【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
小児科医青×天才外科医桃
小児科の看護師水さん
のお話です
今回モブ女子が出てきますので苦手な方は自衛してください…!
桃視点
院内のシステム端末を開くと、今日診察予約の入っている患者の名前がずらりと並ぶ。
そこに初診の患者の名前がどんどんと挟み込まれていき、更新するたびにリストが長くなっていく。
それはもう見慣れた日常の一コマだ。
かちりかちりとマウスを操作して、そのリストを絞り込んだ。
何十もある診療科のうちのとある一つを選択し、もう一度更新ボタン。
そうすると一覧がすっきりと整理され、一気に見やすくなる。
患者の名前、診察予定時間…そしてその患者が何時に院内に到着したのか、今どこで何の検査をしているのか全てリアルタイムで見て分かる。
そうしてその患者の情報を横に辿っていくと、生年月日などの個人情報のほかに本日診察担当の医師の名前まで。
ざっと目を通し、そこに目当ての名前がないことを確認する。
…今日は外来診察はなしか。
そう胸の内で納得すると、カルテをスリープモードに戻した。
ログイン用に端末にセットしていたICカードを手に取ると、首から提げて立ち上がる。
昼食を摂るにはもう既に遅めの時間だ。
それでも医師なんて職に就いているとそんなことは日常茶飯事で、食事の時間が定時であることなんてまずない。
簡単に食べられそうなおにぎりやらサンドイッチやらを入れた袋を手に、医局の一室の扉をノックする。
「はい」と返る答えに、俺は遠慮なく扉を引き開いた。
「おつかれー飯食った?」
重厚な扉は、手を離すと後ろでパタンと音を立てて閉まる。
袋を少し掲げるようにして上に上げると、こちらを振り返ったまろは小さく首を振った。
「まだ。午前から病棟回っとって、今戻ってきたとこ。ないこは?」
「午前に手術1件入ってた。今から昼めし」
「それにしては終わるん早ない?」
「開腹したけど思ってたより状態悪くて、病巣切除できなかったんだよね」
「そのまま閉めたん?」
「そう。手術できないとなると、そのうち内科か緩和医療科に引き継いでもらって薬物療法しかないかな…」
まろの仕事机の近くに椅子を一つ持っていき、そこに勝手知ったるように座る。
机に袋の中身を広げて目線で促した。
それに応じるようにして、まろはその中の一つに手を伸ばす。
何気なく一番手前にあったツナマヨのおにぎりを取っただけかもしれないけれど、俺の好物の野沢菜をわざと避けた可能性もある。
言い合わせたわけでもないのにほぼ同時におにぎりのフィルムをぺりと外した。
小学生くらいの頃はこの海苔を破らずにフィルムから取り出すのがどれだけ難しかったか…なんて思い出しながら、大きく口を開けようとした時だった。
「いふくんいる!?」
バン、と俺の時よりもさらに遠慮なく扉が開かれる。
大きな音を立てたそれに、まろと同時に肩越しに振り返った。
顔を上げた俺の視界いっぱいには鮮やかな水色が広がる。
「あ、ないちゃんも来てたの? おつー」なんて言いながら、いむはずいと部屋の中へ入ってきた。
「ねぇいふくん、まゆちゃん見なかった?」
「『まゆちゃん』?」
俺の横を素通りして、いむはそのまままろの方へ詰め寄る。
ツナマヨのおにぎりを頬張りながら、まろは小さく首を捻った。
「そんな患者さんおったっけ」
「患者さんじゃないよ! 自分のとこの研修医(レジデント)の名前くらい覚えてよ!」
「お前こそ、いくらレジでも医師を『ちゃん』付けすんなよ」
「いいじゃん別に。僕ないちゃんのことだってちゃん付けで呼んでるよ」
「どうでもいいわ。…で? そのレジがどうしたん?」
まだおにぎりを2口しか食べてない俺と違って、瞬殺するかのように全て飲み下したまろ。
半分ほどは話題に興味をそそられないのか、くあぁと大きな欠伸を漏らしながらそんな言葉を返している。
…そう言えば、昨日遅くまで今度発表する論文か何かを仕上げてたっけ。
