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物語の創り手はこう語る。
ずっと前。一年も前のこと。
とある国に、とても強い軍隊がいました。
幹部らは正義という名の戦争を繰り返し、その都度仲良くなっていきました。その仲間の兵士達も、同じように、仲良くなっていきました。
そんなある日、厄災が降り注ぎました。
小規模の核爆弾が基地の訓練場の一部を襲いました。
一部だったとはいえ、訓練中の兵士らは皆死に、
爆発の衝撃は軍基地内にも大きく影響を与え、
当時15人程いた幹部は、9人にまで減ってしまいました。
兵士のうち三分の二が死に、生き残りの多くは後遺症の残る重傷を負いました。
そして、
総統の消息が途絶えました。
核爆弾が落ちる直前、彼は危険物飛来の警報を鳴らして、その場から消えてしまったのです。
一番信用していた人が居なくなってしまった。
誰の指示を聞けばよいのだろうか。
誰を信用して、この先軍として生きていくのだろうか。
その答えを見つける前に、幹部らの士気や生気は失われ、団結の欠片もない軍に成り果ててしまいました。
それから、1年が経っても、まだその状況は続いていました。
▷シャオロンside
隣の部屋から聞こえる異常な叫び声で目を覚ます。
今日も、起きれないまま、1日が過ぎた。
何もしていない。する気になれない。
あの人を失って、立ち直らなきゃいけないって、わかっていても。
ずっと
彼らの活力や戦闘意欲は取り戻せないままだった。
一番、明るい自信があった。
だから、少しのことじゃ、やる気は失わない。
いなくなってから、総統の大きさに気づく。
どうして。
あんなものが飛来してこなければ、今も、…昨日も…
幸せだったのだろう
…
部屋の上で鈍い音がした。
鴉の咥えていた獲物でも落ちてきたのだろうと思った。
今度は窓の方から音がした。
窓を平手で叩いたかのような音。いや、叩いた音…。
???ここ3階ですが?
しかも部外者用の警報装置が鳴らない。
まさか飛来…物…
目の前が暗くなる。
あの日の記憶がフラッシュバックする。
おもむろに苦痛交じりの声が発せられる。
苦しい
なんで、
何処に行ったんだよ
戻ってきて…下さいよ、
「総…統、…」
肩を揺さぶられて視界が明るくなる。
肩を…肩、…?
ばっと後ろを振り返る。
シャオロンの虚ろな瞳は、
確かに目の前の人物を捉えていた。
サラリとした金髪、深い赤色の瞳
グルッペン・フューラーを、確かに見つめていた。
彼は、困惑しきったようなシャオロンに、ただ、一言。
声をかけた。
「ただいま、シャオロン」
力なく笑って、抱きしめた。
グルッペンの肩に涙が落ち、暗い部屋に泣き声が響いた。
「どこ、…行ってたんすかッ…!ッグ…寂し、かった…」
「ごめん。こんなことになっていたなんて知らずに」
「グスッ、ボロボロ、じゃないすか、…どう、してッ…」
「あぁ…少し、…戦争を…な」
「なんで…、一人、で、ッそんな無茶…な、」
シャオロンは途切れ途切れになりながらも涙声で言葉を繋いでいた。
心配していたんだと、戻ってきてくれて嬉しいと、必死で伝えようとしていた。
▷グルッペンside
向日葵色のシャオロンの瞳が眩しい。
1年ぶりになるのだ。この明るい瞳を見るのは。
最初、警報装置の範囲外に落ちて、窓から覗いたシャオロンの姿は、向日葵色とはかけ離れた雰囲気だった。
とても心配していたのは、こちらも同じだと、彼に伝えてやりたかった。
「他の幹部は…何処にいるんだ?」
涙でぐしゃぐしゃになったシャオロンに問う。
彼は全員が自室に籠っていると教えてくれた。全員の精神状態が危ういのだ、と。
「俺も…行くわ」
シャオロンは涙を拭い、すっくと立ち上がった。
そして、全員の部屋をまわった。
エーミールは、本を読む気力すら失い、ベッドの上で天井を眺めていた。
本は床に散らばり、机の上は散乱していた。
グルッペンを見るなり、静かに涙を零した。
そして、笑顔で「おかえりなさい、総統」と言ってくれた。
その言葉は、とても暖かく、柔らかだった。
コネシマは窓の外を眺めていた。
部屋は綺麗で、怖いほど殺風景だった。
グルッペンの声を聞いて、彼は飛びついてきた。
待っていたんだと、ずっとこの日を待ち望んでいたと、伝えてくれた。
