テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
重たいのにどこか弾んだ声だった。
俺の友人に会いたい、からって……何故そんなことを言ったのか。気になったものの、できる限り普通に答えようとした。
謎の焦燥感に駆られて……とにかく、早く電話を切りたいと思った。
「あぁ。多分、大丈夫だと思う
[サンキュー。じゃ、後でな]
電話を切った瞬間、スマホが鉛のように重くなった気がした。針を刺すような音が鼓膜に届き、無機質な電子音が鳴り続ける。
スマホを仕舞って、少しわざとらしい笑顔で涼の方に向き直った。
「なぁ、涼。さっき話した従兄弟がさ、家に来るらしくて。迎えに行こうと思うんだけど、一緒に行く?」
「えっ? いえ、俺は……」
彼は何故か青い顔で俯いた。
「そっ……外に出てます」
「いや、それが友達いるって言ったら、会いたいから待っててほしいんだとさ」
「そうですか。そう……それならやっぱり、留守番してます。すいません」
何故謝るのか分からないが、涼は俯いたままそう言った。
「おい、どうした。大丈夫か?」
「大丈夫です」
屈んで、座ってる彼の顔を覗き込む。全然大丈夫な様子じゃない。それだけは断言できる。
彼の頭に手を伸ばそうとしたけど……それより先に、彼は俺の肩を押した。
「准さん。大丈夫だから、その人のことを迎えに行ってきてください。俺はここで……貴方を待ってますから」