その後「つかれたぁぁぁぁ」なんて癒しを求めて抱きしめてくるから、逆に俺の方が寝られなくなった恨みは未だに忘れていない。
「最近元気ないし顔色悪いし、色々心配してたんだよね…昼休憩になったら声かけようと思ってたんだけど、さっきから姿が見えなくって。ねぇどこにいるか知らない? いふくんも探してよ」
知らんよ、そう言いかけたらしい言葉をまろは飲み込んだようだった。
代わりに近くの白衣に手を伸ばし、ワイシャツとスラックスの上にぱさりと羽織って俺の方を一瞥する。
「ちょっと行ってくる」
「え! いふくん心当たりあるの!?」
「ないけど…放っとくわけにもいかんやろ」
PHSを取り出しながら走り出すまろ。
そんな後ろ姿を、俺はおにぎりを口いっぱいに放り込んで見送った。
部屋の主がいなくなった室内には一瞬の沈黙が下りる。
それをどう思ったのか、いむは小さく首を竦めてみせた。
「ごめんねないちゃん、いふくんと休憩中だったんだよね」
「別にいいよ。おにぎり食ってただけだし、まろがこんなすぐに出てくってことは、あいつ自身もその子の様子がおかしいことに心当たりあるんだろ。どう考えてもそっちのが緊急事態」
「まゆちゃんさ、多分仕事のことで悩んでるんだと思うんだよね」
詳しく尋ねたかったわけではないけれど、いむはそんなこちらの思惑は気にする素振りもなく話を続けた。
「まゆちゃん」を知らない俺には、へぇそうなんだという言葉を返すことしかできない。
そう思ってそのまま口にしようとしたけれど、いむが言葉を継ぐ方が早かった。
「僕はさ、いふくんやないちゃんとは違ってずるいこと考えちゃうタイプだから」
「…うん?」
急に話が飛躍した気がして、俺は思わず眉を持ち上げて首を捻った。
しげしげといむの顔を見つめ返すと、立ったままのあいつは苦笑い気味に俺を見下ろす。
「まゆちゃんが悩んでるなら、元気出してほしいと思う。そんでいふくんならそれを助けられると思ってるから、ないちゃんの気持ちも無視してこうやっていふくんに何とかしてあげてほしいと思っちゃう」
「……」
…あぁ、そういうこと? つまりその悩んでる「まゆちゃん」は、まろのことが好きなわけだ。
まろは先輩だから、無視もできずに彼女のケアに走るだろう。
そうやって彼女が立ち直れるなら、いむとしてはまろを利用してもいいと思ってるわけね。
それが原因で俺とまろの間に何らかの亀裂が入るなんてこともないと信頼・確信しているから、そういうことができるんだろうけれど。
「…そういうのバカ正直に言っちゃうところが、いむがずるくなりきれないとこだよね」
ふふ、と眉を下げて思わず笑ってしまった。
言わなきゃいいのに言わなきゃいられないところが、結局こいつが悪者になりきれないところ。
「まぁ、レジデントのケアするのはまろの仕事だしいいんじゃない? 職務全うするだけのことで、俺がどうこう言うところじゃないし」
そう言って、「そもそもさぁ」と付け足しながら俺は足を組む。
上になった片膝を両手で抱えながら首を小さく傾けた。
「まろがレジの女の子一人慰めたところで拗ねたりするわけないじゃん、俺が」
「…いやぁ?? …ないちゃんって絶対嫉妬深いじゃん」
「お前の中で俺のイメージが結構なクソガキなんだなってことが分かったわ、今」
おにぎりを食べ終わった口内にお茶を流し込む。
味わうなんてものじゃなくただカロリー摂取するだけの昼食は、部屋主がいなくなったことで何となく気が引けてそこで諦めた。
袋に残されたサンドイッチをいむに押し付け、俺は椅子から立ち上がるとそのまま部屋を後にした。
(続)
コメント
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へへへ(*´∀`*) 今日も尊いなぁ("♡") 青桃まじ好き(๑♡∀♡๑) 本当に尊敬しかないですⁿ›̥̥̥ ω ‹ⁿ♥︎ うん、ご馳走様でした~❤︎❤︎
こういう話大好き!! 桃さんが青さんのことを信頼?してるのがカップルしてて尊い!!