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# 黄ポメ主役の生誕祭2025
きゅうり さん主催の黄色の彼の生誕祭
生誕祭week 最終日
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注意事項
・本人の活動や周りの方の活動とは一切関係ありません
・登場人物への批判などはおやめ下さい
・関係無い人の名前を出すのは控えてください
・実況者様の名前をお借りしております
・コメントでは伏字を徹底してください
・腐向けではありません
・nmmnです
・エセ関西弁
・必要以上なバディ表現はおやめ下さい
・キャラ崩壊等ございます
・無い前提ですが、パクリ等は禁止です
・サムネの無断使用も禁止です
・誤字・脱字等ございましたら、言っていただけると幸いです
・本作、約1万字ございます
・視点 煽り手、一部 総統
上記の注意事項がバッチコイと言う方だけ、どうぞご覧あれ。
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黄色の少年は、ただ、羨ましがった。
「 いいなぁ…… 」
「お前は私のことを守っているだけでいいのだ」
そう、怒鳴りつけられる。
いつも通りの朝。
鞭で叩かれ、腕に熱湯をかけられ、背中や足を剣で切りつけられ。
それはそれは、散々な、いつも通りの朝。
珍しい琥珀の瞳を持った、奴隷の少年、シャオロンは、
これが当たり前なのだ、と分かりきっていた。
ごぼっ、と空気が水の上へ逃げる音が響く。
息もできないまま、窒息しそうになる。
いっそ、このまま死ねたら、どれほど良かっただろうか。
ガバッ、と音を立て、飛び起きる。
寝間着には汗がべっとりと染み付き、肌に張り付いていた。
水に顔を沈められた感覚、鞭で打たれた感覚が、
夢だった、というのに、その感覚が残っていた。
思い出したくなかった夢。
最低で、最悪で。
防衛本能からか、記憶から消えていたというのに。
ふと、夢で現れた。
背中の傷が痛い。
足に、腕にある、残り続ける傷跡が、
先程つけられたように痛む気がした。
寝具から立ち、汗の染みた服を脱ぎ、いつもの服に着替える。
沈んだ気分を無理矢理 浮かせ、仲間の集まる食堂へ向かった。
「おはよ〜」
食堂の大きめな扉を開き、仲間に挨拶をする。
友達や家族、そんな間柄の人間とするような挨拶を。
あの軍では、到底許されることは無いであろう挨拶を。
黄色の彼は、無理やり浮かせた気分が、少し沈んた気がした。
何をどう頑張っても、あのクソみたいな軍に思考を結びつけてしまう。
大嫌いな記憶を呼び起こしてしまったこともあってか、
黄色の彼の心は、疲弊していた。
「おはよう」と挨拶をし、それを返されただけで、
喉がキュッと締め付けられ、涙が出そうな気がした。
この軍は、W国は、大丈夫なのだ。と、
自分の心に言い聞かせた。
あまり食欲がなかったため、スープと野菜をトレーに取り、席に着く。
食欲がないと言えど、食べられる、と思った自分は、馬鹿だったのかもしれない。
軽食を前にしても、手が動かなかった。
可能性すらないことを考えてしまうのだ。
例えば、毒。
スープに毒でも入っていたら、そう考えると、胃酸が込み上げてきそうだ。
朝、夢を見ただけで、これほど思考がネガティブに陥ってしまうのか、
と、己の心の弱さを知った。
……なんて、自分は弱いのだろうか。
シャオロンが、そんなことを考えていると、
彼の隣に座っていた、桃色の彼が声をかけた。
「シャオロン食べへんの?」
「あー、お腹減ってへんねんな」
「昼は食わんでもええけど、朝くらいは食うとくんやで?
