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ガゼット領の侵攻を阻止した!
「く……くそう」
「まいったケケ……」
悔しがるガゼット領主父子。
彼らは兵の3割を失った時点で降伏。
その場で和平交渉に入った。
これにより……
敵領地のうち450コマを獲得!
賠償金1500万ゴールドを獲得!
さらに襲撃撃退により全領民のジョブレベルが3ずつUP!
領主レベルも4に上昇!
―――――――――
領主レベル:3→4
称号:転生領主
HP:227→356
MP:83→127
ちから:127→186
まもり:111→152
魔法:亜空間C、ほのおE▽
特殊技能:ステータス見、痛覚耐性、移動速度2倍、身躱し(New!)
授与可能ジョブ:▽
―――――――――
新しい特殊技能は『身躱し』だった。
これもいらなくはないが……微妙な技能だ。
身躱しは『敵ひとりの打撃を100パーセント躱す』という技能なのだけど、ふたり以上に囲まれた場合、躱した方向に別のヤツから攻撃されて普通に喰らってしまう。
これじゃあんま意味ないんだよね。
領主キャラが死に至るようなピンチって、大勢の敵に囲まれた時だから。
うーん、技能ガチャはうまくいかないなあ。
領主レベルはそんなにポンポンあがるものじゃないだけに(この前のメタル・キャタピラー攻略の時には上がらなかった)、ちょっとショックだ。
「あのう」
「ボクたち、もう帰っていいでしょうか……ケケ」
なんて考えていると、敗残の将たちがおそるおそる尋ねてくる。
「ええと、賠償金は小切手でくれ。それで帰っていいよ」
「へえ、かしこまりました」
こうしてガゼット領主は羊皮紙の小切手に『1500万ゴールド』と書いてサインをすると、すごすごと帰っていった。
よっしゃ、1500万ゴールド!
ゴールドは王国の発行する通貨だ。
王都やよその領地の商人たちと取引するときはこのゴールドが必要となる。
「やれやれ、疲れたぁ」
さて、俺はやっと家に帰ってソファにぐでーっとかける。
マジの戦争は体を動かすので、ゲームでやるように楽ちんではないのだ。
「おやおや、ずいぶんボロボロじゃないかい」
そこにおふくろがやって来る。
「バタバタしていたようだけど、何して遊んでたんだい?」
「遊んでたんじゃねえよ。大変だったんだぞ」
「その様子だと、忙しいのは終わったようだな」
と、全身鎧の女騎士が言った。
そうだったナディアを待たせてたんだった。
面倒くせえ……
「で、はるばる王都からなんの用だったんだよ?」
どうせまた勝負しろとか言ってくるんだろうけど。
「実はな。ダダリの周辺で不穏な動きがあるとのことで、ニーナ様から仰せつかったのだが……」
「え……?」
ナディアが言うには、『周辺の領地がダダリを攻めようとしている気配がある』と情報があったので、応援に来てくれたのだそうな。
「ま、マジか……」
騎士は上級職。
ナディアが助けてくれていればもっと楽な戦いができたのに……
「しかし、そなた自分で撃退してしまうとはな。やはり私の目に狂いはなかったのだ。ふふふ」
本人はそう言ってご機嫌だ。
「では本題に入ろう」
「本題?」
「うむ。アルト、今こそ勝負しろ!」
ああ、やっぱり(汗)
「イヤだよー。お前と戦っても意味ねーし」
「ほらね。言ったとおりだろう。ナディアちゃん」
そこでおふくろが割って入る。
「うちの息子は生粋の面倒くさがりなんだ。何か得るものがなければ戦おうとしないのさ」
「ぐぬぬ……ではどうすればよいのだ? カネか? カネを払えばいいのか?」
「ヤメろよ! 友達なんだから」
カネ払って戦ってもらうって発想、どんだけだよ!
