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まきぴよ
4,877
おその★
23,676
佐久間。
康二。
ラウール。
三人の撮影が終わる。
康二は。
阿部からカメラを受け取ると。
大事そうにストラップを首へ戻した。
「よし」
「次?」
ラウールが聞く。
「最後」
康二は。
スタジオにいる全員を見る。
「九人」
佐久間が。
「集合写真!」
と嬉しそうに立ち上がる。
「そう」
康二も笑う。
「最後に九人で撮る」
スタッフが。
白と黒。
二つに分かれていたセットの中央を整えていく。
背景は。
完全な白でも。
完全な黒でもない。
二つが。
ゆるく混ざるように作られていた。
阿部が。
「どう並ぶの?」
と聞く。
康二は。
用意していたラフを取り出した。
「一応」
「一応?」
「最初に考えてたんはこれ」
九人が。
綺麗に三段に並んでいる。
前列。
中列。
後列。
身長差まで考えられた。
いかにも。
雑誌の集合写真らしい構図。
ラウールが。
「ちゃんとしてる」
と驚く。
康二がすぐ反応する。
「俺かてちゃんと考えるわ!」
渡辺が。
「でもこれで撮るんでしょ?」
と聞く。
「とりあえずな」
康二はカメラを構えた。
「並んでみて」
スタッフにも手伝ってもらいながら。
九人が。
ラフ通りの位置へ立つ。
岩本が後ろ。
ラウールも後ろ。
真ん中に宮舘と目黒。
前には阿部たち。
細かく位置を調整する。
「ふっかさん、半歩右」
「ここ?」
「もうちょい」
「注文多いな」
「仕事です」
「カメラマンっぽい」
「今日それ何回目?」
全員が笑う。
康二は。
そのまま数枚撮った。
一枚。
二枚。
三枚。
全員。
ちゃんとカメラを見ている。
衣装も。
光も。
完璧。
九人の顔も。
綺麗に見える。
でも。
康二は。
モニターを見たまま。
首を傾げた。
「……ちゃうな」
深澤が。
「何が?」
と聞く。
「写真としてはええ」
「じゃあいいじゃん」
「でも」
康二は。
もう一度見る。
「なんかちゃう」
渡辺が。
「感覚で喋るなよ」
「感覚大事やねん!」
阿部が。
少し笑う。
「何が違うと思う?」
康二は。
しばらく考えた。
そして。
九人を見る。
恋人同士の三組。
佐久間。
ラウール。
自分。
さっきまで。
それぞれの距離を撮ってきた。
阿部と目黒には。
二人だけの距離。
岩本と深澤にも。
宮舘と渡辺にも。
三人にも。
全部違う。
なのに。
九人になった途端。
全員を。
同じ形へ押し込んでいる。
「……あ」
康二が。
カメラを下ろした。
「やめよ」
佐久間が驚く。
「集合写真なし?」
「ちゃうちゃう」
康二は。
ラフを丸めた。
「これやめる」
「せっかく作ったのに?」
「ええねん」
康二は。
九人へ言った。
「好きなとこ座って」
全員。
少し黙った。
「好きなとこ?」
岩本が聞く。
「うん」
「立っててもええ」
「床でもええ」
「椅子使ってもええ」
「好きにして」
深澤が。
「急に雑じゃない?」
と笑う。
「雑ちゃう」
康二は。
真剣だった。
「いつもの感じでええ」
その言葉に。
全員が。
少しずつ動き始める。
最初に佐久間が。
迷いなく床へ座った。
「俺ここ!」
「早いな」
ラウールも。
その隣へ座る。
「じゃあ俺ここ」
康二が。
「俺もそこ行きたい」
と言う。
渡辺が。
「お前撮る人だろ」
「後で入る!」
深澤は。
ソファへ腰を下ろした。
その隣に。
自然と岩本が座る。
いや。
少しして。
深澤の方が。
岩本の肩へ軽く寄りかかった。
「疲れた」
「うん」
岩本は。
何も言わずそのまま受け止める。
宮舘は。
ソファの反対側。
渡辺が。
その近くへ座った。
ぴったりくっつくわけではない。
でも。
渡辺の膝と。
宮舘の膝が。
少しだけ触れている。
阿部は。
一度周りを見て。
床へ座った。
その後ろへ。
目黒が来る。
「そこ?」
阿部が聞く。
「うん」
目黒は。
阿部のすぐ後ろ。
ソファの端へ腰掛ける。
阿部が。
ほんの少し後ろへ寄ると。
目黒の脚へ背中が触れた。
「近くない?」
「嫌?」
「嫌じゃないけど」
「じゃあいいじゃん」
「またそれ」
阿部が笑う。
いつの間にか。
九人は。
決められた場所ではなく。
自然に。
誰かの近くへ集まっていた。
康二が。
少し離れたところから。
その光景を見る。
「……これや」
ラウールが。
「何?」
と聞く。
「これ」
康二は。
嬉しそうに笑う。
「九人っぽい」
佐久間が。
「康二いないけど!」
と指摘する。
「あ」
「ほら!」
「忘れてへんって!」
