俺は3年間だけバロックワークスで働くことを了承した。クロコダイルの付き人もするし、書類仕事もする。情報収集だってやる。
その間の衣食住も面倒見てくれているし、俺はクロコダイルには意外と恩を感じている。
「エメリヒ」
でもドフラミンゴには何も思ってねえよ!! むしろ恐怖さえ感じてるわ!!!
「エメリヒ」
「あ、あ、はい、なんですか??」
俺が返事をするが、ドフラミンゴはじっと見つめたまま動かない。な、なんだ?? 首を傾げながら様子を窺っていると、ドフラミンゴはゆっくりと口を開いた。
「顔は見せてはくれねぇのか?」
「……お、俺にもプライバシーがあるので……?」
そう言いながら俺は狐の面を手で押さえる。一応ドフラミンゴにも素顔を見せていない。というかバロックワークスの中で俺の顔を知っているのはクロコダイルとロビンの2人だけだ。
下っ端社員ならまだしも、ドフラミンゴに顔が割れるのはまずいし、そもそも見せたくはないのだ。でも無理矢理剥がされたらあっさり見られるな……なんて思っていると、ドフラミンゴが俺の耳に触れた。
「んっ」
思わず変な声が出てしまって、俺は恥ずかしくなる。耳たぶを撫でられて、指先でピアスを弄られる。ふにふにと触られたり摘ままれたりしているうちに、だんだん息が上がり始めた。
やばい、やばい。これ以上はまずい。主に俺の貞操が!!
俺は剃を使い、その場から逃げる。そのまま適当な場所に逃げても捕まるのでクロコダイルの部屋に駆け込んだ。
部屋に入ると、クロコダイルは葉巻を吸っていた。
「社長…」
「…チッ、また鳥野郎か」
流石社長、何も言わなくても俺の状況を察してくれたようだ。俺はそろそろとクロコダイルの方に近寄り、机の影に隠れるようにしてしゃがむ。
「俺、なんかしましたかね」
「さァな」
ドフラミンゴに気に入られるようなこと、何もしてないと思うんだけどなぁ……。
3年間の契約はもう少しで切れる。それからはローグタウンに行って、また海軍の方にでも戻ろうかな。……でも、怒られるかな。
その時にならないとわからないか。