テラーノベル
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里で買った最高級の卵と、外の世界の「白だし」が融合した、二度目のだし巻き卵。 一切れ差し出された妖夢は、正座して深々と一礼してから、それを口に運んだ。
「……っ!?」
一口食べた瞬間、彼女の幽霊半分(半霊)が、驚きでぶわっと膨れ上がる。 しかし彼女はすぐに表情を引き締めると、猛烈な勢いで手帳に筆を走らせ始めた。
「……記録。食感は、まるで春の雲の如し」 「妖夢、大げさだぜ。ただの卵焼きだろ?」 魔理沙が横から茶化すが、妖夢の筆は止まらない。
「……味の奥底に、複雑な魚介の旨味(鰹・昆布)を検知。おそらくはあの『白だし』という聖水に含まれる霊素によるもの。里の卵の濃厚な黄身が、その鋭い旨味を包み込み、完璧な調和(ハーモニー)を奏でている……」
「あの、妖夢さん? 食べながら書くと喉に詰まりますよ?」 「構いません! この感動が薄れる前に、舌が感じた情報をすべて文字に刻まねば……!」
妖夢は時折「むふぅ……」と熱い吐息を漏らし、一切れ食べては書き、また一切れ食べては書く。その姿は、もはや食事というよりは、秘伝の奥義を解析する修行僧のそれだった。
「……結論。これは料理ではなく、卵を用いた『概念の具現化』である。博麗神社の居候殿は、一介の料理人にあらず。……おそらく、食の神の化身か」
「いや、ただのフリーターですって」 俺の訂正は、妖夢の激しい筆音にかき消された。
ふと見ると、隣では霊夢が「……ねえ、妖夢。そのメモ、あとで私に一部コピーさせて。高く売れそうだから」と、不穏なことを呟いていた。
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