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おい魔理沙! 重い、重すぎるぞ! 箒が悲鳴を上げてるじゃないか!」 「うるせー! だったら霊夢が少しは浮けよ! 主人公、しっかり捕まってろ、振り落とされても知らねーぜ!」
博麗神社の裏手から飛び出した魔理沙の箒は、今までにないほど不安定に揺れていた。 運転席に魔理沙。その背後に霊夢が座り、さらに後ろで妖夢がメモ帳を握りしめて正座している。そして最後尾、座る場所を失った俺は、魔理沙の腰を必死に掴みながら、箒の末端に「立ち乗り」でしがみついていた。
「わ、わああああ! 高い! 足場が細い! 頼むから五万二千円全部あげるから安全運転してくれー!!」 「はっはー! 風が気持ちいいぜ!」 俺の悲鳴を置き去りにして、箒は雲を突き抜け、幻想郷の境界を越えて「外の世界」の記憶が混ざり合う蒼い海へと辿り着いた。
砂浜に降り立った瞬間、俺は膝から崩れ落ちて砂を掴んだ。 「……生きてる。地面、最高……」 「さあ料理人殿、感傷に浸っている暇はありません。白だしの『魂』を確保しましょう!」
妖夢は鼻息荒く、近くの竹を楼観剣で一閃して即席の釣竿を作り上げた。霊夢は「面倒ね」と言いながらもお札の紐を解いて糸にし、魔理沙は「エサはこれだ!」と、そこらへんの怪しい虫を捕まえてきた。
「……よし、やるぞ!」 俺の指揮のもと、幻想郷最強の釣りチームが始動した。 妖夢が超人的な動体視力で海面を走る魚の影を見つけ、魔理沙が弱めの電撃魔法で気絶させ、霊夢がお札の糸で次々と引き上げる。 数分後、砂浜にはカツオ、タイ、アジが山のように積み上がった。
「よし、ここからが本番だ。白だしの核……『鰹節』をここで作る!」 「えっ、今からか!? 腹減ったぜ!」 「魔理沙、黙って火を熾せ! 弱火だぞ、絶対に焦がすなよ!」
俺は現場監督のように指示を飛ばした。 霊夢がどこからか取り出した大鍋でカツオを茹でる。その後、妖夢が楼観剣の精密な刃捌きで骨を取り除き、魔理沙が魔法の火で「燻製(くんせい)」の工程に入る。
本来なら数ヶ月かかる乾燥工程だが、ここは幻想郷だ。 「魔理沙、熱を一定に! 妖夢、風の魔法で一気に水分を飛ばしてくれ!」 「承知!」 「熱い熱い! 加減が難しいんだってば!」
二人が必死に魔力を制御し、俺が焼き加減をチェックする。 数時間後、砂浜に香ばしく、力強い燻製の香りが立ち込めた。 そこにあったのは、石のように硬く、だが叩けばキンと高い音が鳴る、黄金色の「幻想郷産・鰹節」だった。
「……できた。これが、俺たちの白だしの元だ」 妖夢が震える手でそれを抱え、深々と一礼した。 「見事です、料理人殿。これならば幽々子様も……ぐぅぅ(お腹の音)」 「……妖夢、あんたもお腹空いてるじゃない。さあ、残りのタイとアジをそのレジ袋に詰めなさい。神社に帰って宴会よ!」
俺は、すっかりボロボロになったが強度の高い「特売のレジ袋」に、大量の新鮮な魚を詰め込んだ。 右手にカツオ節、左手に魚満載のレジ袋。 そして再び、定員オーバーの箒が夕焼け空へと舞い上がる。
「よーし! 帰ったら『白だし2.0』の完成だぜ!」 「五万二千円……使い道、まだ残ってるかしらね……」
俺の悲鳴は、今度は少しだけ楽しげな響きを帯びて、潮風の中に消えていった。