康二は。
スタッフへカメラを渡そうとして。
少し考えた。
「でも」
スタッフを見る。
「この位置から、この設定でお願いしていいですか?」
細かく説明する。
ピント。
画角。
シャッター。
一通り伝えてから。
ようやく康二も。
佐久間とラウールのところへ走った。
「詰めて!」
「康二がでかい声出してる!」
「俺入られへん!」
「ラウール脚!」
「俺のせいにしないで!」
康二が。
佐久間とラウールの間へ無理やり入る。
ぎゅうぎゅうになる。
「狭っ」
「三人で近い写真撮りたいんでしょ!」
「これは近すぎ!」
後ろから。
深澤が笑う。
「康二、早くしないと撮られるよ」
「待って!」
スタッフが。
「いきます!」
と声をかける。
「まだ!」
シャッター。
「撮ったやん!」
全員が笑う。
もう一枚。
今度は。
一応カメラを見る。
でも。
佐久間が康二の肩へ顎を乗せ。
ラウールが横から笑い。
深澤は岩本にもたれたまま。
渡辺は宮舘の方へ少し身体を傾け。
阿部は。
後ろにいる目黒の膝へ。
肩が触れている。
誰も。
同じ形ではない。
でも。
誰も。
一人ではない。
「もう一枚いきます!」
スタッフの声。
その瞬間。
佐久間が。
「康二、顔固い!」
と言う。
「お前のせいや!」
康二が振り向く。
ラウールが笑う。
深澤まで吹き出す。
渡辺が。
「前向けって」
と呆れながら笑う。
阿部も笑った。
目黒も。
宮舘も。
岩本も。
シャッター。
康二は。
撮られた瞬間。
何となく分かった。
きっと。
今の一枚が。
一番いい。
撮影が。
すべて終わったあと。
九人は。
別室へ移動していた。
大きなモニターには。
今日撮った写真が。
順番に表示されている。
編集部。
マネージャー。
康二。
そして。
メンバー。
全員で。
使用候補を確認していた。
「うわ」
佐久間が。
最初から楽しそうに声を出す。
「これめっちゃ格好いい!」
画面には。
黒い衣装の阿部と目黒。
目黒が。
阿部の後ろから腕を回している。
「めめの顔すごい」
ラウールが言う。
渡辺が。
「嬉しそうだな」
と続ける。
目黒が。
「嬉しかったから」
と普通に答えた。
阿部が。
「言わなくていい」
と横から小さく返す。
写真が。
次々変わる。
カメラを意識せず。
目黒を見て少しだけ表情を緩めた阿部。
阿部が。
自分から目黒の腕を取って。
身体へ回している瞬間。
重ねた手と。
同じデザインの婚約指輪。
そして。
画面が変わった。
阿部の手が。
ほんの少し止まる。
額を寄せた。
あの写真。
「……。」
静かだった。
暗い背景。
黒い衣装。
近い顔。
阿部の額が。
目黒へ触れている。
目黒は。
動かず。
阿部を待っている。
キスはしていない。
でも。
距離は。
今日撮った中でも。
かなり近い。
康二が。
阿部を見る。
「これ」
「うん」
「候補に入ってるけど」
一度。
言葉を切る。
「使わんでもええからな」
阿部は。
モニターを見る。
目黒も。
何も言わなかった。
ただ。
阿部の隣にいる。
その写真を撮った時。
一瞬だけ。
昔の光景が頭を過った。
勝手に近づかれた。
目黒。
それを。
目の前で見ていた自分。
でも。
この写真は違う。
康二に。
「やめよか」
と言われた。
目黒も。
待ってくれた。
そして。
自分が。
近づいた。
誰にも。
押されていない。
誰にも。
決められていない。
自分で。
この距離を選んだ。
目黒が。
小さな声で言う。
「あべちゃん」
「ん?」
「嫌なら使わなくていいよ」
阿部が。
目黒を見る。
「本当に」
「うん」
「写真なくても、今日撮ったことはなくならないし」
目黒は。
いつものように。
答えを急かさない。
阿部は。
もう一度。
画面を見る。
そして。
少し考えてから。
言った。
「……使ってほしい」
康二が。
阿部を見る。
「ええの?」
「うん」
阿部は。
今度は。
はっきり頷く。
「これがいい」
目黒が。
少し驚いたように見る。
阿部は。
写真を見たまま。
静かに続ける。
「だって」
「これ」
少しだけ笑う。
「俺が近づいた写真だから」
目黒の表情が。
柔らかくなる。
康二も。
ゆっくり頷いた。
「分かった」
それだけ。
編集部の人も。
「では候補に残します」
と答える。
誰も。
それ以上。
意味を決めつけなかった。
阿部は。
もう一度。
写真を見る。
以前。
写真で。
勝手に関係を作られた。
存在しないものを。
本物のように見せられた。
でも。
今。
画面にあるものは。
自分が。
これを見せてもいいと。
自分で選んだ写真だった。
