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雨音side
……あれ?痛く……ない。なんで……?
恐る恐る目を開く。と同時に全身に何かの重みが寄りかかり、一緒に地面に倒れた。
ひ「元貴!!!!」
り「元貴!!ねぇ!!」
え……?元……貴?
も「うぅ……」
『えっ!?』
私の胸で倒れていたのは、さっき別れたばっかりの〝大森元貴〟さんだった。
父「……おい、お前ら誰だ?」
ひ「……は?」
って、若井さんと藤澤さんもいる……
り「ねぇ!!元貴!!大丈夫!?」
藤澤さんが駆け寄ってきて必死に大森さんに呼びかける。
も「ったぁ……涼ちゃん……僕は大丈夫……あっ、ごめんね 」
そう言って、ゆっくり体を起こして私から申し訳なさそうに離れる。
『い、いえ……』
り「大丈夫じゃ無さそうだよ……?」
藤澤さんがそう言った瞬間、大森さんがやっと立ち上がったと思ったら頭を抑えて膝を着いてしまった。
り「ほらあ!元貴は座ってて!!」
も「いや……僕は…… 」
り「いいから!」
そういって藤澤さんは大森さんの肩を掴んだ。
……あれ?若井……さんは?
ガシッ
父「お前誰に向かって口聞いてんだ?」
ひ「あんたこそ。あんな事しておいて、何ですかその態度?」
!?
父が若井さんの胸ぐらを掴んでいた。
……これ、若井さんまで怪我させちゃったらどうしよう。いや、大森さんに怪我させた時点でダメだろ。
どうしてこの人は……どうしてこの人は平気で人を傷つけられるんだろう。
ドガッ!!!!
ひ「うぅ……あ゛ぁ゛……!ゲホッゲホッ!!」
ものすごい音が聞こえたと思うと、若井さんがお腹を抑えて呻き声を上げている。
り「若井!!」
『若井さん!!』
どうしよう……何で……何でだよ。何でこんなことに……!!
り「君、警察!」
『えっ……ええと』
り「早く!」
そう言って藤澤さんは父の前に立った。
呼ぶなら今しかない。急いでスマホを取り出し、『110』と番号を打つ。
父「そんなん呼んでも無駄だよ」
ガシッ
父「邪魔すんならお前も殺すぞ?」
り「……」
早く繋がれよ……!!
も「うぅ……」
と、頭を抑えて座っていた大森さんが立ち上がった。
り「え……ちょ、元貴……?」
も「涼ちゃん、大丈夫だから」
そう言って、藤澤さんの前に立ち、父を見上げる。
も「……あなたは、何がしたいんですか?」
大森さんの低い声が響いた。
も「僕達が来てなかったら娘さんどうなってたんですか?自分の言うことを聞くまで殴り続けるつもりだったんですか?」
父「たりめぇだろ。あいつが悪いんだ」
父が私を指さす。
父「ちゃんと〝教育〟しないとろくな奴になんねえ」
も「あなた方の家庭の事情は知りませんが、」
「絶対にこんなの〝教育〟なんて言わない。あなたは間違ってる!」
「間違ってる」
父が間違っていることは分かっていた。でも、逆らえなかった。だから、段々と何が正解で、何が間違えか分からなくなっていった。
だからこの場で大森さんがはっきり「間違ってる」と言ってくれて、何かが晴れた気がした。
˹事故ですか?事件ですか?˼
繋がった……!
『じ、事故……?じ、』
り「貸して!」
り「事件です!」
藤澤さんが私のスマホを耳に当て、警察とやり取りしてくれてる。
はぁ……と一息ついてスマホを私に渡してきた。
り「ごめん、ありがとね」
『えっと……は、はい』
り「すぐ来るから大丈夫」
そう言って、藤澤さんは私の背中をさすってくれた。
この温かさはいつぶりだろうか。
も「警察、もう来ますって」
父「関係ない。そいつは俺の娘だ」
も「今までそんなこと言ったことないでしょ。都合の悪い時だけそう言って」
『ふ、ふふ藤澤さん……』
2人に聞こえないような声で聞いた。
り「なあに?」
『大森さん……大丈夫なんでしょうか……?若井さんも……』
私たちは今、若井さんの傍で大森さんと、父を見張っている。
り「今はお父さんに変に口出さない方がいいと思う。……あ!」
藤澤さんの方を見ると、 パトカーのサイレンが近づいてくる音がした。
父「くそっ……!おい!早く来い!どうなるか分かってんだろうな!?」
その瞬間、周りが真っ暗になった。大森さんも、若井さんも、藤澤さんもいない。父だけが暗闇の中で見える。
怖い。
意識が無くなるまで殴られ、蹴られる。
いや、殺されるかも。
やだ。それだけは。
せっかくミセスと出会って、生きる理由ができたのに。
死にたくない。
過呼吸になりながら、私は父の方へ足を踏み出した。
息が苦しい。
早く行かないと殺される……!
あと、1歩。
……あれ……?進めない。
あと一歩なのに。
咄嗟に後ろを振り返る。
私の腕を、大森さんが掴んでいた。