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大森side
さっきの子を追いかけて会場の外へ出る。
『やめろっつってんだよお!!!!』
「「「!?」」」
い、今の叫び声って……さっきの子の……?
ひ「……近くだ。急ごう!」
「「うん」」
その声の声の主を辿って、薄暗い夜を走った。
雨音side
3人を後にして、必死に会場の外へ出た。
まだ私は子供だ。車で来る訳にも行かなかったので、自転車を漕いできた。運良く会場が家から少し遠いくらいだったので、あまり問題は無かった。
自転車を止めた場所までいくと、ぽつんと私の自転車だけあった。
自転車があっただけでも安心。早く帰らないと。
自転車に駆け寄ろうと小走りになる。と、自転車のすぐ隣に人影があった。
……え?……誰?
その人影は私に近づいてきた。
これ……ヤバイ?逃げた方がいい?
そう思った頃には絶望が押し寄せてきた。
「よお雨音。こんな時間まで何してたんだあ?」
この声を聞くと全身に力が入らなくなる。
「なぁ、父さん心配したんだぜ?全然帰ってこないからよお」
無造作に伸ばされた髪の毛。襟が伸び、シワが目立った白い長袖のTシャツ。緩い茶色のズボンに、履き古されたサンダル。
私の……父だ。
ガシャン!!
『!?』
唯一の宝物だった自転車が、父によって蹴り飛ばされた。
……大体、何で私の居場所が分かったの?何でこういう時に限ってこいつがいるの?いつも私の事なんか放ったらかしで、酒と煙草にしか興味無いくせにっ……
『ねぇ……』
父「こんなもんがあるからだよなぁ!?こんなもんがあるからルール破って平気でいられるんだ!」
父「……あのクソ女が」
『!?……え……今、なんて……』
私の言うことなんか気にすることなく、自転車を頭の上に持ち上げた。
え、な、何する気……?
『ねぇ、ちょっと……やめてよ……!』
父「あ゙ぁ゙?」
ビクッ
父「こんなもんあるからだろ!?お前がバカ娘になったのはよお!!だから今お前の前で処分してやるよ 」
それだけはダメ。絶対に……!
自転車を持った手が勢いよく振り下ろされる。
『やめてっつってんだよお!!!!』
自転車を振り下ろす手が止まり、父の目が大きく見開かれた。
自分でも驚いた。今までこんな声出したこともなった。いつもなら怯えたかすれた声しか出ないのに。
そんなことを思っていたのもつかの間、父が私の胸ぐらを勢いよく掴んだ。
その目は怒りで血走っていた。こんな顔見たことない。
……終わった。どうしよう。
父の拳がスローモーションのように顔に近づいてくる。
私ここで殺されるのかな?でも、この道は自分で選んだんだ。しょうがない。
父に殴られたり蹴られたりする自分の映像が脳裏に映し出された。
これが走馬灯ってやつかな?
少しだけど、さっきまで人形のようになんの気力もなく殴られていた映像の中の自分に光が灯ったのが分かる。
そうだこの日にミセスと出会ったんだっけ。
虐待の日々は変わらない。けど、なんとかミセスのおかげで生きる希望を取り戻せた。
だから、父のこともあまり怖くない。
ありがとうミセス。
目を瞑る。
ドカッ!!!!と、聞いたこともないものすごい音が聞こえた。