写真は。
さらに進む。
白い衣装の。
岩本と深澤。
「うわ」
深澤が。
一枚を見て顔を覆う。
「指輪多っ」
渡辺が即座に言う。
「今さら?」
「写真になると思ったより多い!」
二人の左薬指には。
二本ずつ。
白い衣装だからこそ。
余計に目立っている。
佐久間が。
「婚約指輪渋滞!」
と笑う。
「言うと思った!」
岩本は。
普通に写真を見ながら。
「いいじゃん」
と言う。
深澤が。
「照はそれしか言わない」
と呆れる。
次は。
宮舘と渡辺。
指先だけが触れている写真。
渡辺が。
少し黙って見る。
宮舘が横から聞く。
「どう?」
「……いい」
「気に入った?」
「まあ」
「よかった」
「その顔やめて」
でも。
渡辺の視線は。
写真から離れなかった。
そして。
佐久間。
康二。
ラウール。
三人の写真へ移る。
床へ座り。
誰かが誰かへ寄り。
三人で笑っている。
「これ好き!」
佐久間がすぐ言う。
「俺も」
ラウールも頷く。
康二も。
嬉しそうに見る。
さらに。
写真が変わった。
康二が。
笑っていない。
一人で写っている写真。
阿部が。
撮った一枚。
康二の動きが。
止まる。
編集部の人も。
少し前へ身体を傾けた。
「これ」
「はい」
康二が。
少し緊張したように返事をする。
「かなりいいですね」
「……ほんまですか?」
「はい」
画面いっぱいに。
康二の顔。
いつもの。
明るい笑顔ではない。
でも。
暗いわけでもない。
静かで。
少し考えているような。
力の抜けた表情。
「これ、阿部さん撮影ですよね?」
阿部が。
「はい」
と答える。
「すごく自然ですね」
康二が。
写真を見る。
「俺」
小さく言う。
「こんな顔してたんやな」
阿部が。
隣から答える。
「してたって言ったじゃん」
「聞いたけど」
康二は。
少し照れたように笑う。
「こんなちゃんと写ってると思わんかった」
佐久間が。
「これ絶対使ってほしい!」
と言う。
ラウールも。
「俺もこれ好き」
深澤も。
モニターを見ながら。
「いいじゃん」
と頷く。
「いつもの康二と違うけど」
「ちゃんと康二だよね」
康二が。
その言葉に。
少しだけ目を細める。
編集部の人が。
「このカット、かなり有力候補です」
と言う。
康二が。
「え」
と声を出す。
「ほんまに?」
「はい」
「三人のページの中に入れてもいいですし、単独で使っても面白いと思います」
「単独……」
康二が。
急に恥ずかしくなったのか。
口元を手で隠す。
渡辺が。
「さっきまで人の写真撮りまくってたくせに」
と笑う。
「自分になると恥ずかしいねん!」
阿部が笑う。
「嫌?」
康二は。
画面を見る。
少し前の自分なら。
もっと笑っている写真を選んだかもしれない。
自分らしいのは。
笑顔だと思っていたから。
でも。
今は。
画面の中の自分を見ても。
違うとは思わなかった。
「……嫌ちゃう」
「じゃあいいじゃん」
佐久間が言う。
康二は。
少しだけ考えて。
「うん」
と頷く。
そして。
阿部を見る。
「あべちゃん」
「何?」
「これ」
画面を指差す。
「撮ってくれてありがとう」
阿部は。
少し驚いてから。
笑った。
「どういたしまして」
「なんか」
康二は。
また写真を見る。
「俺があべちゃん撮りたいって思ってた理由」
「ちょっと分かった気する」
「何それ」
「自分じゃ見えへん顔あるんやな」
阿部が。
静かに頷く。
「あるんじゃない?」
「でも」
少し間を置いて。
「それを残すかどうかは、自分で決めればいいし」
康二が。
阿部を見る。
「……うん」
そして。
もう一度。
自分の写真へ目を戻す。
「これ」
「残す」
阿部が笑う。
「うん」
写真は。
勝手に。
誰かの関係や。
誰かの気持ちを。
決めるためのものではない。
笑っている瞬間だけを。
本物にするものでもない。
写す側も。
写される側も。
自分たちで選べばいい。
何を残すのか。
何を見せるのか。
どんな自分を。
これは自分だと認めるのか。
そして。
今日。
阿部も。
康二も。
自分の写真を。
自分で選んだ。
コメント
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みらさん、こんにちは。寺島あおいです🤍 第13話、読ませていただきました。康二が「ちゃうな」と言って、決められた構図をやめたところ、すごく好きでした。九人それぞれの距離感が自然に溢れていて、特に阿部さんが「俺が近づいた写真だから」と選んだ瞬間、胸が熱くなりました。写真に「正解」を押し込めない、その優しいまなざしが素敵だな…🌷