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冷たい空気が街を包んでいた。冬の冷え込みがじわじわと体に染み込んでくる。街角のカフェの前を通りかかったとき、見慣れた風景が目に入った。
いつものように、何気なく立ち寄るつもりで店に向かおうとしたその瞬間、ふと刹那の顔が浮かんだ。何度も会話を交わしてきたあの顔、ただの知り合いじゃない、もっと近い存在。だけど…それがどうしても曖昧な感覚でしか捉えられない。
「いや、どうしてこんなことで悩んでるんだ?」
自分で自分に問いかけても、答えはすぐに出なかった。どうしてこんなにも心が落ち着かないのか。
店に入り、注文を済ませ、席に座ると、ふとさっきの刹那とのやり取りを思い返していた。無理に笑顔を作るあの人の顔が浮かぶ。それでもなぜだか、心がざわざわと落ち着かなかった。
「きっと気のせいだ…」
でも、心のどこかで感じていた、この気持ちは気のせいなんかじゃない。初めて自分の中で芽生えた感情に戸惑っていた。
席に座り、カフェの窓から外を眺めながら、まだ胸の中で渦巻く感情を整理しようとしていた。けれど、何度も頭に浮かんでくるのは刹那の顔ばかりだった。あの日、店で見せた笑顔、軽やかな言葉、でもその奥に何か隠しているような感じがしたが刹那があんなに無理に笑っていた理由が、今になって少しだけ理解できる気がした。
「でも、僕が気にするべきことじゃないか」
言葉にしてみても、まだ胸の中でその答えが定まらなかった。どうしてこんなに気になるんだろう。気になっているということは、それだけ大切に思っているってことなんだろうか?でも、それが何なのかは、まだわからない。
ふと、目の前のテーブルが空いていることに気づく。注文したカフェラテのカップは温かいけれど、その温もりがなぜか自分に届かないような気がして、無意識に手を伸ばすことができなかった。
「触れたくても、触れられない…」
自分でもよくわからないけれど、その言葉が頭に浮かんだ。あの笑顔や、言葉を交わすたびに、何かが触れそうで触れない。どこか遠くに感じる刹那の存在が、今更になって余計に胸を締めつける。
それでも、どうしても手が伸びない。それは自分が触れる資格すらないと感じているからだろうか。それとも、何かを失いたくないという恐れからだろうか…。