなものだが、メンバーはすでに何人か集まっているようだ。どうやら私は現状では貴重な遠距離担当として声がかかったようだ。
思い出してみれば、確かに村上さんたちと話したときには弓を使っていた。
それにしてもよく覚えてるな。
あの時期にしてはみんな装備がちゃんとしていたことぐらいは覚えているが、誰が何の武器を使っていたかとかは全然覚えていない。
無報酬だし、参加出来たらで良いとは書かれているが、特に予定もない。ちょうどアイテム制作では行き詰っている。
行ってみるのも悪くないな。
それに、今回はいわゆるパーティーのようなものを臨時で組むようなのだ。
これまでずっとソロ攻略だったから、集団での戦闘もそうだし、他の人がどう戦うかも学んでおきたい。
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三日後。
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予定の時間よりも早めに駅前についたので、ダンジョン内をうろうろすることにした。
この駅前のフィールドダンジョンは暖かい日差しと涼しい風の「春の陽気」といった環境なので、散歩するだけで気晴らしになる。
どんよりとした空気にうすら寒いスケルトンダンジョンには無い良さだ。
入口から少し離れたダンジョン内の休憩場所まで歩くと、少し前とはまた様子が変わっていた。
・・・なんだこれは?バザーかな?
炊事場からは少し離れた場所で、アイテムを敷物の上に並べて、やり取りを行っている区画が出来上がっていた。
流石に気になったので、少し人が少なめの区画で敷物を広げている暇そうな男性に声をかけた。
「こんにちは、もしかしてここはアイテムのやり取りをしている感じですか?」
「ああ、どうも。そうだね、ここらへんで敷物を広げている人たちはみんなアイテムの売買、いや物々交換をしている人たちだね。」
詳しく話を聞くと、先週ぐらいからこの場所でバザーのような形でアイテムのやり取りが行われているようなのだ。
というのも、もともとはダンジョンの外、探索者施設の中で細々とやり取りが行われていたそうなのだが、そこでのアイテム関係の取引はもめごとなどもあり禁止になった。
そこで、もともとそれなりの安全が確保されていて、人の集まりも良いダンジョン内の休憩ポイントでアイテムバザーが開かれるようになったそうだ。
この男性も元々はこのフィールドダンジョンの攻略をしていたそうなのだが、自分のあまりの戦闘の才能の無さに絶望して、アイテムを売り払おうとしていたらしい。
ところが、アイテム交換が楽しくなって気が付けばこのバザーに居ついていたのだとか。
今はあえて需要のなさそうなアイテムを買い込み、マニアックなアイテムを集めたりしているそうだ。
確かに広げられた商品と思しきアイテムを見ると、人気のエリアのメイン商品である剣などは少なく、消耗品や謎アイテムの類が多かった。
ただ他の場所の売人と違って、矢なども置いてあるので個人的にはかなり気になる。
「実は弓を使ってるんだけど、そこの矢とかは売ってもらうことはできる?」
自分の弓を見せながら、端の方に集められた矢束を指さす。
「おお、珍しい!そりゃあもちろん。集めてると言ってもこういう珍しい人のためにアイテムを集めてるんだからもちろんさ。
ただ、売ると言っても金銭だと割高になるよ、たぶん。だから基本的にはアイテムの物々交換でやり取りしてるんだ。相場が定まっていないのもあるけどね。」
聞くと矢の束でも結構な値段だ。
それほど現金を持ち歩くタイプではないので、これではあんまり数は買えそうにない。
「じゃあ、アイテムの物々交換で。この剣とかどうかな?」
買っておいたゴルフバックから取り出すフリをした、スケルトンダンジョンで拾った適当な鉄剣を見せる。確か、二層目でのドロップだったかな?
周りの様子を見ても、あまりステータスやインベントリを使っている人はいないので、できるだけ明かさない方針で。
「剣か。いいね!ちょっと見させてもらうよ。」
渡した剣を確認しながら、男性が話す。
「剣はね、物々交換でもかなり人気だね。外の探索者施設あるでしょ。あそこでは剣が最低でも五万で買い取ってくれるから、半ば価値は保証されたような感じだからね。
もっとも、ここのバザーでなら少なくとも倍の価格で売れる傾向があるけどね。」
「それだと、探索者施設に売る人いないんじゃないですか?」
「ああ、そうなんだよ。そこが問題なんだ。ここにバザーが開かれたのも、施設内で禁止されたからって話なんだが、その原因の一つは、施設の買取の目の前で、さらに高値で売買されたからなんだ。」
「ああ、それは確かに。ふふっ。揉めますよね。」
「だよな!もっとも、もとの買取価格が低すぎるのが問題だけどね。ネットのフリマとかだともっと高いからね。まあ、現物を確認できないから、不人気気味だけど。」
剣を確認する男性の、どこか役に入ったような話し方にツボりながらも話を聞く。こういう感じは嫌いじゃない。むしろ好きだ。
せっかくファンタジー要素にあふれているんだ。なら楽しんだ方が得だろう。
剣の状態を確認したようでこちらを向く。
「うん、いい剣だ。特殊な効果とかはなさそうだけど、鉄の剣ってだけで売れる。デザインも悪くない。それになにより状態が良い。多分これ未使用でしょ。」
「そんなことまで分かるんですか?すごいですね。」
「お兄さん弓使いだし、この剣使ってないんでしょ。だけどそういうのは結構珍しいからね、大体使われた形跡はあるし、みんな装備の手入れの方法とか知らないから状態は悪くなる一方だし。
まあ、ボロボロの剣でも武器不足なら売れるからね。
この剣なら結構いい値段になるけど、どうする?」
「じゃあ、そこの矢束のセットとついでにそこのロープと鉤縄ください。」
「オッケー分かった。だけど、それだけだとだいぶ足りないね。このロープとかは外のやつだし。せっかくだしこれとかどうよ。」
そう言って奥から取り出したのは、雰囲気のある矢のセットだった。
「たぶんこれは、風系のなんかの効果が付いた矢だね。数がそんなにないからあれだけど。これと短剣を数本とかでどうかな?」
「おお、そこまで分かるんですね。話題の鑑定とかですか?」
「いやいや、なんとなくそう思うだけだけどね。もしかしたらなんかのスキルなのかもしれないけど、ステータスを見れないことには何とも。」
「わかりました。じゃあ、その特殊な矢のセットで。
あと短剣は無しで、代わりに面白そうな矢とか投げモノが手に入ったら取り置きとかできます?」
「ああ!いいねそういうの!まあ矢とか買う人あんまりいないけど、良さそうなのがあったら残しておくよ!」
気づけばそろそろ約束の時間なので、男性に挨拶してバザーを後にする。
面白い買い物も出来たし、相場もなんとなく掴めた。それにしても剣の価値の暴騰が酷い。いや、逆か?矢が安いのか?
それに、あの売り手の男性もぼったくることなく、いろいろ教えてくれた。
いい人に出会えた。
あ、名前とか聞いとけばよかった。まあ、またバザーに行けば会えるか。
コメント
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第85話読了!今回はアイテムバザーの新要素が面白かったです🍀 戦闘以外の世界の広がりを感じられて好きな展開でした。売り手のお兄さんと主人公のやり取りも自然で、「役に入ったような話し方にツボる」って共感しかないです(笑) 風系の矢を手に入れたし、次はダンジョン設営の話ですね。違うプレイヤーとの交流、楽しみにしてます✨