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ーーチャリティー当日。


ティアナの様に慈善活動をしている人々による炊き出しや子供達へと贈り物の配布、人形劇など想像以上に賑わう教会と沢山の子供達に圧倒される。

つい先程まで子供達に揉みくちゃにされながら一緒に遊んでいたレンブラントだったが、元気過ぎる子供達についていけず情けないが避難してきた。そこにシスターが挨拶に来る。


「参加頂けるだけでもありがたい事ですのに、こんなに頂いて宜しいのですか」



手ぶらで参加するにどうしても抵抗があったレンブラントは、クラウディウス達と話し合い結局日持ちのする菓子や玩具、本などを大量に買い付け持参した。


「いえ、喜んで頂けたなら良かったです」


シスターの元へ菓子や玩具を手にした子供達が入れ替わり立ち替わり来ては笑顔でそれ等を見せて来る。


「シスターみてみて! 僕の一番カッコイイだろう!」

「甘いな、少年。俺のが一番格好良いに決まっている!」

「ヘンリック、子供張り合わないで下さい」

「ねぇ、ご本読んで〜」

「おや、その本を選択するとは中々見込みのありそうですね」


どう見ても十歳にも満たないであろ少年の持つ玩具と張り合おうしているヘンリックに呆れ顔のテオフィルは少年に本を読み聞かせ、少し離れた場所ではクラウディウスが子供達と剣劇チャンバラをしている。更にその近くではエルヴィーラが少女達の髪を整えて着飾らせていた。

思った以上に愉しんでいる様子にレンブラントは笑った。本来ならば彼女と二人……などと考えていたがこれはこれで悪くない。


「そういえば、ティアナは……」


肝心のティアナの姿だけがない事に気が付き辺りを見渡す。


「ティアナ様でしたら厨房で昼食の支度をお手伝い頂いております」





◆◆◆



焼き立てのパンに子供達も大好物なソーセージやベーコン、卵、チーズを豪快に挟んで出来上がりだ。食後のデザートにはティアナお手製アップルパイも用意している。

子供達が喜ぶ顔を思い浮かべながらティアナはトレーに次々とパンを並べていく。


「ミア、落とさないでね」

「お任せ下さい!」

「ほらミア、確り前を見ないと」


人手は多いこした事はないと思い、今日は特別に侍女のミア、ハナ、モニカの三人にも手伝いに来て貰っている。


「食事はこちらで最後ですね」

「もう少しで焼けるから、先に行ってて」


最後のパンの乗ったトレーをモニカに任せて、後少しで焼き上がるアップルパイをティアナは待つ事にする。


「良い匂いだ」


モニカが出て行って程なくしてレンブラントが厨房に入って来た。


「レンブラント様」

「お疲れ様。アップルパイかい?」

「はい、もう少しで焼き上がりますから外で皆さんと一緒にお昼ご飯を食べて待っていて下さい」


ティアナがそう告げると何故かレンブラントは厨房に一個しかない椅子に座り、ティアナを手招きした。


「レンブラント様?」

「焼き上がるまで、一緒に休憩をしよう」

「え、きゃっ」


腕を掴まれたかと思うと身体がふわりと宙に浮かぶ。気が付いた時には彼の膝の上に座っていた。恥ずかしくて彼に抗議の目を向けるが、彼は軽く笑った。


「レンブラント様……」

「もう少しなんだろう? なら少しだけこうさせてよ。賑やかなのも悪くないけど、こうやって君と二人だけの時間は格別なんだ」


確りと抱き締められていて身動きが取れないティアナは、諦めて大人しくする。

またあの時みたいに心臓が高鳴り、身体が熱くなってくる。


「そんな強ばらさなくても、これ以上は何もしないよ。今はまだ、ね」


思わせ振りな発言に恐る恐る彼を窺い見ると、触れるだけの口付けをされた。


「レ、レンブラント様⁉︎」

「君が可愛過ぎて思わずね。……それ付けてくれてるんだね」


少し意地悪そうに笑いながらティアナの首元に光る青い宝石を撫でる。


「はい、私には身に余る物ですが、レンブラント様から折角頂いたので……。でも本当に私などが頂いても宜しかったんですか」


あの日、レンブラントから貰ったこの宝石は肌に離さず身に付けている。これまで贈られた装飾品は未だに手付かずのままで保管しているが、彼と一緒に選んだこれだけは特別だった。

ただ先日ミハエルから「それかなりの値打ち物だぞ」と目を見張りながら言われた。確かに高価な物だとは分かるが、ミハエルが驚く程となると流石にティアナも本当に自分などが貰って良かったのかと不安になった。


「勿論だよ。その為に態々君をあの店に連れて行ったんだから。寧ろ付けて貰えなかったら僕は悲しいよ」


抱く腕に少し力が加わり、彼はティアナの額や頬、最後に唇にまた口付けをする。先程よりも深く長い口付けに、頭がクラクラとして何も考えられなくなる。


(何もしないって言ったのに……)


そんな風に思いながら薄めで彼を盗み見ると、夢中になって貪る様に口付けをしていた。そんな彼の姿に更に胸は高鳴り彼への想いが止まらなくなる。

彼の熱くて柔らかな唇、荒い息遣いを感じながらティアナは瞳を伏せ「このままずっと彼の側にいたい」と願いながら今だけはとレンブラントに身を預けた。



【拝啓、天国のお祖母様へ】この度、貴女のかつて愛した人の孫息子様と恋に落ちました事をご報告致します。

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