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この建物にある約10万冊の本は1人の手によって管理されていた。
管理されていた。というのは簡単な話、管理していたものが殺されたのだ。
そんなに面白い話でもないぞ?
さて、昔話をしよう。
天才作家がいたのだ。そして天才的な記憶力がある人間がいたのだ。
天才作家。と言ってもそいつはたった1冊しか書かなかった。その上販売もしなかったからな。
その本は今どこにあるか?って?焼かれたさ。焼いたんだ作者自身の手でね。ついでに管理人も。
管理人はぱらぱらーっと本をめくってある程度見るだけで。どんなに分厚い本でも、30秒あれば全て読み終えるし、全て記憶する、そして忘れることは無い。だからここはすべて管理できていたんだ。つまるところ速読と記憶のプロってところかな?
だからこそ殺されたんだな。作者にとっては。嫌な本だったんだろう。焼いても焼いても焼いてもどれだけ焼こうとも記憶は消えないから。本人ごと焼いたのさ。
「大丈夫かい?さっき言った通り君も焼かれるかもよ?」
笑いながら、僕に鍵を渡してきた。性格が悪いかもしれない。
「大丈夫ですよ。あの方のように、僕は記憶力ないですから。」
「ふーん。管理できそう?」
値踏みするように僕を隅々まで見てくる。やめて欲しい。
「頑張りますよ。さすがにすべて覚えるのは無理かもしれませんが」
「…ま、安心しなよここまで来て本を読むやつはほぼいないし。」
「先程聞いた限りだと貴重な本もありそうですが?」
たった一冊しかない本を、管理する程なのだから、他にもありそうなものだが。
「言ったじゃないか焼かれたと、来るとしたら自分の作品を焼きに来る人かもね」
「来たらどう対応すれば?」
キョトンとした顔をすると僕を見て笑いだした
「何を言っているんだい!ここは君のものなんだ。ついさっきまで僕が鍵を持っていたけれどそれすらも君の手に渡ったもう何をするのも自由さ!もちろん君がすべて本を焼こうが、来たものを拒まず焼かせようがすべてを大切に扱い焼かせまいと努力するのも全てね!」
………拒めば焼かれるかもしれないと言っておきながらよく言うものだ。
「……理解しました、」
「よろしい。ま、がんばりたまえよ」
「ありがとうございました」
「じゃあ僕は行くよ」
「え?中でお茶でも」
「遠慮しておくよ。それじゃあね」
「もう行ってしまうのですか?」
「うんもう二度と会うことはないだろうね」
なんだか冷たい態度を取り始めたかと思うとスタスタと去っていってしまった。
「……まぁいいさ僕だけで何とかするからね」
僕はまず適当に見て回ることにした。
「見たことない本でたくさんだ。それにしても適当に積みすぎでは?」
外国の本もある。かなり重く分厚い。
「よ、読む気が失せるな、ホコリ被ってるし」
手始めに軽く知っているようなものを探そう。
「あの名前を言ってはいけないあの人が出てくる魔法学校の話探そうかな」
まぁ見つからなかったのだが。その後も捜索を続けたが知っている本は1冊もない。
「なんだ、?有名な本は一通り読んでいるはずの僕ですら知っている本も。知っている作者も見ない」
駄作しかないということだろうか?
目に付いた本を拾い上げ読んでみた
「かなり古いが面白い、現代を生きるこの僕が読んでも決して劣ることはない。」
なんの気なく出版した年代が気になり見てみると。
「………ッ古!?」
ひとりで腰を抜かしてしまった。
だから、知らなかったのか?
なんだか恐ろしいというか。なんというか……
ちらりと目に付いた本棚に、スペースがあるのを発見し戻した
「教科書に載っていてもおかしくないクオリティだったなぁ、」
…そういえば整理しなければダメでは無いか?
「あまり知識がない。分類法も知ってはいるが正しくできる自信が無い。」
「まぁいいや。別に客が来るわけでもないしね」
僕は案外諦めがいいのだ。
諦めて帰ろうか、いやどこへ?と思っていた矢先『関係者以外立ち入り禁止』
恐る恐る入るとそこには一冊だけ特別そうに置かれていた。
そこには死ぬことを。殺されることを察した時に書かれたであろう文が。恐れてはいなかった。むしろ待ちわびているようだった
「まぁ、あいつが殺されることを恐れるとは思えなかったし。納得はできるが、」
ともかくこいつが僕に望むのはこの図書館にいることだけだ本が、あろうが、なかろうが、
「いったん客が来るのを待つだけだ。」
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