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きつね
なちょすん✌️
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キルアは、たぶん眠れてなかった。 呼吸が違う。だからすぐ分かる。 出会ったばかりの時も。キルアが元気な時と 静かな時は、空気が少しだけ違う。今日はずっと一緒にいたのに少し遠い感じがして、嫌だなと思った。 理由はよく分からない。でも嫌だ。
「…キルア?」
「起きてたのかよ」
「ううん。キルア寝てないなって思って」「なんでわかんだよ」
「なんでかな」
「はっなんだよそれ」
試しに名前を呼んでみる。そしたら、やっぱり起きてた。 ホテルの個室。ベッドの上。 触れられそうなほど近いところから、静けさの中に、柔らかな声がそっと溶けていった。 ――あ、笑った。
(キルアって、本当によく綺麗に笑うなあ)
こうして見る度、ついじっと見つめちゃう。キルアの白くて綺麗な肌が透き通って見えた。でも暗くてはっきり見えない。もっと明るいところで見たかったのにな。
「なんだよ」
「眠れないの?」
「別に」
横顔を眺めながらぼーっとしてたら、不審そうな顔で指摘された。 いつ寝るのかな。キルアはいつもみたいに別に、ってだけ言って、視線を外した。 オレはなんとなく手を伸ばした。理由はない。本当に、なんとなく。 *でも触れた瞬間分かった。キルアの手、ちょっと冷たい。……何考えてたのかな。*キルアは時々、こういう顔をする。
「なに?」
「んー…?」
「手」
「あ、ごめん。なんとなく」
だから、ほんの少しだけ握った。 強くじゃない。逃げられるくらい。 でもキルアは離さなかった。 それだけでちょっと嬉しかった。 胸の奥が温かくなって、 距離がグッと縮まった気がした。オレはまた少し近づいた。 キルアの手、そわそわしてちょっとくすぐったい。 言葉がうまく出ないよ。 まだ足りない。なんでだろう。もっと確かめたくなる。こんなふうに思うのは初めて。オレは指を絡めた。逃げられない形。無意識だった。
「キルアさ」
「ん?」
「なんか怖い夢見た?」
「夢?…見てねーよ」
「そっか」
茶化すつもりで聞いてみたら、真面目に弾き返されちゃった。でもちょっと心配してたのは本当。 キルアは聞いても、本当のことは教えてくれないかもしれないけど。
「キルア」
「ん」
「今日、助かったよ。ありがとう」
キルアがいたから。 言った時、たぶん本当のことだった。 強いとかじゃなくて、近くにいるだけで安心する。それって、なんだろう。 家族とも違うし、友達とも少し違う気がする。分からないけど、すごく大事な感じがした。 キルアが、オレもって言った時、胸が少し熱くなった。 キルアも同じなんだ、って思うと、嬉しくて。気づけば、言葉は口から溢れていた。
「つか、ゴン。 近い」
「そう?」
「そんなに人肌が恋しいか?」
「違うもん」
「まあ、オレは寝かしつけてやんねーけど」
「しなくていいよっ!」
からかって、面白おかしそうに笑ってる。 でもキルアは離れない。それが嬉しい。眠気の残る耳に、キルアのやわらかな声が触れる。その後、しばらく何も話さなかった。キルアも、何も言ってこなくなっちゃった。 安心して、眠くなってきた。 意識が落ちる直前、ぼんやり思う。 本当に、ずっと一緒にいられたらいいのにな。 オレはそのまま眠りに落ちた。手を繋いだまま。
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