「じゃあ、こういうのはどうだい?」
そこで再びおふくろ。
「もしうちのアルトが勝ったら、ナディアちゃんがお嫁に来るっていうのは」
「なんだと!?」
「ふふふ、うちの息子はスケベなところだけが取り柄だからね。ナディアちゃんみたいな美人が嫁に来てくれるっていうなら、きっと全力で戦うさ」
お、おふくろ、俺のことそんなふうに思ってたのか……
「全力で……か。うむ、いいだろう」
「いいのかよ!」
彼女はこれでもナイト爵。
一代限りの爵位とはいえ、王国騎士団に所属しているのだから王都での勤めもあるだろう。
「だいじょうぶだ。問題ない」
「問題ないって……」
「負けたらそなたの嫁になる……つまり勝てばよいのだ」
なんかギャンブル中毒みてえなこと言ってるし。
まあ、しかし。
そこまで言うなら勝負してやらないワケにはいかないかな。
「でも条件がある」
俺はそう言って続けた。
「俺は『女を殴るんじゃねえ』というオヤジの体罰も辞さぬ教育によって、女を殴ることができない」
「なんだと!?」
「そこでこの砂時計の砂がすべて落ちるまで、あんたの攻撃をすべて躱したら俺の勝ちってことにしてくれ」
砂時計は大体一時間のモノである。
「いいだろう。しかしこちらも条件を出したい」
と、今度はナディアが条件を出す。
「もし攻撃を当てることができたら、その時はそなたも剣を取り、御父上の遺言を破り私に攻撃を打ち込むのだ」
「……いいよ。約束する」
というワケで、俺はとうとうナディアとの決闘にのぞむこととなったのだった。
◇ ◆ ◇
「クソ! あのトルティの息子なんぞにしてやられるとは! ケケ……」
敗れたガゼット領主親子は、トボトボと馬を引いて森を引き返していた。
「あんなクズ、いつでも殺してやれる! 今回は運が悪かっただけだ。次は兵を倍にして……」
「父上、ダダリを攻めるのはもうあきらめましょう」
「なにイ?」
息子はうつむいて答える。
「王権が弱まってきて、我々は格下の領地を攻めようとしていた。しかし、一方でダダリはライオネ対策をしていたのです。それだけでもダダリの新領主は侮れぬ男と言えましょう」
「キサマぁああ! ワシがトルティの息子より下だと言いたいのか!」
「それは……」
ヒヒーン!
そこで馬が嘶いた。
ふと森にひとりの少年が立って、彼らの進路をふさいでいるのが目に入る。
「な、なんだキサマ……」
唐突なことに、言い争っていたことも忘れてキョトンとするガゼット領主。
「僕はアルト兄ちゃんの弟。名はラム」
「ダダリの……?」
「うふふ、兄ちゃんは甘いからさ。ダダリを攻めたキミらを生かしたまま許しちゃったけど……」
少年は鋼鉄の剣を抜いて言った。
「……僕は許さないよ?」
「くせもの!」
「捕らえろ!!」
護衛の兵が少年を止めに入ったその時、その姿が消えた。
いや、消えたのではない。
「か……こ……かはッ!」
少年の剣は、すでにガゼット領主の胸を貫いていたのである。
「父上!」
「ガゼット領主は落馬してお亡くなりになった……」
剣の血を払いながら、少年はそう言う。
「は?」
「ガゼット領主は落馬してお亡くなりになった。でしょ?」
可愛らしい顔でニッコリと言う少年に、その場の全員が凍りついた。
カタカタと大勢の足の震える音が響く。
それは『恐れ』である。
年端も行かぬ子供の笑顔に、その場の大人たち全員が恐怖して動けずにいるのだ。
ガゼット領主の息子は思わずコクリコクリと頷いてしまう。
「うふふ。いい子だね。じゃあ、僕は帰るから。アハハハ……ハハハハ!!」
森に響く少年の笑い声は甲高く、まるで死神のようであった。