1日の運動のエネルギーになるんやから」
「…ロボロ君はそんなに食うても大きくならへんのですね。ぷぷぷ」
「なんやとぉ!?」
相も変わらず、自分を気にかけて、煽っても楽しそうにしてくれる彼に、
思わず、頬が緩む。
ああ、自分はここに出会えて良かったな。
と、改まって感じていた。
そんなやり取りをしても食べれないものは仕方がないので、
申し訳ないと思いながら、トレーを戻した。
食堂を出ようとし、扉に手をかけようとした時、
扉が開かれた。
慌てて前を見ると、そこには鮮やかな赤のマフラーを纏った、
赤色の彼、トントンが居た。
「あ、トントンおはよーさん」
「あぁ、シャオさんか。おはよ」
「また徹夜したん?」
「まぁな…グルなんちゃらさんが仕事を押し付けてきましてね」
「……お疲れ様。」
目の下に隈をつくる彼を見て、何も思わないという方が難しいだろう。
体調を崩して欲しくないため、寝てほしいなぁ、とシャオロンは思った。
「あぁ、せやシャオさん」
「えっはい!どうした」
「グルさんが呼んどったから、今から行けたら行ってな」
「あ〜、そうなん。分かったわ」
今から重要と言った用事はなかったため、足早に総統室へ向かった。
道中には、なんかやらかしたかなぁ…なんて考えていたり。
総統室の前につく。
3回ノックして、総統室に入る。
扉を開けた先には、コーヒーを片手に、何かの資料を見ている総統様が座っていた。
こちらに気がついたのか、彼は資料を置き、こちらを向いた。
「よく来てくれた」
「なんか呼んでる言われてんけど、なんかの仕事?」
「さすがシャオロン、勘がいいな」
「それはどうも」
褒められているかは分からないが、ありがたく受け取って置くことにした。
「仕事と言うか、任務なのだが、今回シャオロンには潜入捜査をしてきてほしい」
「潜入捜査……俺が?」
「ああ、そうだ」
「潜入捜査ならゾムとかショッピ君の方がええんちゃうの」
「その事なんだが、生憎ゾムは別の場所へ行くことになっているのだ 」
「ショッピ君は?」
「彼には後方支援の一般兵に狙撃を教えてほしいの頼んでいてな」
これほどの理由があって、行きたくないと駄々をこねるのは我儘だ。
そういうことなら、行くこととしよう。
「ちなどこの国に潜入すんの?」
「あぁ……それが…」
任務を請け負う上で大事な事を問うと、グルッペンは少しバツが悪そうに答えた。
「S国へ行ってほしいのだが…」
その言葉を聞いた途端、ああ、と納得した。
何をそんなバツが悪そうに言うのか、彼は、自分の過去を少しだが、知る人間だからだ。
俺を拾ってくれた、当本人なのだ。
S国へと、少し小規模な戦を申し込んだ、グルッペンに。
「ええよ、別に。どうせもうアイツいーひんよ」
「…まぁ、そうだな」
快く、とまではいかないが、グルッペンは納得した。
”アイツ”と言うのは、S国に居た、前総統。
戦後、S国の総統は変わった。
当たり前、と言えば当たり前なのだろう。
どうせどっかで、野垂れ死んでるはずだ。
…そう、甘く見ていたのが、命取りだったのかもしれない。
「トントンは反対したん?」
「トン氏が食堂へ行くまで話していた。万が一の場合は別の者でも良かったのだが、
S国ならば、シャオロンが行く方が良いだろう、と話が決まったんだ。
トン氏は最後まで渋っていたがな。」
「ふ〜ん」
なにをそこまで渋るのか、心配なんざ、しなくたっていいのに。
とは思ったものの、心のどこかでは、心配してくれることが嬉しいのだ。
なにせ、かつては優しさなんて、触れることができなかったのだから。
「で、S国行って何をするん? 」
「我々の情報を盗り返してきて欲しいのだ」
それを聞き、シャオロンは、あ〜、と納得の声をこぼした。
つい最近、我々の兵の中に観光客が見つかったのだ。
ソイツはS国からの回し者だ、と少し拷問をすればすぐにもらした。
ソイツは俺の受け持つ隊に属していたため、
そんなヤワに育てた覚えはないんだけどな、と小言をぽつり。
確かソイツは、隠れて情報資料室に向かったつもりだったが、
