私は一人だ。
…私は生まれてこの方、人と深く関わったことがない。
 私のこの頭の中の記憶にある両親とはとても仲がよく、優しい姉もいる。
 なのに私は一人だ。
 記憶があるなら家に帰ればいい。
私だって最初はそう思っていた。
 なのに、
何故か家の場所や、電話番号を思い出そうとするたびに、頭の中に霧がかかったように記憶が朧気になる。
 でも
ある時ふと思った。
 “私は一体どこの誰なのか?”
 そうだ、私は普通じゃない。
 自分の名前が、分からない、思い出せないんだ。
 名前を思い出すだけ、ただそれだけなのに出来ない。
 そもそも、道に迷ったのであれば人に聞くのが”普通”なのに、
 もう、考えても仕方ないのだろう。
私は異常だ。
ただ”それだけ”なのだ。








