テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
呼ばれたとき理由は告げられなかった
広間に集められたのは隊の上層だけ
石の床、高い天井
何年経っても、城の中は変わらない
変わったのは立つ位置だけだった
前に出る
何も出来なかった頃と同じだ
違うのは背中にある剣の重さが
もう自分のものになっていることだけ
「これより、昇格の式典を行う」
形式的な声
名前が読み上げられる
自分の名が呼ばれた瞬間
わずかに空気が揺れた
驚き
困惑
納得していない視線
「副隊長に任命する」
理由は説明されない
功績も挙げられない
ただ事実だけが述べられる
能力はない
それは、全員が知っている
それでもここに立っている
剣を握ってきた年数
死ななかった回数
仲間を背に立った場面
それらは、言葉にされない
「異論はあるか」
沈黙
あるはずだった
でも出なかった
数字と結果だけは
誰にも否定できなかったから
目の前で隊長が笑っていた
いつもの、ひまわりみたいな笑顔
「俺の部隊やぞ?当たり前やん!」
誰に聞かせるでもなく
小さくそう言う
剣を預けられる 副隊長の証
手は、震えなかった
誇りも達成感も
大きくは湧かなかった
ここまで来るのに
時間がかかりすぎた
それだけ
「以上だ」
解散の声
人が動き出す
近づいてくる者もいる
距離を取る者もいる
それは決して尊敬ではない
警戒と違和感
そんな目線が突き刺さる
でも、それでいいと思った
能力は今もない
でも剣はここにある
自分は
ここに立っている
それだけは
もう誰にも変えられない 否定もできない