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翌日は――。


心配をよそに、ミシェルとの間で特に問題は起こらず、更なる地雷を踏む事はなかった。ガブリエルと話したことで、沙織自身もすっきりし、自然体で接することが出来たのかもしれない。


そして、アーレンハイム邸への転移や、ピアノ演奏も無事終えたのだった。



◇◇◇



学園には、ようやくオリヴァーも帰って来て、セオドアにも明るさが戻った。


オリヴァーはセオドアに、アレクサンドルと共に倒した様々な魔獣の話を、身振り手振りで楽しそうに説明していた。

当然ながら、沙織はシモンズ領へは行ってない事になっているので、その会話には入らないようにした。また、うっかり余計なことを喋ってしまう可能性が高いからだ。


――そして、長期休みの為の準備が始まった。


学園では皆が寮生活だったので、寮内を片付けると従者を引き連れ、各領地の家へと帰って行くのだ。


「お休みは嬉しいですけれど、カリーヌ様やサオリ様と離れるのは悲しいです……」


しょんぼりするイネスを慰める。カリーヌは、休み中でもみんなで集まって、お茶会をしようと提案した。


(もしかしたら。私は、それには参加出来なくなってしまうかもしれないけど……。きっと、無事に帰ってきますね!)


心の中でそっと誓った。


「また、お会いできる日を楽しみにしてます!」


可愛いツインテールのイネスに、ギュッとハグをする。女の子同士の楽しそうなやり取りを、羨ましそうに眺める男子達を軽くスルーして、学園を出た。


学園の門には、迎えにやって来た沢山の馬車が並び、それぞれの主人を待っていた。

やはりそこは貴族社会。王族であるアレクサンドルから順に出発していく。

次に出発の、アーレンハイム公爵家の馬車の中には、カリーヌとミシェル、、沙織とその膝の上にはシュヴァリエのリュカが乗っている。


シュヴァリエは、この姿でアーレンハイム邸に行くのは二度目だ。しかも、ガブリエルにはしっかりシュヴァリエとステファンがリュカだとバレているので、正直気まずい。

まあ、いつも訓練でシュヴァリエはアーレンハイム邸に行っているので、ガブリエルは気にもしていないだろうが。


(それに。リュカが、アーレンハイム邸に居るのは最初だけだしね)


沙織があの山に向かう時、シュヴァリエとステファンも一緒に行く。


だいぶ……いや、かなり強くなった沙織は、一人で山に行くつもりだったのだが。ガブリエルやステファン達に全力で止められてしまったのだ。

シュヴァリエは、まだ護衛としてなので納得できるが――ステファンは、人でなくなってしまった母親に会うということだ。


(本当に、大丈夫なのかな……精神的に)


馬車の窓から景色を見ながら、ボーッとそんな考えに耽っていたら――直ぐにミシェルに悟られてしまった。


「サオリ姉様、どうかしましたか?」

「え……? 馬車って何でこんなに眠くなるのかしら?」

「確かに、眠くなりますわ」


そんな、ほのぼのとした会話で誤魔化しつつ、カリーヌとミシェルとの時間を楽しんだ。


(姉弟って、いいなぁ)


一人っ子だった沙織は、アーレンハイム公爵家の養女になれたことに感謝した。



――見慣れた門が見えてくると、馬車は敷地内に入って行った。



到着すると、ガブリエルが三人の帰りを待っていた。子供達を迎えるために、仕事を調整したのだろう。


ステラ達が、手際よく荷物を運び込み部屋を準備している間、沙織はピアノを弾かせてもらう。それぞれにリクエストしてもらい、最後にクレールが好きだった曲を、感謝と願いを込めて弾いた。


(どうか。また、この家に帰ってこれますように……)



――その夜。


沙織はみんなに向けて手紙を書いた。


(もしも……もしもの為よ)


万が一、沙織に何かあったら……少しでも悲しまないでもらえるように。元の世界へ帰ったのだと、そんな風に思ってほしいから――。


沙織は自分の軍服に着替え、リュカと共にガブリエルの部屋へと向かう。


廊下を曲がると――。


「ミシェル!? カリーヌ様!? どうしてっ」


ガブリエルの部屋の前で、ミシェルとカリーヌが、沙織がやって来るのを待っていた。二人は……王の命令の内容は知らなくても、沙織の思いに気が付いていたのだ。


「……サオリ姉様。もう……行かれてしまうのですね」

「サオリ様。どうか、どうか、ご無事で!」

カリーヌとミシェルをぎゅっと抱きしめて、零れそうな涙を堪えた。


「……はいっ! 必ず、帰ってきますね!」


顔を上げて二人を見つめる。それから、しっかりと習った、公爵令嬢としての完璧な笑みを浮かべた。


「では、行ってきます!」


カリーヌとミシェルの想いのこもった視線を受けつつ、笑顔で扉を閉めた。


部屋へ入ると、優しい表情のガブリエルが待っていた。


「私も、サオリの帰りを待っているからね」


ガブリエルの腕の中に柔らかく包まれた。ガブリエルの胸に顔を埋め……先程まで堪えていた涙が止まらなくなってしまう。


「……お義父様。帰って来たら……また、私を娘にしてくださいね」

「勿論だ」


そして、ガブリエルとリュカと一緒にステファンの研究室へ転移した。



◇◇◇



「お待ちしていました」


魔導師の正装をしたステファンが、本来の王子の姿で待っていた。ステファンのその服にも、前もって光の魔力を付与しておいてある。


リュカから人間の姿に戻ったシュヴァリエも、軍服を身に纏った姿で、ステファンの背後に立つ。


「では、アーレンハイム公爵。行って参ります」


――ステファンが挨拶し、三人はシモンズ領の先の山に向かって出発した。

悪役令嬢は良い人でした

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