テラーノベル
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キルアは、たぶん眠れてなかった。
呼吸が違う。だからすぐ分かる。
出会ったばかりの時も。
そういえば、前もそうだった。
キルアが元気な時と 静かな時は、空気が少しだけ違う。
今日はずっと一緒にいたのに、少し遠い感じがする。
嫌だな、と思った。
理由は分からない。
でも嫌だ。
「……キルア?」
「……起きてたのかよ」
「うん。キルア寝てないなって思って」
今日は静かだった。だから、声をかけた。
そしたら、やっぱり起きてた。
ホテルの個室。ベッドの上。
触れられそうなほど近いところから、静けさの中に、柔らかな声がそっと溶けていった。
――あ、笑った。
(キルアって、本当によく綺麗に笑うなあ)
こうして見る度、ついじっと見つめちゃう。
でも暗くてはっきり見えないよ。もっと明るいところで見たかったのに。
……なんだか、懐かしい感じがする。
「なんだよ」
「眠れないの?」
「別に」
横顔を眺めながらぼーっとしてたら、不審そうな表情で指摘された。
いつ寝るのかな。そういえばオレ、キルアの寝顔ってちゃんと見たことないな。
最近は目を瞑ってる時はあっても、ぐっすり眠れてるのか、正直分かんないもん。
……もしかして、オレがぐっすり寝ちゃってる間、寝てるのかな?
ただ、いつもみたいに別に、とだけ言って視線を外された。
(あれ?でもそれだったら、いつまで経っても見られないじゃん)
オレは、なんとなく手を伸ばした。理由はない。本当に、なんとなく。
でも触れた瞬間分かった。
キルアの手、ちょっと冷たい。
やっぱり、何か考えてたんだ。キルアは時々、こういう顔をする。
「……なに?」
「んー??」
「手」
「あ、ごめん。なんとなく」
だから、ほんの少しだけ握った。
強くじゃない。逃げられるくらい。
でもキルアは離さなかった。
それだけでちょっと嬉しかった。
胸の奥が温かくなって、 距離が縮まった気がした。オレはまた少し近づいた。
キルアの手、そわそわしてちょっとくすぐったい。
言葉がうまく出ないよ。
まだ足りない。なんでだろう。
もっと確かめたくなる。
オレは指を絡めた。
逃げられない形。無意識だった。
「キルアさ」
「ん?」
「なんか怖い夢見た?」
「夢?見てねーよ」
「そっか」
ちょっとだけ茶化してみたら、真面目に弾き返されちゃった。
「キルア」
「ん」
「今日、助かったよ。ありがとう」
キルアがいたから。
言った時、たぶん本当のことだった。
強いとかじゃなくて、近くにいるだけで安心する。
それって、なんだろう。
家族とも違うし、友達とも少し違う気がする。 どうしてなのかな。嬉しくなったり、さみしくなったり。
でも、名前は分からない。 分からないけど、すごく大事な感じ。
キルアが「オレも」って言った時、胸が少し熱くなった。 キルアも同じなんだ、って思うと、嬉しくて。
気づけば、言葉はもう口から溢れていた。
「つか、ゴン。 近い」
「そう?」
「ははーんさては、親父が恋しいか?」
「違うもん」
「まあ、寝かしつけてやんねーけど」
「しなくていいよ!もう」
からかって、面白おかしそうにしてる。
でもキルアは離れない。それが嬉しい。
やっぱりムカつくけど、キルアが一番だよ。
眠気の残る耳に、やわらかな声が触れる。声だけが、やけに近く感じた。
なんだかんだキルアは、変わらずずっといてくれるよね。
よく分からないけど、ただそう思った。
その後、しばらく何も話さなかった。キルアも、何も言ってこなくなった。
でも嫌じゃなかった。すごく落ち着く。安心して、眠くなってきた。
意識が落ちる直前、ぼんやり思う。
本当に、ずっと一緒にい られたらいいのにな、 なんて。
オレはそのまま眠りに落ちた。手を繋いだまま。
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