バッチリ監視カメラに映っていたらしい。
問い詰めたところ、重要機密を持ち出そうとしていたのだ。
ガバすぎるにも程がある、と幹部間で話をしていたような気がする。
ショッピが、「大先生でもここまでガバくないですもんね」
と嘲笑混じりに吐き捨てた。
鬱が『え?』、ダメージを受けていて、面白かったのは、記憶に新しい。
「情報を抜くのに必死だったのだろうな。実に笑える」
「いやほんまに」
そんな話を交わし、任務内容をさらに詳しく聞いた。
要約すれば、情報の入ったUSB、PCを壊し、資料を燃やす。
その後おつかいで何らかの武器を盗む、とのこと。
後記の武器を盗むおつかいという旨の任務は、ただのグルッペンの遊び。
俺がS国へ向ける舐めプだ。
「ああ、それと、明日、帰ってくるのを楽しみにしていると良い」
明日?何があるのだろうか。
そんな思考がチラついたが、気にしないことにした。
任務へ行くのは、グルッペンの言う通り明日。
万全を期して任務に向かえるよう、今日は非番になった。
後方から銃弾が放たれる。
腕や足、腹を掠る。
ああ、舐め腐ったこと、しなければ良かった。
そんな後悔を今更抱いたとて、起きてしまったものはもう遅い。
USBやPCは完全に破壊したし、資料も塵も残さず燃やし尽くした。
S国への挑発、武器をも盗もうとした際、運悪く敵兵と遭遇した。
すぐに、ロボロからのナビや、自分の記憶を頼りに大急ぎで逃げる。
右に曲がって、真っ直ぐ行って、階段を駆け降りて、次は左に曲がって。
逃げて逃げて、逃げまくっている途中、目の前に突然現れた何者かに、
銃弾を腹に撃ち込まれた。
それだけだったら、何ともなかったかもしれない。
どうやら腹に撃ち込まれた銃弾には、睡眠剤か何かが塗布されていたようで、
すんでのところで、シャオロンは崩れ落ちた。
__これから起こることも知らずに、インカムに話しかける者に謝罪をして。
目が覚めたそこは、酷く見覚えのあるところだった。
目の前に広がる空間を見た途端、琥珀の彼は絶望の底に突き落とされた。
戻ってきてしまったのだ。
大嫌いな場所に__。
タイミングを見計らったかのように、重く閉ざされていた戸が開く。
戸の開く先には、クズの権化と言っても過言ではない、
守るべきものを全て捨て、自分だけ逃げた”元”総統が居た。
「侵入者が来たかと思えば、まさかお前だとは」
返す言葉も、とる態度も分からぬまま、言葉を聞き飲み込む。
「奴隷のくせして、W国の幹部だあ?
大層立派な役職に着けたものだなぁ、私のことを守らなかったくせに」
『守らなかった』?
コイツは何を言っている。自分がビビって早々に逃げ出したくせに、
守られなかった?
馬鹿なのか、コイツは。
「被害者ヅラしてんなよ。真っ先に全部捨てて自分だけ逃げたくせに」
思いっきり、笑ってやった。
かつての恐怖の対象を目の前にしていると言うのに、だ。
アドレナリンのおかげなのだろうか。
そんな考えに浸っていられるのも、この一瞬だけだった。
「こんな言うことを聞かない犬にしてやった覚えは無いんだがなぁ…」
嘲笑の含んだ目。
他人を見下すような話し方。
それを感じると同時に、水が流れる感覚が走った。
熱い。熱い熱い熱い。
熱湯をかけられたのだと理解するのに、数秒もかからなかった。
幸いなことに、傷は腕だけで済んだ。
額を殴られ、腕を切られ、左手を折られ。
身体中に痛々しい傷がつけられた。
過去につけた傷に上書きをするように。
また、奴隷になるのだろうか。
W国の幹部捨てられてしまうのだろうか。
もう、あの場所には戻ることができないのだろうか。
頭に浮かぶのは、全て最悪な道を進んだ結果。
プラスな考えは浮かばなかった。
…そうだ、弱いんだ。俺。
そう自覚してしまえば、希望なんて無くなって。
絶望に堕ちている自分を他人事のように思う他になかった。
沈みゆく意識の中、一つだけ、妄想をした。
彼らが、助けに来る、妄想を___。
ザバーッ。
冷えきった水をかけられる。
眠ることさえ、許されない。
髪から、水が伝う。
頬から、水が伝う。
