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「おい、紗栄子大丈夫か?」
紗栄子のいる病室に真一は訪れていた。
「うん」紗栄子はかなり消耗していて、発した声は体調を物語っていた。
「俺はちょっと魚港にいってくる、サツが来たら何も言うんじゃないぞ、寝てるふりしてろ」
「わかった。」
病院から魚港までは徒歩で30分くらい、日は沈んだが、日中の余熱でアスファルトからは熱気が放たれてた。
少し休んだとはいえ、真一の体力も限界近い状態であった。
俺のセルシオは焼失。知らない男女の遺体。
歩きながら彼方のスマホを取り出し何か手がかりがないか調べてみる。
電話番号のみの発信履歴がある。発信時間は俺と紗栄子とバケトンで別れた後だ。
真一は携帯番号に発信した。
プルルルル プルルルル プチッ
「お前誰だ?」
図太く低い声の男が電話にでた。真一は返答ぜずに聞き入る。
男も息を顰めているかのように無言になる。
「ボォー」
その時であった、漁港を巡航する漁船の警笛がなる。真一は咄嗟に終話ボタンを押す。
いきなりの警笛の音にびくりと反応して切ってしまったが、あの警笛の音は電話越しにも真一の耳に入ったのであった。
「ちょっと待てよ、、電話の男もこの近くにいるのか?」
黄昏のなか周囲を見渡すがそれらしき人物は見当たらない。
「プルプル プルプル プルプル」誰かから着信が入る。
彼方のスマホを見るが画面はブラックアウトしたまま。
ポケットを探ると自分のスマホに着信が入っていた。なんだ裕己か。
「はい、もしもし」
「真一、男女が誰だかわかったぞ」
「マジか」
「現場にいってみたら、全焼は免れてて、ブルーシートの隙間からみたらよ、あれは多分お前のバイト先の真希だ。」
「真希さんだと?」なんで真希さんの遺体がそんなところにあるんだ。
「でな、男の方が、上杉っぽいんだよ」
「上杉?上杉って、上杉モータースの上杉か?」
「あぁあの親父いい年こいて、若い女と心中なんかして、町中その話題で盛り上がってるよ」
待て待て待て、上杉なら俺の車のキーを持っていても、おかしくねぇ。ただなんでアイツが真希さんの遺体とドライブして、焼身自殺するんだ?
真一は回らない頭を全力で回転させるが、意味がわからなかった。
第三者から見れば、心中に見えるかもしれないが、真一からすれば筋書きが全くわからなかった。
「でもなんでお前のセルシオ盗んで心中するのか意味わかんねぇよな?きっと警察も車調べてお前も聴衆されるぞ、聞いてるのか?真一」
「あぁ、ちょっと切るわ。。」
真一は終話ボタンを押す事なくポケットにスマホをしまった。
「プルプル、プルプル」
また着信が
「裕己、しつこいぞ」
「今度は喋ったなぁ」
真一は彼方のスマホだと分からず咄嗟に電話にでてしまった。さっきの男からの電話だ。