💙side
人間の身体で、こうして朝を迎えたのは初めてだ。俺は毛のない自分の身体をしげしげと眺めながら、窓際に立って、大好きなお日様をいっぱいに浴びた。
💙「きもちいい…」
🖤「翔太…じゃないんだね?猫の方だよね」
振り返ると、寂しそうな目をしたレンが、俺を見ている。
💙「あ」
そんなつもりはないのに、目から涙がぽろぽろと溢れた。
🖤「いいんだ。俺は、人間の翔太と昨夜きちんとお別れをしたから。その涙は、きっと翔太の残り香みたいなものだよ」
💙「なんか、ごめんなさい…」
🖤「ううん。それより、お前、行きたいところ、あるんだろ」
💙「………うん」
やっぱりレンには何もかもお見通しだ。
俺はレンにひどいことをしてるのかな。
🖤「翔太の残り香が消える前に、お前の大切な人にお別れを言っておいで。猫に戻ったら、もう話せなくなるからね」
俺は、レンに抱きついた。
レンは笑って、いつものように優しく、俺をよしよししてくれた。そして、浴衣じゃ動きにくいだろ、と言って、身軽な洋服に着替えさせてくれた。
これなら、走りやすいし、あっという間にアイツに会いに行ける。やっぱりレンは優しい。
💙「猫になったら、帰って来るから。お前を絶対一人にはしないから。ここで待っとけ」
🖤「ふふ」
💙「なんで笑うんだよ?」
🖤「俺の飼い猫、随分俺様だったんだなって」
💙「大好きだぞ、レン!」
そう言うと、俺は背伸びして、背の高いレンの唇になんとかキスを届けた。レンは目を丸くして驚いている。
ずっとこうしたかったんだ、俺。
🖤「翔太、どこで覚えたのキスなんか」
💙「へへ…。俺が小さい頃、いっぱいしてくれたろ?だから、お返し」
レンの照れ臭いようなはにかんだ笑顔を見て、俺はめちゃくちゃ嬉しくなって、じゃ、行って来ます!と勢いよく俺たちの家を飛び出した。