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がっかりしながらも足早にアミュレットの回収に向かったレイブは、岩窟に最も近い場所に取り付けられた自身作の護符に視線を向けて言う。
「うん、ここは大丈夫だったな、上手い事出来てるみたいじゃないのぉ! むふふ~、んでも残り六個は全部失敗かぁ~、あーあ、早くちゃんと出来るようになりたいなぁ~、お師匠が帰って来たら今までみたいに面倒臭がらずにもっと真剣に教えて貰わなくっちゃなぁ、うんっ! そうしようっ♪」
言葉からも容易に類推出来るが、この岩窟の周囲にレイブが設置した警報装置、アミュレットは全部で七個、誤作動らしい破裂音は六回鳴り響いた。
つまり一番近くにあったコレ以外は全て壊れてしまった、そう言う事であろう。
七分の一…… 決して高い成功率では無かったが、今後の指針が定まったからか、落ち込んだ素振りも見せずに壊れたアミュレットの回収に向かうレイブの背後から意外な音が響く。
ガンッ!
「え?」
振り返ったレイブの目には、つい今しがた確認したばかりのアミュレットが、中央に配置された魔石を真紅に変えて崩れ落ち、パラパラと地面に落下していく姿が映っていた。
次の瞬間、全身の毛穴が粟立つ様な悪寒に襲われるレイブ。
無言のまま踵を返し、岩窟に向けて全力疾走しながら考える。
――――やばいやばいやばいっ! これは駄目だよ! ど、どうすればぁっ? と、兎に角ギレスラとペトラを起こさなくっちゃっ! い、急げぇっ!
身の毛もよだつ悍(おぞ)ましい感覚に身を包まれながらも、疾風のように岩窟に戻ったレイブは、倉庫の中で眠っていた弟と妹に大きな声で叫んだのである。
「ギレスラ、ペトラ起きるんだ! 魔力災害だぞっ! ほらっ! 早く起きて逃げなきゃっ! 死んじゃうぞぉっ!」
『ンガッ?』
『むにゃ? 魔力災害ぃ?』
「そうだよ! ここに魔力災害が起こっちゃったんだよっ! 急いで避難しなくちゃっ、って、ああ、そ、そんなぁ……」
言い掛けて言葉を途切れさせたレイブ。
彼の目にはいつもより全身を包んだ鱗が不恰好に分厚くなっているギレスラと、浮腫(むく)み所ではなくパンパンッに膨らんだペトラの姿が映っていたのであった。
自らの変化に気付かないままでキョトンとしている両者とは違い、レイブにはこの状況の危機さ加減、ヤバ度が手に取るように判っていたのだ。
思い出して頂きたい。
レイブが魔力災害に曝(さら)されたのはこれが二度目なのである。
三年前、故郷ハタンガを襲った魔力災害から逃れる途中、彼は石化によって死を迎える覚悟を決めたのである。
偶然通り掛かったバストロの魔解施術によって一命を取り留める幸運に出会い、今を過ごしている。
諦めて助かり、新たな日常を得たいまだ幼い命は、石化、それに依る死に対して他者より鋭敏な反応を見せる。
「死が、死が来てるんだよ! 早く逃げなくっちゃっ! 早くっ、早くぅっ!」
『ニゲル? ド、ドコニ?』
『あれ、本当だぁアタシ太ってるじゃないの! あらら、まーた魔力災害かぁ~…… どうしようか? レイブお兄ちゃん?』