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あれからしばらくの時間が経った。
刹那と会う機会も増え、僕の中で刹那の存在が大きくなってきている。最初はただの偶然だと思っていたけれど、今ではもう偶然では片付けられないほど、刹那が私の生活の一部になっている。
僕はもう気づいてしまっていたかもしれない。
刹那のことが好きだと。
でも、それをどうしたらいいのかがわからない。
好きだと言ったところで、刹那はそれを受け入れてくれるのか。そもそも、刹那は自分をどう思っているのか。
次第に自分の気持ちに気づき始めていた。それでも、まだその気持ちを言葉にすることができずにいた。どうしても、言うのが怖い。
今日もまた、いつものカフェで刹那と会うことになった。少し緊張しながらも、今日は自分の気持ちを伝えようと決めていた。
「渉、今日はなんだか元気そうだね。」
いつものように、刹那が明るく声をかけてきた。その声が、渉の心を少しだけ軽くする。でも、それと同時に、胸の奥で何かがひっかかる。
―伝えなきゃ。伝えなきゃいけない。
その思いが強くなる。しかし、どうしても言葉にできない。僕はカップを手に取って、一息つく。
「うん、ちょっと…気分がいいんだ。」
無理に作った笑顔を浮かべる。その顔を見た刹那は、少し不安げに見つめてきた。
「なんか、渉、無理してない?」
その言葉に、心臓が一瞬早く打つ。刹那がそんな風に気にかけてくれることが、なんだか嬉しくて、さらに胸が苦しくなる。
―どうして、こんなに胸が締め付けられるんだろう。
「別に無理してるわけじゃないよ。」
今まで通りの返事をして、渉はなんとか平静を装う。でも、刹那の目はどこか鋭く、何かを見透かしているような気がした。
その時、僕は決意した。
「刹那、実は…」
そして、言おうとした瞬間――
ガラッ。
カフェのドアが勢いよく開く音が響いた。思わず二人の視線がその方へと向く。
「Excuse me, is this seat taken?」
驚くことに、そこに立っていたのは外国人の男性だった。英語で話しかけられ、僕と刹那は一瞬言葉を失った。
「Oh, no, it’s free. Please, take a seat.」
刹那が慌てて英語で返事をし、男性が席に座ると、自分の言いたかったこと、言おうとした決意が心の底に沈んでいってしまった。
その外国人の男性が座ってから、二人は再びしばらく沈黙した。渉は心の中で、あれを言わなきゃと思いながらも、タイミングを逃してしまったような気がしていた。
(…今日こそ、言おうと思ったのに。)
でも、言えなかった。それが悔しくて、思わず手で顔を覆った。
一体、いつになったら言えるんだろう。自分の気持ちを、刹那に。
そしてそのまま、また沈黙が二人の間に流れた。