ふと、上を見上げると、心底愉快そうな顔をするクズが、そこにいた。
「随分と弱くなられたなぁ、W国の幹部様?」
ぶくぶくと脂肪をつけたその体。
興奮しているのか、脂汗を大量に流し、少ない髪がベタついている。
『顔を見ない間に随分と歳を重ねられたご様子で』
なんて、言ってやりたかった。
が、生憎、そんな声を出そうとしても、虚しく空気だけが木霊するだけだった。
…口の中が、気持ち悪い。
口内に充満する鉄の味。
口から伝う真っ赤な鮮血。
咳と共に、また、赤いものを吐く。
なんて、惨めなのだろうか。
あれから、何日経ったのだろう。
否、数時間かもしれない。
それほど、この空間にいる時間は長く辛く感じた。
「悲しいなあ、3日も経ったってのに、W国のお仲間さんは助けに来ないなあ」
あぁ、もう3日も経っていたのか。
どうやら、体内時計が狂ったらしい。
「やはり、お前なんぞ必要なかったのだな!」
下品な笑い声をあげる。
耳障りだ。気色が悪い。
『必要なかった』か。
そうだ、そうだな。
必要ないのに、置いていてくれたのかもしれない。
そう思ってしまうほど、シャオロンは、体も心も疲弊していた。
もういっそ、殺してくれたらいい。
そう考えた時、大きな爆発音がなった。
それとほぼ同時に、目の前の男の首から血飛沫が上がった。
見慣れている緑のパーカーと、赤と黒の派手なサッカーのシャツを着た男。
大好きな仲間の姿を捉えた途端、安心しきったのか、
はたまた、目の前の男が死んだことに安堵したのか。
シャオロンの意識は暗闇に沈んだ。
「W国から宣戦布告…?」
「えぇ、明日には攻め込んでてくるかと」
奴隷として扱われながら、総統の 隣で盗み聞いた話。
足には重い鉛がつけられている。
そんな話を聞いた翌々日。
W国は攻め込んできた。
途中までは、耐えていた。
前線をはる隊が壊滅し、軍もほぼ壊滅状態で。
城の中までもうすぐと言う時、
隣に居る総統は、我先にと逃げ出した。
それに関しては、何も感じない。
そういう奴、という事は分かりきっていたから。
たとえ死ぬとて、最後まで自分の身は自分で守ろう。
彼は思った。
他の者より偶々、秀でていた戦闘力を買われ、総統の側近になった。
死に場所は、選びたい。
それだけが、奴隷である彼のせめてもの願い。
__そんなものは叶うはずもなく、重い鎖を足にかけられたまま、
W国の一般兵に襲いかかられる。
攻撃をされそうになったら、しゃがむ以外の避ける方法は考えられなかったため、
幾つもの傷を負った。
一般兵が来なくなった時、ようやく終わった、と。
そう思うと同刻、これからどうしたら良いのだろうか、という
1つの疑問が浮かんだ。
どちらにせよ、S国は負けた。
戦う者も、指示する者も、皆死んだ。
自分も、誰かに首を跳ねられるのだろう。
何を言うにも、前提として彼は奴隷なのだ。
彼の意見は、彼の言葉は、誰の耳にも入らない。
心の奥で、そのことに気づいていても、
目を逸らしていたためか、今更自覚したのだ。
自覚してからはもう早い。
虚無感に襲われた。
自分の首に落ちていたナイフを当て、
自らの手で、自らの息の根を止めようとした時、
足音と、楽しそうな話し声が聞こえた。
顔を上げると、見知らぬ人間が4人。
黒いコートを羽織った、煌びやかな金髪に、ギラギラ輝くカーマインの瞳の人間。
青苔色の軍服のようなものに、補色の真っ赤なマフラーを巻いたの人間。
緑茶色の軍服に、少しクルッとした明るい茶髪にトルコ帽の目の細い人間。
真っ白な軍服に、バツ印のついたマスクをつけ帽子を深くまで被った人間。
とても楽しそうに話していた。
その光景を見た時、彼は首からナイフを離した。
黄色の彼は不覚にも、羨ましい。
そう思ってしまった。
黒いコートを羽織った人間が、1番偉い人だという事だけは、すぐ理解できた。
けれど、下につく人間が、上の者と親しそうに話している。
という、眼前の光景に、黄色の彼は目を疑った。
どうして、彼らは殴られないのだろう、と。
ぼんやりと滲んでいく黄色の視界に、彼ら4人が写り続ける。
視界が滲む理由は分からない。