そして、「何度も疑ってしまってごめんな」と謝罪をしてきた。謝るのは、こちらの方だというのに。
ショッピの部屋からは叫び声が聞こえた。
苦しんでいた。自傷までしていた。
切れ味の悪いカッターなのだろうか、切り傷の跡は汚かった。
「貴方のせいで、涙が傷跡にしみるんですけど」と、
かれは弱く笑っていた。
もう二度とするんじゃないと、優しく叱ってやった。
チーノは寝ていた。魘されていた。
やめろ、壊すな、という趣旨の言葉を散々叫んでいた。
ショッピと一緒に起こしてやると、
「最高のモーニング・コールやな…」と満面の笑みで笑った。やつれた顔だったが、綺麗な笑顔だった。
鬱の顔には深く濃いクマが出来ていた。
幻聴が嫌で、何十日もちゃんと寝ていなかったのだという。
ちゃんと寝なさい、と叱ると、彼はにへらと笑い、グルッペンを抱きしめた後、ショッピとチーノに飛びついた。
ここの絆は1年経っても、バラバラになっても、消えていないのだと、強く思った。
ロボロは監視室に居た。すでに泣いていた。
モニターには、廊下と外の様子が映されていた。
「待ってたで、おかえり」と笑顔で言われた。
いつもの面の中に、こんな愛らしい笑顔があったのか、と心底驚いた。
そして、
真っ先に書記長室に行くように言われた。
そこに、ゾムとトントンがいる、と。
▷ゾムside
「なんでやねんおかしいやろ!!」
自分で自分の声に驚いた。こんなに、恐ろしいほど大きな声が出たなんて。
でも、仕方ないと思う。
トントンが、あんなに皆のことを思っていた彼奴が、
昔のことを忘れた、なんて言うから。
怒り狂うのも当然だ。怒鳴りつけるのも当たり前だ。
忘れたなんて言わせない。
あんなに、笑顔だったのに。
楽しそうにしていたのに。
「記憶が朧気になった。昔を思い出せない」
そう、食事の後に告げられた時、瞬間的に怒りが頂点に達し、怒鳴っていた。
「お前は書記長やろ?グルッペンの一番近くにいて、!皆のこと散々気にかけて!戦争も訓練もゲームも全部…!あんなに笑顔で楽しそうにやっとったやろ!?」
「…それが、昔のことなんやろ?お前はよく何年も前のことを覚えてるよな。俺はそんな記憶、もうない」
「1年前や阿呆!!あの事件以来や!みんなが暗くなったんは。ずっと会話してこなかったんとちゃうし、戦争してこなかったのもちゃう!前までは…もっと…」
「1年でも半年でも、俺が覚えてないのに変わりはないんよ。今のW国はこの雰囲気で、この軍事体制にある。それだけやろ?何をそんな過去に固執するん?」
「だ、だから…!あの日より前の、…お前の楽しそうな表情も、彼奴等のワイワイした雰囲気も、俺は覚えとる。あの環境と雰囲気が良かったに決まっとる。忘れてほしくないからこんなに言うてんの!」
「おい、二人とも」
討論の間に、低く、でも柔らかな声が響いた。
いつの間にか、幹部全員が俺等のことを見ていた。
「我々は、このグルッペンを総統に、再始動する。1年前までの我がW国より、もっと楽しい軍となる。それで、解決やろ?」
「グルッ、ペン…?総統…、?なん、で…?」
トントンは困惑している。そういう俺も、まだ状況が飲み込めていない。
あんなに目に光が無かった彼奴等の顔には、涙が伝った跡がくっきりと残っている。
これが、幻覚じゃないのか、分からなかった。
もう、絶望に突き落とされたくない。
「ゾム、」
トントンに声をかけられて、嫌な考えがすっと消えた。
「俺は…、目を背けとっただけやった。現実を見たくなくて、いつからか、昔のことを考えないように、しとった。それが…今ッ…総統のこと、見てな?皆のこと、見て、閉まってた記憶…が、溢れ出してきて…ッ」
言葉を紡ぐ度に涙を零すトントンを見て、自分も泣いていることにようやく気づく。
「言い過ぎた、よな。でも、思い出してくれて、嬉しい。覚えていてくれたってだけで、本当に安心ッした、から…さぁ、ッ…ごめんな…ほんとにッ、ありがと、ッ…」
そう言い終えて、彼奴等に飛びつかれた。
コネシマ、シャオロンの暴れ犬を先頭にして、
ガシッドンッという音と一緒に仲間が自分たちに抱きつき、重なっていくのが分かる。
口々に喜びの言葉を零しt
鈍い音がして、ゾムとトントンの額がぶつかった。
沈黙の中、赤くなった互いの額を見つめて、ふっと笑う。
「「おもろ、w」」
どっと笑いが起こる。皆の自然な笑顔が、冷えた心に沁みていた。
『その沈黙を破って』
完結