TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

若き覇王に、甘くときめく恋を

一覧ページ

「若き覇王に、甘くときめく恋を」のメインビジュアル

若き覇王に、甘くときめく恋を

74 - 第三章 ときめきの甘い恋を、あなたに EP.3「突然の雨に見舞われて」⑨

♥

3

2025年02月12日

シェアするシェアする
報告する


夢うつつの中、(そうだ、寝ないで彼を待っていなきゃ……!)と、ふいに頭に思い浮かんで、ハッとして目を覚ましたら、外はもう薄明るくなっていた──。


「ね、寝過ごしたぁー……」


呆然と呟いて、上った太陽を恨めしく眺めていると、


「……ん、起きたのか?」


傍らで眠っていた彼が、ふと目を開けた。


「はい……。だけど昨夜は、車に引き続いて、寝落ちしちゃってたみたいで、私……」


決まりの悪い思いで、もそもそと口にする。


「いや、気にしないでいい。君を待つ間に、私も寝てしまっていたしな」


私に変わらない気づかいを寄せて、ベッドに半身を起こした彼が、額に落ちた髪を片手で掻き上げると、その長くしなやかな指の隙から、窓を射し込む陽光がきらきらとこぼれ落ちるようにも感じた。


「用意ができたら、帰ろうか」


声をかけられて、「はい……」と浮かない気持ちのまま頷く。


貴仁さんは、ああ言ってくれたけど、朝まで寝ちゃうだなんて、やっぱりあり得ないよね……。


車に乗り込んでも、一向に気分は晴れずにいると、


「どうした? まだ気にしていて?」


運転席から、そう問いかけられた。


無言でゆるゆると首を横に振る。彼に、もうあまり気をつかわせたくもなかった。


「君が寝てしまったことを悔いているのなら、あのお弁当を作るのに早起きをしたのが理由なのだろう? だったらそれは、私のためでもあるのだから、何も気にすることはない」


彼がなだめるように話して、私の頭にぽんと手の平を乗せる。


「それに、あんなにうまいものを作るのは、とても大変で疲れたんじゃないのか?」


口の端を薄っすらと引き上げた穏やかな笑みが向けられると、語らずとも全てを汲み取ってくれる彼の心の深さに、ささくれ立っていた気持がようやく癒えていくようにも思えた。


「だけど何も話していないのに、なぜ私の寝たわけがわかったんですか?」


疑問を投げかけた私に、「わかるさ」と、彼が即答をする。


「あんなに美味しいものを作るには、出かけるずいぶんと前に起きて、君が下ごしらえをしていたんだろうことぐらいは……。ありがとう、とても美味しかった」


信号で車が止まり、再び伸ばされた手が頭に乗せられ、ふっと髪を撫でられる。


「だから、何も悔いたりすることはない。デートは、本当に楽しかったから」


「……だけど、間が悪く途中で雨にも降られてしまって……」


頭に乗せられた彼の手の温かみに、子供みたいにもう少しだけぐずぐずと甘えていたくなる。


「だが雨が降ったから、君と一晩を過ごせた」


……彼の言葉の一つずつが、もやもやと淀んでいた気持ちを晴らしていく。


「……それに君となら、私は何をしていても幸せに思えるから」


照れながらの一言に、胸がキュンと疼く。


「……。……それは、私もいっしょです」


うつむき加減だった顔を上げて、そう返すと、


「……あなたといられることは、何よりも幸せですから……」


心からの笑みで、彼へ応えることができた。


loading

この作品はいかがでしたか?

3

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