テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
さて、現在レイブが珍しく緊張した表情、というより面倒臭そうに回収に向かって歩み始めているアミュレットとはどういった仕組みなのかもこの機会に合わせてお伝えする事としようか。
アミュレット、普通に訳せば護符、又は仮初めの御神体、皆さんの想像と同じであろう。
仏像や仏画、道祖神や道の分岐点にあるお地蔵さん(スカンダ?)、あの子なんかを思い描いてくれれば良いのかも知れないな。
以前、私の後継者であり前任者でもある観察者が紹介させて頂いた例で言えば、ラマシュトゥがコユキに渡していた『魔力紋』のスクロール、ああ、そうか…… スクロールに加工は出来なかったんだったね…… まあ、あの紙に記した物なんかはかなり高度なアミュレットの一例、そう言って良いだろう。
あれは最高レベルのアミュレットの類だから比べるべくも無いが、レイブやバストロが拵(こしら)えるアミュレットも理論としては同様だ。
タリスマンと同様に数個の『円』を重ねる事で基本形を為し、その中間や内側に多角形を配置し、効果を齎(もたら)す『陣』、文字を記して完成させる。
完璧な『円』の内側に不完全な多角形、三角形以上を配置する事で術者自身の能力を目減りさせ、必要な効果だけに留まらせる事を目的とした、効果限定的な護符、それがアミュレットである。
大きな力を持つ悪魔、例で言えば魔王種でありスプラタ・マンユ四天王の一柱、ラマシュトゥみたいな者が、不完全な図形を描かずに魔方陣を作ってしまったりしたら、発生する魔法効果は無限、攻撃手段なら禁忌の忌むべき場所となり、回復効果であれば例のゲームの命の泉、回復ポイントみたいになってしまう事だろう。
そんな不思議の溢れた謎ポイントの存在を残して後世の探求家に無駄な手間を掛けさせない為、と言う理由かどうかは判らないが、効果や持続時間、永続性を敢えて不完全にする様組み込まれているのが『方』、多角形なのである。
と言う訳で、レイブがアミュレットに描く図形は三角形と正方形、二つを角度を変えて重ね合わせている七角の星であった。
この形はバストロやその先代、グフトマが代々言い伝えられた約束に従って使い続けてきた図形である。
多少歪(いびつ)なこの形の名はスプラタ・マンユ。
そう、皆さんがかつて観察してくれたあの小さな兄妹弟(きょうだい)に対する信仰を表しているのであった。
魔術師が作るアミュレットの役割は警報装置である。
魔力災害を事前に察知するために、集落や魔術師の拠点周辺に配置されるのだ。
『陣』に込められた効果はタリスマン同様に『吸』だが、前述の七芒星の存在によって、集められた魔力は徐々に放出される仕組みである。
放出される箇所には錆びたりくたびれてしまった金属の破片が重ねて取り付けられている。
これらが魔力の波動によって振るわせられ、魔力災害の際にはキンキンとけたたましい高音を響かせる事で危険を報せる、まあ、単純と言えば単純、そう言った仕組みになっているのだ。
今回の様にガンッ、そんな風に鳴る時は図形を書き損じてしまった場合である。
不完全な魔方陣では無く完璧なアミュレット、変な感じでは有るが、ちゃんと出来ているから失敗作、そんな状態である事が予想される。
吸収した魔力が漏れ出て行かなければ、中央に配置された魔石は許容量を越えた瞬間に砕け散る。
ガンッ! と言う特徴的な音を響かせてである……
精緻な定規や物差しが失われて久しい世界の事である。
多角形を正確に描く事は若輩(じゃくはい)のレイブ達、子供には中々に難しく、その一事がアミュレット作りの難易度を上げ捲っていた時代なのだ。