段々と死が近づいてくる。
まさか、俺が負けるなんて思わなかった。でも、悔いのない人生だった。
地面が近づくに連れて、思い出が走馬灯になって駆けていく。
不思議な事に、思い出すのは秋元の事だけ。秋元と出会った日のこと、秋元と過ごした日々。それだけ、俺の中の大半を秋山が占めていた。
悔いはないと思えた筈だったのに。
一つだけ、心残りが出来ちまったな。
それは残していく秋元のことだ。あいつは俺より才能がある。そして、天才だ。その成長を見届ける事なく、死してしまうことを。秋元の隣に俺じゃない、俺の知らない奴が、立つのかと思うと、面白くねぇーな。
体がひしゃげる音と共に、痛みが全身を駆け巡る。
段々と冷たくなっていく体に、雪が降り積もる。降り積もる雪の中で、俺の傍らで泣く秋元の姿が見えた。分かってる、秋元がいる筈がないと。これは幻だと分かっているのに。きっと、秋元は俺の手をとると信じて、秋元の幻がいる虚空に向かって手を伸ばした。
ぷつりと途切れる意識の中、伸ばされた手が握り返されたような気がした。
死してもなお君を想う。
おわり
コメント
3件
コメントありがとうございます(^-^)
初コメ失礼します! 最高ですぅぅ(´ω`)