意識が暗転する前に、後ろの壁にもたれかかった。
死ぬまで、彼らを見ていたかった。
自分には手の届かなかった何かを、彼らが持っているような気がして。
黄色の彼は、ぽつり、こぼしてしまった。
「いいなぁ…」
と。
ずるいなぁ…と。
自分も、目の前の光景に映る人間のように、生きてみたかったなぁ…と。
黄色の彼は、ただ、それだけを考えていた。
視界がブラックアウトする。
黄色の彼が眠る、消毒の匂いが募る部屋。
未だ目が覚めない、傷だらけで安らかに眠る彼を、
珍しく、グルッペンとトントン、オスマン、ひとらんらんが看ていた。
「シャオロン、目覚めへんね」
シアングリーンの瞳を持つ彼が呟く。
そう思ってしまうのも、仕方の無いことだろう。
なにせ、すやすやと眠っている黄色の彼は、
2、3日ほど、眠ることさえ許されていなかったのだ。
黄色の彼が、S国に捉えられ、3日経った日。
W国は、S国で爆撃をしかけた。
開戦から、約7日。
戦は、S国の領土を3分の2ほどW国のものになる、という形で終わった。
戦争国家として名を轟かせてきたW国にとっては、珍しい終戦の仕方。
戦争なんかよりも、大切な仲間をとったのだろう。
彼らは、仲間に情が深い。
「やはり、S国へ行かせるべきでは無かったな」
「起きてしまったものはしかたないよ。グルッペンは悪くない」
黒色の彼と、白色の彼が言葉を交わす。
黒色は、黄色の彼を潜入へ行かせたこと、後悔した。
「ほな、俺仕事あるんで、戻りますわ」
「俺も戻るめぅ〜」
「なら俺も、戻ろうかな」
赤と、深緑と、白が言う。
「私もあと少ししたら戻る」
黒色がそう言うと、赤色は頷き、3人は医務室を後にした。
黒色の彼は、黄色の彼との出会いを、ふと思い出した。
数年前、S国への宣戦布告をした。
規模の小さいの国家なため、勝利は余裕だろうと言われていた。
いざ、戦いの幕が上がっても、1日や2日ほどで、前線が崩壊。
後方支援なんて、仕事すら全うしていなかった。
所詮は薄っぺらいチームワークだったのだ。
S国軍が壊滅し、城も半崩壊。
総統の首を、自ら落とすために、護衛としてトントン、オスマン、ひとらんらんを連れ、
S国の城へと入った。
最奥部へ到達すると、ボロボロな姿で、足には大きな重りを着けた人間が居た。
髪は胸あたりまで伸びていて、ボサボサだった。
男か、女か、一目見ては見分けがつかない。
その人間の周りには、数十人の自国の一般兵。
こんなガリガリの体で、これほどの量の兵を倒してもなお、
立ち続けている人間に驚いた。
好奇心が奮い立つ。
興奮して、護衛として連れてきた3人と話していると、
目の前の人間は壁にもたれかかり、こちらを見つめた。
小さい、震えて掠れた弱々しい声で、彼は言葉をもらした。
「いいなぁ…」
羨ましそうな光のない、薄灰色がかった琥珀の瞳。
その瞳からは、ボロボロと、容器から溢れ出したかのように、
大量に、涙が零れていた。
「…どうする、グルさん」
数秒経ってから、発せられる声でハッ、と我に返る。
赤いマフラーを纏う彼が許してくれるかは分からないが、
一つ提案をすることにした。
「我々の国へ、連れ帰ろう」
すると、赤色の彼は、少し不満気な顔をしながらも、どこか嬉しそうだった。
敵に情を持たない外交官の彼も、幼い子どものような目の前の人間の声を聞き、
心が締め付けられたようで、目を合わせると小さく頷いた。
外交官の隣に立つ、帽子を深く被った彼も、同じように。
「では、ひとらん、こいつを抱えてくれないだろうか」
「うん。分かった」
気を失ったのか、目の前の人間は目を閉じて眠っていた。
それを白色の彼が抱え、城を後にした。
沈んだ空気を浮かせるために、馬鹿げた笑い話をして。
今、よくよく考えてみれば、あまり良い出会い方ではなかった。
なんとも不憫なのだろうか、と、常人なら零しているだろう。
そんなことを考えていると、視界に、琥珀色がちらついた。
「……ぁ…」
「……ようやく目覚めたか、おはよう。シャオロン」
そう声をかけると、彼は嬉しそうに頬を緩めた。
