コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ピザドリームです! お待たせしました」
ピザの配達をしてくれた若い男の子の体が少し濡れている。
「ごめんなさい。こんな雨の日に注文して」
「とんでもないです! ご注文ありがとうございます」
嫌な顔ひとつせず、ニコッと微笑んでくれる青年。
雨の中、バイクで大変だったと思う。
「ありがとう。危ないから気をつけて帰ってね」
「はい! またよろしくお願いします」
ドアを閉めて中に戻ると、
「お腹空いたわ。早くここに置いて」
そう言って、涼香姉さんはテーブルを軽く叩いた。
「ビールある?」
「あっ、うん」
発泡酒がたまたま1本だけ残っていた。普段あまり飲まないので、ずっと冷蔵庫に入ったままだった。
「ちょっと、発泡酒じゃ物足りないんだけど。他にないの?」
「涼香姉さん、いきなり来るから何も無いよ」
「いきなりって、それイヤミ?」
「そうじゃないけど、いつも突然だから」
「もういいわよ、発泡酒で。早く食べましょ」
「う、うん」
なぜか私までピザを食べることになっているけれど、今日は別にピザの気分じゃなかった。なのに、どうしてこんなに高いものを注文させて、お会計は私なんだろう?
この前もお昼時に来て、天丼を注文して私が払った。姉妹だし、もちろんケチケチしたくはないけれど、ピザの代金は私のパジャマの2倍近くもする。
「涼香姉さん、ピザのお金、半分出してもらってもいいかな?」
思い切って言ってみた。
「いやだ、ちょっと待って。ここはあなたの家でしょ? お客様にお金を払わせるつもり?」
「……でもね、私はお金を節約したいの。工場のことすごく心配だし、少しでも……」
「って、またその話? この前、私には関係ないって言ったわよね?」
「でも、家族だよ。普通、家族が困ってたら心配しない?」