「まだ、言えていなかったな」
そう言うと、彼は不思議そうに黒色の彼を見る。
「誕生日、おめでとう。シャオロン」
__また、懐かしい夢を見た。
目が覚めたのは、大嫌いなあの場所では無く、
見知った、白で統一された部屋だった。
安心感で、泣きそうになる。
ふと隣から、声が聞こえた。
「……ようやく目覚めたか、おはよう。シャオロン」
ずっといてくれたのだろうか。
思わず、嬉しくて頬が緩む。
喜びに浸っていると、黒色の彼が、声を発した。
「まだ、言えていなかったな」
と。
なんの事だか、さっぱり分からなかった。
「誕生日、おめでとう。シャオロン」
…ああ、そう言えば、任務に行く前日、
『楽しみにしていろ』みたいなことを言われたな。
と、彼は思い出した。
その後すぐ、その事だったのか、
と、覚醒しきれていない頭で理解した。
昔は、誕生日なんてそんなもの彼に存在しなかった。
琥珀の彼が、W軍に拾われた日が、誕生日、ということになった。
ということが、きっかけだった気がする。
黒色の彼、グルッペンが、神の手を持つと言われるアリスブルーの瞳の彼、しんぺい神に、
話しかける。
慌てたように、しんぺい神はこちらへ来て、『どっか痛いとこない?』
と、琥珀の彼に問うた。
「水、ほしい」
琥珀の彼、シャオロンは、聞かれたこととは関係ない返事をした。
すると、しんぺい神は、
「分かった、ちょっと待ってね〜」
と良い、手際よく、水を持ってきた。
傷が痛み、銃弾を撃ち込まれた腹を抱えながら、
シャオロンは起き上がり、しんぺい神から水を受け取った。
シャオロンは、想定しているよりも喉が乾き、水を欲していたようで、
コップ一杯の水を、ゴクゴクと勢い良く飲み干した。
「プハ〜〜〜〜ッ!ありがと、ペ神」
水で潤った喉で、元気よく、感謝を述べた。
と、同時に扉が壊れそうな勢いで開かれた。
そこにいたのは、緑色のパーカーを被った彼、ゾムと、
サッカーユニフォームを着た彼、コネシマが居た。
その後ろにも、続々と人がやってきた。
「しゃ、シャオロン!!だだ、大丈夫か?」
「やっと目覚めたんけお前!!起きんの遅いねん!!」
ワッ、と暖かい空気に包まれる。
過去の自分が、欲していた、手の届かない、雲の上の存在だと思っていた、
【仲間】
という人達に、今、自分は囲まれて、
目を覚ますことを待ち望まれていたことに、この上ないほどの幸福を感じた。
「大丈夫に決まっとるやろ。このシャオロン様なんやからな!」
感情のままに、笑顔を向ける。
その笑顔は、世界一、と言っていいほど、
”幸せ”を感じられるものだった。
誰かを笑顔にする力のある、世界一の笑顔。
彼だけの唯一の笑顔。
そんな彼につられて笑って、みなで、琥珀の彼に、シャオロンに
バラバラに、言葉を揃えて、こう言った。
『誕生日おめでとう!』
───────────────
約10,000字
閲読ありがとうございました!
改めまして、shaさん、お誕生日おめでとうございます…。
こうしてまたお祝いすることができ、光栄ですね。
お祝いだと言うのに暗いお話ですが。
今回、参加させていただいた生誕祭企画、
【 #黄ポメ主役の生誕祭2025 】
とタグから飛ぶと、他の方々の作品を見ることができます!
是非とも読んでいただきたい!
「琥珀の笑顔は世界一。」 感想お待ちしております!
以下、他の参加者様のお名前です。ぜひ調べて見てください!(敬称略)
・あくありうむ
・えーこん
・炭酸飲料のるかさん 。
・ᜊ のの ᜊ
・わたがし@イケメンになりたい
・きゅうり@活動休止中
お疲れ様でした。
。
コメント
5件
1万…!?!?!? shoのセリフがぶっ刺さって泣いた 感動でしかない…(´;ω;`)
うわぁ〜… すごかったです!思わず泣きそうになりました… やっぱり、仲間思いで最後はほっこりしますね。 一万文字、それと最終日投稿、お疲れ様でした!
1万字 、 お疲れ様でした 〜 ! めちゃ内容濃くてすこです 🫶🏻 改めて誕生日おめでとうですよね 〜 、 他の人の作品も見てみます 🫡